ニュース概要
総務省消防庁の週報によると、2026年7月6日〜12日の1週間に、熱中症で救急搬送された人は全国で4,580人にのぼり、前週の約3.3倍に急増しました。
- 7月12日(日)だけで1,025人が搬送。全国3地点で38℃以上を観測し、猛暑日(35℃以上)の地点は70を超えて今シーズン最多
- 年代別では65歳以上が2,827人(61.7%)と6割超
- 発生場所は「住居」が1,733人(37.8%)で最多、次いで「道路」944人(20.6%)
- 重症度は軽症が2,652人(57.9%)、中等症とあわせて96.3%。この週の死亡は7人
注目すべきは、もっとも多い発生場所が屋外ではなく「自宅の中」だったことです。
そして循環器内科の立場から強調したいのは、暑い時期に「気を失って倒れた」ケースのすべてが熱中症とは限らないという点です。京都市西京区・桂川・桂・洛西口エリアでも猛暑日が続いています。ご家族が倒れたとき、あるいはご自身がふらついたとき、どこを見れば危険を見分けられるのかを整理します。
医学的背景
失神(しっしん)とは、脳への血流が一時的に足りなくなって意識を失い、短時間で自然に回復する状態を指します。夏に起こる失神には、主に次の4つのタイプが混じっています。
① 熱中症によるもの
汗で水分と塩分を失い、体温調節が破綻した状態です。体が熱い・皮膚が赤い・意識がはっきりしない場合は重症(熱射病)で、直ちに救急要請が必要です。
② 迷走神経反射性(神経調節性)失神
長時間の起立、暑さ、痛み、人混み、排尿・排便時のいきみなどをきっかけに、一時的に脈が遅くなり血圧が下がって起こります。もっとも多いタイプで、基本的には命に関わりません。
特徴は、倒れる前に「気持ち悪い」「冷や汗」「目の前が白くなる」「あくび」といった前ぶれがあること、そして横になるとすみやかに回復することです。
③ 起立性低血圧(脱水・薬剤性)
夏は発汗で循環血液量が減り、体温を逃がすため皮膚の血管が広がるので、もともと血圧が下がりやすい季節です。ここに降圧薬・利尿薬・α遮断薬(前立腺の薬)・SGLT2阻害薬などが加わると、立ち上がった直後に血圧が大きく下がることがあります。
ただし、「夏だから」とご自身の判断でお薬を減量・中止するのは危険です。 血圧が跳ね上がって脳卒中や心筋梗塞につながる例があります。ふらつきが出たら、やめる前に必ず主治医へご相談ください。調整が必要かどうかは、家庭血圧の記録と採血(腎機能・電解質)を見て判断します。
④ 心原性失神(心臓が原因)
不整脈(高度徐脈・心室頻拍など)、大動脈弁狭窄症、肥大型心筋症などによるものです。頻度こそ高くありませんが、突然死につながりうるため、確実に拾い上げる必要があります。
2026年7月に報告された心停止の警告症状に関する研究では、けいれん様の症状が心停止の重要な手がかりとされました。「一瞬けいれんしたからてんかんだろう」と決めつけないことも大切です。
日常生活で気をつけたいポイント
- 室内でもエアコンを使う。 搬送のもっとも多い場所は住居です。高齢の方は暑さも渇きも感じにくくなります。
- のどが渇く前に、こまめに水分を。 大量に汗をかいたときは塩分(経口補水液など)も一緒に。
- 急に立ち上がらない。 起床時、入浴後、トイレのあとはワンテンポおいてから動きましょう。
- 家庭血圧を朝晩測って記録する。 夏に下がりすぎていないかを確認できます。診察時にご持参ください。
- 倒れたときの状況をメモする。 何をしていたか/前ぶれの有無/回復までの時間/目撃者から見た様子。診断の大部分はこの情報で決まります。
- アルコールと利尿作用のある飲み物に注意。 脱水を助長します。
- お薬は自己判断で変えない。 気になったら受診して相談する、が正解です。
受診の目安
次のような失神は、心臓が原因の可能性を考えて、早めに循環器内科へご相談ください。
- 前ぶれがまったくなく、突然パタッと倒れた
- 運動中・労作中に意識を失った
- 横になっている状態から失神した
- 動悸を感じた直後に意識を失った
- けいれんのような動きをともなった
- 心不全・心筋梗塞・弁膜症などの既往がある
- 若くして突然死した血縁者がいる
- 胸の痛み、強い息切れをともなった
次の場合は救急対応が必要です。ためらわず 119番 してください。
- 呼びかけに反応しない、意識が戻らない
- 体が熱く、皮膚が赤く、汗が出ていない(熱射病を疑う)
- けいれんが続く、または繰り返す
- 強い胸痛や激しい息切れをともなう
- 倒れて頭を強く打った
前ぶれ(吐き気・冷や汗)があり、横になったらすぐ戻った――という経過なら迷走神経反射性失神の可能性が高いですが、初めての失神は一度きりでも原因を確認しておく価値があります。
まとめ
猛暑が続く時期、「気を失った」というエピソードは熱中症で片づけられがちです。しかし、その裏には迷走神経反射、脱水やお薬による起立性低血圧、そして心臓が原因の失神が混じっています。
見分けるカギは、「前ぶれがあったか」「何をしているときだったか」「どのくらいで戻ったか」の3点です。この情報が残っていれば、診断は大きく前進します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を示すものではありません。お薬の変更・中止は必ず主治医にご相談ください。
当院で相談できること
医療法人グロース 桂川さいとう内科循環器クリニックは、京都府京都市西京区下津林南大般若町37番地 リペアス下津林2Fにあります。阪急桂駅・JR桂川駅・洛西口駅からお越しいただける、桂川エリアの一般内科・循環器内科です。
失神・立ちくらみのご相談では、次のような検査を院内で行っています。
- 12誘導心電図(不整脈・伝導障害・心筋の異常の確認)
- 24時間ホルター心電図(発作性の不整脈をとらえる)
- 心臓超音波検査(心エコー:大動脈弁狭窄症や心筋の病気の評価)
- 血液検査(脱水・貧血・腎機能・電解質・血糖の確認)
- 家庭血圧・血圧手帳をもとにした降圧薬の見直しのご相談
「暑い日にふらついた」「一度だけ気を失ったが、そのままにしている」「夏になって血圧が低く、薬が心配」――どうぞお気軽にご相談ください。
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引用文献・参考サイト

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