疾患解説

群馬大学が中学校健診にデジタル心音図を導入―学校心臓健診の「要再検査」も解説

ニュース概要

2026年7月8日、群馬大学は、群馬大学共同教育学部附属中学校の学校健診へ「デジタル心音図検査」を導入したと発表しました。大学によると、中学校健診へのデジタル聴診器の活用は全国初の取り組みです。

今回使用されたのは、AMI株式会社の心音図検査装置「SSS01シリーズ」です。心音と心電図を同時に記録できる医療機器で、医師の聴診をデジタルデータで補助することが期待されています。

デジタル聴診器は、心臓の音をデータとして記録し、心音の波形を確認したり、後から共有・比較したりできる機器です。今回の取り組みでは、従来の医師による聴診結果とデジタルデータを用いた判断結果を比較し、学校健診の精度や実用性を検討するとされています。

心音を記録できれば、短時間に多くの児童・生徒を診る学校健診で、判断のばらつきを減らしたり、専門医による確認につなげたりできる可能性があります。一方、現時点では新しい学校保健モデルを検討する段階です。「デジタル聴診器ならすべての心臓病を見つけられる」「従来の診察や心電図が不要になる」と証明されたわけではありません。

このニュースを機に、学校心臓健診や学校心電図で「要再検査」「心電図異常」「心雑音」と指摘されたとき、保護者が知っておきたい対応を整理します。

医学的背景

学校心臓健診では何を調べる?

学校心臓健診では、問診票、学校医の診察・聴診、心電図などを組み合わせ、症状のない子どもに隠れている心疾患を早く見つけることを目指します。心電図を行う学年や具体的な方法は地域によって異なりますが、小学1年、中学1年、高校1年などが代表的な対象です。

心電図は心臓の電気的な動きを調べる検査で、不整脈、WPW症候群、QT延長などを見つける手がかりになります。聴診や心音図は心臓の音を調べ、心雑音や弁・心臓の構造に関わる異常を疑う手がかりになります。両者は同じ検査ではなく、それぞれ得意な情報が異なります。

「要再検査」は病気が確定したという意味ではない

成長期の子どもの心電図には、年齢、体格、運動習慣、緊張などによる正常範囲の変化もあります。心雑音にも、心臓の病気を伴わない「無害性心雑音」があります。そのため、学校健診で要再検査になっても、二次検査で問題なしと判断されることは珍しくありません。

一方で、結果通知だけでは病気の有無を確定できません。異常の種類によっては、運動時の失神や突然の不整脈と関係する病気が見つかることもあります。「本人は元気だから」と通知を放置せず、指定された期限や方法に従って医療機関を受診することが大切です。

二次検査では何をする?

二次検査の内容は、指摘された所見と症状によって異なります。一般的には次のような確認を組み合わせます。

  • 結果通知、問診票、過去の心電図の確認
  • 胸痛、動悸、息切れ、失神、運動時の症状の聞き取り
  • 若い年齢での突然死、心筋症、不整脈などの家族歴の確認
  • 診察、聴診、12誘導心電図
  • 必要に応じて心エコー、24時間心電図、運動負荷試験など

すべての子どもにすべての検査を行うわけではありません。最初の所見を確認し、必要性を判断して追加します。検査結果に基づき、学校生活管理指導表の作成や、体育・部活動の参加方法を相談する場合もあります。

日常生活で気をつけたいポイント

    1. 結果通知をなくさず、早めに予約する

「心電図異常」「期外収縮」「QT延長疑い」「WPW疑い」「心雑音」など、指摘された言葉が分かる通知を持参します。

    1. 症状が起きる場面をメモする

運動中か安静時か、何分続いたか、動悸・胸痛・息切れ・めまい・失神を伴ったかを記録します。スマートウォッチの記録がある場合も、参考資料として提示できます。

    1. 家族の心臓病歴を確認する

家族・親族に若年での突然死、原因不明の失神、心筋症、遺伝性不整脈がないか確認します。分かる範囲で構いません。

    1. 自己判断で「運動禁止」「運動再開」を決めない

学校から指示がある場合は従い、医療機関で安全性を確認します。必要以上に怖がってすべての運動を長期間止めることも、所見を無視して激しい部活動を続けることも避けます。

    1. 受診時の持ち物をそろえる

健診結果通知、学校生活管理指導表、保険証・医療証、お薬手帳、過去の検査結果を持参すると診療が進みやすくなります。

受診の目安

学校から要再検査・精密検査の通知を受け取った場合は、症状がなくても指定に沿って受診してください。特に次の状況では、予約時に必ず伝え、早めの評価を相談します。

  • 運動中または運動直後に失神した、意識が遠のいた
  • 運動時の胸痛、強い動悸、息切れがある
  • 突然始まり突然止まる速い動悸を繰り返す
  • 家族に若年での突然死、心筋症、重い不整脈がある
  • 以前から心臓病を指摘されている、川崎病の既往がある

意識がない、正常な呼吸がない、けいれんするように倒れた場合は、直ちに119番通報、胸骨圧迫、AEDの手配が必要です。通常の外来受診を待つ状況ではありません。

当院で相談できること

医療法人グロース 桂川さいとう内科循環器クリニックは、京都市西京区下津林南大般若町37番地 リペアス下津林2Fにある一般内科・循環器内科・腎臓内科のクリニックです。

当院では10歳以上の方を対象に、学校心臓健診や学校心電図で要再検査となった場合の相談に対応しています。結果通知、症状、家族歴を確認し、心電図や必要な検査を組み合わせて評価します。年齢や所見により小児循環器専門施設での精密検査が適切な場合は、連携先へご紹介します。

院長は大学病院在籍時にデジタル心音図の研究開発へ協力した経験がありますが、診療では特定の機器だけで判断せず、健診結果、症状、診察と標準的な検査を組み合わせて評価します。

詳しくは学校心臓健診の二次検査・精密検査学校心臓健診ガイドライン2025年の解説循環器内科のご案内をご覧ください。

阪急桂駅、JR桂川駅、洛西口、桂川エリアからアクセスしやすく、WEB予約と駐車場に対応しています。受診方法はWEB予約、所在地と交通手段はアクセスページで確認できます。

まとめ

群馬大学は、AMI株式会社のデジタル心音図検査を中学校健診へ導入し、従来の聴診との精度比較を進める取り組みを公表しました。当院院長も、大学病院在籍時に同社の心音図・心電図記録機器の研究開発に協力し、関連論文の共著者として参加しています。学校健診DXの可能性を示すニュースですが、現時点で従来の診察や心電図、必要に応じた二次検査を置き換えるものではありません。

学校心臓健診で「要再検査」「心電図異常」「心雑音」と指摘されても、病気が確定したわけではありません。ただし、結果を確認しなければ問題のない変化か、経過観察や治療が必要な所見かを区別できません。京都市西京区、桂川、桂、洛西口周辺で学校心電図の二次検査を希望される10歳以上の方は、桂川さいとう内科循環器クリニックへご相談ください。

院長とAMI株式会社の心音図研究との関わり

院長は、京都大学病院在籍時にAMI株式会社の心音図・心電図記録機器の研究開発へ協力し、今回のニュースで使われたSSS01シリーズに関連する論文の共著者として参加しています。

この論文は成人を対象に、SSS01シリーズで8秒間記録した心音と心電図から、心不全の診療で使われるBNPが100pg/mL以上かを深層学習で推定した研究です。140人で行った外部検証では良好な識別性能が示され、短時間の記録が心不全評価を補助する可能性が報告されました。詳しくはCirculation Journal掲載論文をご覧ください。

出典

  • 群馬大学(2026年7月8日)「全国初、デジタル聴診器を中学校健診に活用―医療DXで心疾患の早期発見と学校健診の質向上を目指す―」:プレスリリース
  • Ogawa S, et al. “Deep Learning for Cardiac Overload Estimation — Predicting B-Type Natriuretic Peptide (BNP) Levels From Heart Sounds and Electrocardiogram —” Circulation Journal. 2025;89:1684–1692:論文(DOI)
  • 日本循環器学会・日本小児循環器学会「2025年JCS/JSPCCSガイドライン フォーカスアップデート版 学校心臓検診」:公式ガイドライン
  • 文部科学省「学校保健統計調査―用語の解説」:心電図異常の定義

※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断や治療を代替するものではありません。


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