研究

家庭での血圧測定×主治医との共有で、心臓発作・脳卒中・心不全リスク34%減と関連──スコットランド45万人の研究(2026)

はじめに

「血圧は病院で測るもの」と思っていらっしゃる方は多いのではないでしょうか。でも実は、ご自宅で測る血圧(家庭血圧)は、診察室で測る血圧と同じか、それ以上に大切な情報です。病院だと緊張して高めに出てしまう方(いわゆる「白衣高血圧」)や、逆に家でこそ高くなる方(「仮面高血圧」)もいて、ふだんの本当の血圧は家庭でこそよく分かるからです。

今回ご紹介するのは、「家庭で血圧を測り、その値を主治医と共有する」という仕組みが、心臓発作や脳卒中などのリスク低下と関連していた、というスコットランドの大規模な研究です。

今日のニュース

イギリス・エディンバラ大学などの研究チームが、European Heart Journal-Digital Healthという医学誌に発表した研究で、MedicalXpressやUS News(いずれも2026年6月16日)などが報じました。

研究チームは、スコットランドで2019〜2022年に高血圧の治療を受けた約45万人の実際の診療データを解析しました。このうち約9,500人は「Connect Me BP」という遠隔モニタリング(テレモニタリング)の仕組みを利用し、自宅で測った血圧を主治医(かかりつけ医)と共有していました。残りの方は、これまで通りの一般的な診療(かかりつけ医による経過観察)を受けていました。

主な結果は次のとおりです。

  • 遠隔モニタリングに参加した人は、参加していない人に比べて、心臓発作・脳卒中・心不全による入院または死亡のリスクが34%低いという関連がみられました。
  • 参加者は、開始から3か月以内に血圧が下がり、その低下は1年以上続いていました。
  • 研究を主導したブライアン・マッキンストリー名誉教授は、「遠隔モニタリングが血圧を下げるだけでなく、脳卒中や心臓発作も減らしうることを示す、これまでで最も強い証拠だ」と述べています。

つまり、「自分で血圧を測って記録し、その値を医師と共有して治療に活かす」という、特別な薬や手術に頼らないシンプルな取り組みが、心臓・血管の健康を守ることにつながる可能性がある、という心強い報告です。

患者さん向けのポイント

  • これは実際の診療データを使った観察研究です。 「家庭で測れば“必ず”心臓発作が減る」と証明したものではなく、「遠隔モニタリングを使っていた人ほど、心臓・血管のトラブルが少ない傾向だった」という“関連(結びつき)”を示すものです。意欲の高い方が参加していた可能性などもあり、原因と結果を断定するものではありません。
  • それでも、「家庭血圧をきちんと測り、その値を医師と共有して治療を調整する」ことが血圧コントロールに役立つという方向性は、これまでの多くの研究や日本のガイドラインとも一致しています。
  • 大切なのは「測って終わり」ではなく、測った値を主治医に伝えて、お薬や生活習慣の調整に活かすことです。
  • 家庭血圧の測り方のポイント: ①朝(起きて1時間以内・トイレのあと・薬や朝食の前)と、夜(寝る前)に測る、②座って1〜2分休んでから、背もたれに寄りかかり足を組まずに測る、③カフ(腕帯)は心臓の高さに、上腕で測るタイプがおすすめ、④毎回1〜2回測って記録する。数字に一喜一憂せず、1週間など“ならし”の平均でみるのがコツです。
  • 一般に家庭血圧は朝・晩ともに135/85 mmHg未満が一つの目安とされますが、目標値は年齢や持病によって異なります。ご自身の目標値は主治医にご確認ください。
  • 数値が高いからといって、自己判断でお薬を増やしたり、やめたりしないでください。 必ず主治医にご相談を。
  • 強い頭痛、胸の痛み・圧迫感、強い息切れ、ろれつが回らない・手足の力が入らないなどの症状があるときは、血圧の数値にかかわらず、ためらわず受診・救急要請をしてください。

まとめ・当院からのメッセージ

今回の大規模研究は、家庭で血圧を測り、その値を主治医と共有する「遠隔モニタリング」が、心臓発作・脳卒中・心不全のリスク低下と関連していたことを示しました。観察研究なので断定はできませんが、「家庭血圧を測って、医師と一緒に治療に活かす」という習慣の大切さを、あらためて後押しする結果といえます。

当院では、家庭血圧手帳やアプリを使った血圧記録のご相談、正しい測り方のご案内、記録をもとにしたお薬・生活習慣の調整を行っています。「血圧計を買ったけれど使い方が不安」「家で測ると病院より高い/低い」「測った値をどう活かせばいいの?」という方は、ぜひ測定した記録をお持ちになってご相談ください。日々の小さな“ひと手間”が、心臓と血管を守る大きな力になります。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の治療を指示・推奨するものではありません。お薬の開始・変更・中止は、自己判断ではなく必ず主治医にご相談ください。気になる症状があるときは、ためらわずに受診してください。

参考・引用元


関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

最近の記事

  1. 家庭での血圧測定×主治医との共有で、心臓発作・脳卒中・心不全リスク34%減と関連──スコットランド45万人の研究(2026)

  2. 筋トレは週90〜120分が“長生きのスイートスポット”──心血管死19%減と関連、有酸素運動と組み合わせるとさらに(BMJ/英スポーツ医学誌 2026)

  3. 中村玉緒さんの訃報に寄せて──高齢者にとって油断できない『肺炎』と、肺炎球菌ワクチンのお話