はじめに
スーパーやコンビニで売られている食品の多くには、品質を保ち日持ちを良くするために保存料(食品添加物)が使われています。「体に悪いのでは?」と気にされる方もいれば、「気にしてもキリがない」と思う方もいらっしゃるでしょう。
今日は、その保存料と、血圧・心臓の病気との関係を調べた、フランスの大きな研究をご紹介します。少しドキッとする内容かもしれませんが、特定の食品を“悪者”にして怖がるための話ではありません。毎日の食卓を、少しだけ整えるヒントとして読んでいただければと思います。
今日のニュース
ヨーロッパの欧州心臓病学会が紹介し、循環器の専門誌European Heart Journalに2026年に掲載された研究です(ScienceDaily 2026年6月18日報道)。フランスのINSERM(フランス国立保健医学研究所)のマチルド・トゥヴィエ博士らの研究チームによるものです。
研究チームは、フランスのNutriNet-Santé(ニュートリネット・サンテ)という大規模調査に参加した112,395人を対象に、半年ごとに「食べたもの・飲んだもの」を3日間ずつ詳しく記録してもらい、そこに含まれる保存料の種類と量まで細かく調べました。そして平均7〜8年にわたって、高血圧や心血管疾患(心筋梗塞・脳卒中・狭心症など)になるかどうかを追跡しました。なお、参加者のほぼ全員(最初の2年で99.5%)が、少なくとも1種類の保存料を口にしていました。
主な結果は次のとおりです。
- 抗酸化作用のない保存料(カビや細菌の繁殖を抑えるタイプ)の摂取量が最も多いグループは、最も少ないグループに比べて高血圧のリスクが約29%高く、心血管疾患(心筋梗塞・脳卒中・狭心症)のリスクが約16%高いという関連がみられました。
- 抗酸化タイプの保存料(食品が変色・酸化するのを防ぐタイプ)の摂取量が最も多いグループでは、高血圧のリスクが約22%高いという関連がありました。
- よく使われる17種類の保存料を一つずつ調べたところ、8つの保存料が高血圧と関連していました。具体的には、ソルビン酸カリウム(E202)、ピロ亜硫酸カリウム(E224)、亜硝酸ナトリウム(E250)、アスコルビン酸(E300)、アスコルビン酸ナトリウム(E301)、エリソルビン酸ナトリウム(E316)、クエン酸(E330)、ローズマリー抽出物(E392)です。このうちアスコルビン酸(E300)は、心血管疾患とも関連していました。
研究者らは「これは観察研究であり、限界がある」と慎重に述べたうえで、「未加工または最小限の加工にとどめた食品を選び、不要な添加物を避けるという、これまでの食事の推奨を支持する結果だ」とまとめています。
患者さん向けのポイント
- これは“関連(結びつき)”をみた観察研究です。 たくさんの人を長く追跡した質の高い研究ですが、「保存料が血圧を“必ず”上げる」と証明したわけではありません。保存料の多い食事をする人は、ほかの生活習慣も異なる可能性があり、その影響を完全には取り除けません。
- 特定の食品を過度に怖がる必要はありません。 保存料は食品の安全(食中毒の防止など)に役立っている面もあります。大切なのは、ひとつの成分に神経質になることより、食事全体のバランスです。
- ここで名前が挙がった「アスコルビン酸(E300)」は、いわゆるビタミンCとしても知られる成分です。ただし今回問題になっているのは、加工食品に“添加物として”多く使われている状況であって、果物や野菜に自然に含まれるビタミンCを控えましょう、という話ではありません。野菜や果物はこれまでどおり大切な食材です。
- 保存料が多い食品は、たいてい塩分・脂肪・糖分も多い「加工食品・超加工食品」でもあります。結果として血圧や心臓に負担がかかっている可能性もあります。まず減塩と、加工食品を少し減らすことから始めるのが現実的です。
- できる範囲で、未加工・最小限の加工の食品(旬の野菜、果物、魚、豆、未精製の穀物など)を増やし、加工肉(ハム・ソーセージ・ベーコンなど)や市販の総菜・スナック・加工飲料は“ほどほど”にする──そんな緩やかな心がけで十分です。
- すでに高血圧で通院中の方は、今のお薬を自己判断でやめたり減らしたりしないでください。食事の工夫は薬の代わりではなく、薬と一緒に効果を高めるためのものです。
まとめ・当院からのメッセージ
今回の研究は、加工食品に使われる保存料を多く摂る人ほど、高血圧や心臓・血管の病気のリスクが高い傾向があることを、11万人規模のデータで示しました。とはいえ、これは関連を示した観察研究であり、ひとつの食品や成分を“悪者”にして怖がるための話ではありません。
当院がお伝えしたいのは、とてもシンプルなことです。完璧を目指さず、加工食品を少し減らし、未加工に近い食材と減塩を心がける──それが血圧にも心臓にもやさしい食生活への第一歩です。「何をどれくらい食べたらいいの?」「うちの食卓、どこから見直せばいい?」と迷ったら、家庭血圧の記録とあわせて、どうぞお気軽にご相談ください。無理なく続けられる方法を、一緒に考えます。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の治療や食事制限を指示・推奨するものではありません。お薬の開始・変更・中止は、自己判断ではなく必ず主治医にご相談ください。気になる症状があるときは、ためらわずに受診してください。
参考・引用元
- ScienceDaily「Researchers found 8 common food additives linked to high blood pressure and heart disease」2026年6月18日: https://www.sciencedaily.com/releases/2026/06/260617032204.htm
- 原著: Hasenböhler A, Touvier M, ほか. Preservative food additives, hypertension, and cardiovascular diseases: the NutriNet-Santé study. European Heart Journal, 2026; DOI: 10.1093/eurheartj/ehag308(フランスの前向きコホート NutriNet-Santé、112,395人、平均7〜8年追跡の観察研究)。

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