年末年始はあまり出かけず医師会当番の急病センター外来や読書、プログラミングなどをして過ごしています。時間にも余裕があるため新しい試みを紹介してみます。
2023年は生成AIがブレイクした年として記憶されると思います。Open AI社が開発したChat GPTは大規模言語モデルと呼ばれており人間の知性のような振る舞いをします。OpenAI社はChat GPTのAPI(「Application Programming Interface」の略で、ソフトウェアやアプリケーションが他のソフトウェアやサービスと情報を交換するためのインターフェースです。簡単に言えば、異なるソフトウェアやシステム間でデータを共有し、互いに通信するためのルールや仕様の集まり)を公開しているためAPIを利用すればいろいろなソフトウェアで利用可能になります。新しい試みとしてText BlazeというChrome拡張機能を経由して電子カルテ入力補助、診断補助ツールを作ってみます。
診断補助に用いる場合
Text Blazeではβ版ですがOpen AIのAPIを利用可能です。Text Blazeのコードは下記のようになります。
{formparagraph: name=req; cols=40; rows=8}{text={site: text; selector=textarea}}
{openai-text: {=req}診断が困難な患者の電子カルテの記載です、血液データや主訴、身体所見をもとに考えられる疾患を3つ列挙、またその疾患の診断に必要な検査を提示してください。クリニックで施行できる検査で提示して下さい。{=text}; format=text}
1行目で電子カルテの入力フィールドの記載を読み込んで、2行目でOpen AIのAPIを呼び出しています。
例えば電子カルテの入力フィールドが
【主訴】 呼吸苦がある、胸が苦しい、首が張る 【現病歴】 8月24日(問診の10日前)に息苦しさ、胸痛、頸部腫脹が出現している。 息苦しさは突然発症で 普段の生活の中で息苦しくなることは特にないくらい。 改善も悪化もしていない。 横になると苦しいが座ったりしていると楽になる。 初めての症状である。 胸痛は突然発症で NRS1/10くらい。 30分以上続いている。
の場合は
1. 気管支喘息 2. 肺炎 3. 心筋梗塞 /検査 1. 気管支喘息:肺機能検査(FEV1、PEF)、アレルギー検査(血液検査、皮膚テスト) 2. 肺炎:胸部X線、血液検査(白血球数、CRP、肝機能、腎機能) 3. 心筋梗塞:心電図、心臓エコー、血液検査(トロポニン、CK-MB、心筋型CPK)
という風に鑑別診断、必要な検査を考えてくれます。
生活習慣病指導に用いる場合
この場合のText Blazeのコードは
{formparagraph: name=req; cols=40; rows=20}{text={site: text; selector=textarea}}
{openai-text: {=req}内科専門医としてカルテ記載をもとに生活習慣病の生活指導を記載してください。出力は200文字以内でお願いします。患者氏名は{site: text; selector=.names-name}さんです。生活指導の書き出しは"{site: text; selector=.names-name}さんの生活指導です”です。{=text}; format=text}
としてみます。{site: text; selector=.names-name}というのはクリ二クスカルテの患者氏名フィールドを参照させるコマンドです。カルテ記載が
#下腿浮腫:他覚的には明らかでない #高血圧 #尿潜血 #高コレステロール血症 #喫煙 20本/日→禁煙 #胆石_胆砂 禁煙外来は前回で終了 禁煙はまだ続いている 156/71 mmHg 130/63 mmHg---家庭血圧 家庭血圧も記録いただく様に説明
の場合は、
患者 太郎さんの生活指導です。患者さんは下腿浮腫や高血圧、尿潜血、高コレステロール血症、喫煙の症状をお持ちです。これらの症状は生活習慣によって引き起こされることが多く、改善することで症状の改善が期待できます。まず、喫煙については禁煙外来を受けられたことは素晴らしいことですが、まだ続けているとのことです。禁煙は健康にとって非常に重要なことであり、引き続き禁煙を続けることを強くお勧めします。また、高血圧については家庭血圧の記録をお願いしています。家庭血圧の記録は医師が適切な治療を行う上で重要な情報となりますので、毎日記録するようにしてください。さらに、高コレステロール血症についても生活習慣の改善が必要です。食生活の改善や適度な運動を行うことでコレステロール値を下げることができます。最後に、胆石や胆砂についても定期的な検査を受けることで早期発見が可能ですので、定期的な健康診断を受けることをお勧めします。
のようなに指導箋の原案を考えてくれます。
実際には下記のように動作します。
まだまだ動作がもっさりしているのでなかなか日常診療には利用が難しいですが同じことをAIを利用せずに行おうとするとかなりの工夫が必要になることを考えるとAIの可能性を感じます。
Text Blazeはかなり診療に利用しているのでその他の使い方やコードなどもまた紹介してきたいと考えています。
本年もよろしくお願いいたします。診療は1月4日(木)からの予定です。
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