疾患解説

熱中症対策のスポーツドリンクに注意?ペットボトル症候群と糖尿病の飲み物選び

ニュース概要

2026年7月15日、FNNプライムオンラインは、7月6日から12日までの1週間に熱中症で救急搬送された人が全国で4,580人となり、前週の3倍以上に増えたと報じました。このうち7人が死亡し、105人が重症だったとされています。

さらに7月20日には、翌21日を対象とする熱中症警戒アラートが東北から沖縄の42都府県に発表され、京都府も対象になりました。厳しい暑さの中では、エアコンの使用、外出時間の調整、こまめな休憩と水分補給が欠かせません。

一方、「熱中症が心配だから」と、日常の水分をスポーツドリンク、炭酸飲料、果汁飲料など糖質を含む飲み物だけで補っていると、血糖が大きく上昇することがあります。特に糖尿病がある方や、まだ診断されていないものの血糖が高い方では、強い口渇から甘い飲み物をさらに飲み、高血糖と脱水が悪化する悪循環に注意が必要です。

これは一般に「ペットボトル症候群」と呼ばれ、医学的には清涼飲料水ケトーシスと表現される病態です。ペットボトルという容器が原因ではなく、糖質を含む飲み物を大量に飲み続けることが問題です。

医学的背景

2026年の論文で報告された2症例

2026年3月、European Journal of Clinical Nutritionに、加糖飲料の大量摂取後に急性代謝異常を起こした2型糖尿病患者2人の症例報告が掲載されました。

  • 33歳男性は、糖質を含む炭酸飲料を1日約2.5L飲み、アシドーシスを伴わないケトーシスを発症
  • 18歳男性は、同様の飲料を1日約4L飲み、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)を発症

2人ともインスリン治療を受け、退院後にはインスリンを中止できました。ただし、これはわずか2例の症例報告であり、原因と結果を一般化することはできません。また、報告されたのは極端な量の加糖炭酸飲料であり、「スポーツドリンクを一口飲むとケトアシドーシスになる」と示した研究ではありません。

日本でも以前から、糖質を含む清涼飲料水の多飲に伴うケトーシスが報告されています。日本人患者を追跡した研究では、肥満やインスリン抵抗性を背景に、加糖飲料の大量摂取をきっかけとしてケトーシスを起こす例が検討されました。これらは、糖尿病と診断されていない方でも発症し得ることを示唆しますが、頻度を正確に示す大規模研究ではありません。

なぜ「のどが渇くほど甘い飲み物を飲む」悪循環になるのか

血糖が著しく高くなると、尿へブドウ糖が出て、その糖と一緒に水分も失われます。これを浸透圧利尿といいます。尿量が増えて脱水が進むと、さらに強い口渇を感じます。

このとき加糖飲料を繰り返し飲むと、短時間に多量の糖質が入り、血糖がさらに上がることがあります。インスリンの作用が大きく不足すると、体は脂肪を分解してエネルギーを作り、ケトン体が増えます。ケトン体が大量にたまり血液が酸性へ傾いた状態が糖尿病性ケトアシドーシスで、緊急治療が必要です。

つまり、次のような循環が問題になります。

高血糖 → 尿量増加 → 脱水・口渇 → 加糖飲料の多飲 → さらに高血糖

暑い時期は発汗でも水分を失うため、この悪循環が見逃されやすくなります。「暑いからのどが渇く」と思っていても、異常な口渇や尿量の増加が続く場合は、高血糖が隠れている可能性があります。

スポーツドリンクが役立つ場面もある

スポーツドリンクには水分、糖質、ナトリウムなどが含まれ、長時間の運動、炎天下での身体作業、大量に汗をかいた場面では、水分と電解質の補給に役立つことがあります。厚生労働省も、高温環境で強い身体作業を行う場合には、作業強度や発汗量に応じた水分・塩分補給を勧めています。

したがって、スポーツドリンク自体を一律に「危険」と考えるのは適切ではありません。問題は、通常の生活や短時間の外出でも水代わりに何本も飲むこと、商品に含まれる糖質量や飲んだ量を確認しないことです。

なお、経口補水液はスポーツドリンクとは別物です。脱水時に水分と電解質を吸収しやすい組成ですが、ナトリウム、カリウム、糖質を含みます。消費者庁は、脱水状態でない方が日常の水分補給として飲むものではなく、食事制限がある場合は医師などへ相談するよう案内しています。

日常生活で気をつけたいポイント

1.普段の水分補給は水・無糖飲料を中心に

デスクワーク、通常の家事、短時間の外出など、食事がとれていて大量の発汗がない場面では、水や無糖のお茶を基本にします。コーヒーやお茶は糖分を加えず、カフェインで眠れなくなる方は夕方以降の量に注意してください。

糖尿病のある方では、米国糖尿病協会も加糖飲料より水を選ぶことを勧めています。無糖・ゼロ表示の飲料も選択肢ですが、水の代わりに際限なく飲むのではなく、商品表示と体調を確認しましょう。

2.スポーツドリンクは「量と場面」を決める

長時間の運動や大量の発汗があるときは、スポーツドリンクが適する場合があります。一方、普段の水分をすべて置き換える必要はありません。

商品によって糖質と塩分は異なります。栄養成分表示の「炭水化物」「食塩相当量」と、表示が100mL当たりか1本当たりかを確認してください。糖尿病、高血圧、心不全、腎臓病のある方は、適切な種類と量が病状や薬によって変わります。

3.糖尿病の方は血糖値と症状を組み合わせて見る

暑い日は、いつもよりこまめに血糖を確認します。持続血糖測定器を使っている方も、表示値と症状が合わないときは指先測定など、主治医から指示された方法で確認してください。

次の変化があれば、「暑さのせい」だけにしないことが大切です。

  • 水を飲んでも治まらない強い口渇
  • 尿の回数・量が明らかに増えた
  • 原因の分からない体重減少
  • 強いだるさ、吐き気、腹痛
  • 血糖が普段より大幅に高い状態が続く

4.低血糖への対応は別に考える

糖質を含む飲み物は、低血糖時に速やかに糖を補う目的で使われることがあります。低血糖時まで一律に加糖飲料を避けるのは危険です。あらかじめ医療者と決めた低血糖時の補食方法に従い、ゼロカロリー飲料は低血糖の糖補給には使えないことを覚えておきましょう。

5.体調不良時の薬は自己判断で変えない

発熱、嘔吐、下痢、食事がとれない状態は「シックデイ」と呼ばれ、脱水と高血糖または低血糖の両方に注意が必要です。特にSGLT2阻害薬、メトホルミン、インスリンなどを使用している方は、事前に主治医とシックデイ時の対応を確認してください。

体調不良だからといって薬を一律に中止・増量せず、指示がない場合は処方元へ連絡してください。

糖尿病の方の飲み物:場面別の目安

| 場面 | 主な選択肢 | 注意点 | |—|—|—| | 日常の水分補給 | 水、無糖のお茶 | 糖質を含む飲料を水代わりにしない | | 短時間の外出・軽い運動 | 水、無糖飲料 | 食事がとれていれば塩分を毎回追加する必要は通常ない | | 長時間の運動・大量の発汗 | 水分と電解質を含む飲料を状況に応じて使用 | 糖質量、血糖、運動時間、薬を踏まえて個別に調整 | | 低血糖 | 医療者と決めたブドウ糖・糖質飲料 | ゼロ飲料は低血糖治療にならない | | 嘔吐・下痢・脱水 | 経口補水液が適する場合がある | 日常飲料ではない。糖尿病・心不全・腎臓病では医療者へ相談 |

この表は一般的な目安です。心不全や腎不全で水分制限がある方、インスリン治療中の方、運動前後に低血糖を起こしやすい方では個別の計画が必要です。

受診の目安

早めに内科へ相談したい症状

  • 強い口渇や多尿が数日続く
  • 甘い飲み物を毎日多量に飲んでいる
  • 健診で血糖やHbA1cの異常を指摘された
  • 体重減少、強い疲労感、目のかすみがある
  • 糖尿病治療中で、暑い日に血糖がいつもより高い状態が続く
  • スポーツドリンクや経口補水液の選び方が、持病や薬と合っているか分からない

救急要請を考える症状

  • 意識がぼんやりする、呼びかけへの反応がおかしい
  • 自力で水分を飲めない
  • 繰り返す嘔吐、強い腹痛
  • 深く速い呼吸、息苦しさ
  • けいれん、まっすぐ歩けない
  • 高体温と意識障害がある

重い熱中症と糖尿病性ケトアシドーシスは、どちらも意識障害や脱水を起こします。家庭で見分けようとせず、緊急性の高い症状があれば救急要請を検討してください。

当院で相談できること

医療法人グロース 桂川さいとう内科循環器クリニックは、京都市西京区下津林南大般若町37番地 リペアス下津林2Fにある一般内科・循環器内科・腎臓内科のクリニックです。

糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病に加え、熱中症後の体調不良、強い口渇、多尿、脱水、動悸、息切れなどをご相談いただけます。血糖、HbA1c、尿検査、腎機能、電解質、服薬内容などを確認し、普段の水分補給や暑い日の対応を一緒に考えます。

診療内容は診療案内、糖尿病を含む生活習慣病については生活習慣病のご案内をご覧ください。

阪急桂駅、JR桂川駅、洛西口、桂川エリアからアクセスしやすく、WEB予約と駐車場に対応しています。WEB予約アクセスページもご利用ください。

まとめ

厳しい暑さでは、熱中症を防ぐための水分補給が重要です。しかし、「暑い日はスポーツドリンクを何本飲んでもよい」という意味ではありません。糖質を含む飲み物を大量に飲み続けると、糖尿病のある方や高血糖が隠れている方では、高血糖、脱水、清涼飲料水ケトーシスの悪循環につながることがあります。

普段は水や無糖飲料を基本にし、スポーツドリンクは長時間の運動や大量の発汗など必要な場面に合わせて使いましょう。経口補水液も日常飲料ではありません。糖尿病、高血圧、心不全、腎臓病がある方は、病状と薬に合った飲み方を医療者へ確認してください。

京都市西京区、桂川、桂、洛西口周辺で、強い口渇、多尿、高血糖、熱中症後の不調や飲み物の選び方が気になる方は、桂川さいとう内科循環器クリニックへご相談ください。

※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断や治療を代替するものではありません。

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