高脂血症、高コレステロール血症は現在では脂質異常症と言われます。以前は中性脂肪値が高い、もしくはLDL(悪玉)コレステロール値が高い状態が「高脂血症」とされていましたが、HDL(善玉)コレステロール値が低い状態も同様に問題があるとして、2007年から、これら3つの状態を合わせて「脂質異常症」と呼ぶよなりました。

高脂血症、脂質異常症


高脂血症とは、血液中の中性脂肪やコレステロールなどの脂質の代謝が正常に行われていない状態をいいます。以前は、中性脂肪値が高い状態やLDL(悪玉)コレステロール値が高い状態を「高脂血症」と呼んでいましたが、2007年以降は、HDL(善玉)コレステロール値が低い状態も同様に問題となるため、これら3つの状態を「脂質異常症」と呼ぶようになりました。自覚症状がないため軽視されがちですが、増加した脂質が血管内に蓄積され、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などの重大な病気を引き起こす可能性があるため、早期の改善が必要です。

 

脂質異常症の診断基準


日本動脈硬化学会が発表した「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」では、脂質異常症はLDLコレステロールが140mg/dl以上の「高LDLコレステロール血症」、HDLコレステロールが40mg/dl未満の「低HDLコレステロール血症」、中性脂肪が150mg/dl以上の「高トリグリセライド血症 (高中性脂肪血症)」のいずれかの場合に該当します。

 

脂質異常症の原因


脂質異常症の発症にはストレスなどが関係していると言われています。特に近年、日本で脂質異常症患者が増加しているのは、食生活の欧米化による動物性脂肪の多い食事の増加や、自動車の普及による慢性的な運動不足が関係していると言われています。コレステロール値が高くなる原因としては、脂身の多い肉、卵、乳脂肪分の多いバター、チーズ、インスタントラーメンなどの食べ過ぎが挙げられます。中性脂肪が高くなる原因としては、果物や菓子の食べ過ぎ、お酒の飲み過ぎなどが挙げられます。また、タバコを吸うと善玉コレステロール値が下がり、脂質異常症になることもわかっています。さらに、運動を怠ると、体内で消費されるエネルギー量が減り、脂質代謝がさらに悪化します。脂質異常症の原因の多くは、食生活や運動不足、大人になってからの体重増加などです。

 

脂質異常症の症状


脂質異常症の治療は、年齢、性別、高血圧や糖尿病の有無、喫煙習慣、家族歴などから設定される目標値に基づいて行われます。2020年、厚生労働省は、脂質異常症がある場合、重症化を防ぐために、コレステロールの摂取量を1日200mg未満に抑えることが望ましいと発表しました。動物性脂肪ではなく、魚や植物性油を多く摂ること、コレステロールの吸収を抑える食物繊維を多く摂ること、マーガリンに含まれるトランス脂肪酸の過剰摂取を避けること、アルコール摂取を控えめにすることなどが推奨されています。また、1日30分以上の有酸素運動を行うことも推奨されています。有酸素運動とはウォーキング、水泳、サイクリングなどの運動のことです。食事や生活習慣を改善しても改善が見られない場合には、内服薬による治療が行われます。例えば、すでに動脈硬化の傾向がある人や、糖尿病を患っている人は、一刻も早く健康状態を改善する必要があるため、コレステロールや中性脂肪を下げる薬が処方されます。

 

治療目標


脂質異常症の治療目標は患者さんにより異なります。一度狭心症、心筋梗塞などになった患者さんは二次予防ということになり、LDLコレステロールでは100未満、最近では70未満が目標値になります。年齢(男性45歳以上、女性55歳以上)、高血圧、糖尿病、喫煙、冠動脈疾患の家族歴、低HDL血症のうち何個が当てはまるか、また年齢によって低リスク~高リスクまで分類されます。

 

危険因子の個数 男性 女性
40-59 60-74 40-59 60-74
0 低リスク 中リスク 低リスク 中リスク
1 中リスク 高リスク 低リスク 中リスク
2個以上 高リスク 高リスク 中リスク 高リスク

 

リスクの個数により目標値は異なります。二次予防であればより厳格なLDLのコントロールが必要と言われています。

治療方針の原則 管理区分 脂質管理目標値(mg/dL
LDL-C Non-HDL-C TG HDL-C
一次予防
まず生活習慣の改善を行った後、薬物療法の適用を考慮する
低リスク <160 <190 <150 ≧40
中リスク <140 <170
高リスク <120 <150
二次予防
生活習慣の是正とともに薬物治療を考慮する
冠動脈疾患の既往 <100
(<70)*
<130
(<100)*

 

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