研究

筋トレは週90〜120分が“長生きのスイートスポット”──心血管死19%減と関連、有酸素運動と組み合わせるとさらに(BMJ/英スポーツ医学誌 2026)

はじめに

「健康のために運動を」と聞くと、まずウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を思い浮かべる方が多いと思います。一方で、ダンベルやスクワット、腕立て伏せといった筋トレ(筋力トレーニング=レジスタンス運動)は、「アスリートや若い人がするもの」「自分には関係ないかな」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。

ところが近年、「筋トレも、長生きや心臓・血管の健康に役立つのではないか」という研究が増えてきました。今回ご紹介するのは、アメリカの約15万人を最長30年間も追いかけて、「筋トレをどのくらいすると、どんな効果が期待できるのか」を調べた、とても大きな研究です。

今日のニュース

イギリスのスポーツ医学の医学誌(British Journal of Sports Medicine)に発表された研究で、ScienceDaily(2026年6月12日)が報じました。アメリカの3つの大規模な追跡調査(医療従事者を追った研究と、看護師さんを追った2つの研究)に参加した147,374人(男性31,540人・女性115,834人、開始時の平均年齢54歳)のデータを、最長30年にわたって解析したものです。参加者は2年ごとに、1週間あたりどのくらい筋トレや有酸素運動をしたかを報告しました。

主な結果は次のとおりです。

  • 筋トレの量と死亡リスクには“ちょうどよい範囲”があり、週90〜119分の筋トレが、総死亡(あらゆる原因の死亡)リスク13%減と関連していました。
  • 同じ週90〜119分の範囲で、心血管疾患(心臓・血管の病気)による死亡は19%減神経の病気による死亡は27%減と関連していました。
  • 興味深いことに、週120分を超えて筋トレを増やしても、それ以上の上乗せ効果は見られませんでした。「たくさんやるほど良い」わけではなく、“ほどよい量”がカギ、という結果です。
  • がんによる死亡については、もっと少ない量(週1〜29分で21%減、30〜59分で18%減)でも関連がみられました。
  • そして最も差が大きかったのは、有酸素運動と筋トレを組み合わせた人たちでした。有酸素運動をしっかり行い(週30〜44 METアワー程度)、筋トレを週60〜119分行っていた人では、死亡リスクが45%減。有酸素運動がさらに多い人では、筋トレの量によらず53〜58%減という大きな関連がみられました。

(※「METアワー」は運動量の単位で、ざっくり言うと「速歩きを週150分」が約7.5 METアワーの目安です。難しく考えず、「有酸素運動もそれなりに行い、そこに筋トレを足すと相乗効果が期待できる」とイメージしていただければ十分です。)

患者さん向けのポイント

  • これは「観察研究」です。 「筋トレをすれば“必ず”長生きできる」と証明したものではなく、あくまで「筋トレの習慣がある人ほど死亡リスクが低い傾向だった」という“関連(結びつき)”を示したものです。運動の量も本人の申告によるもので、誤差を含みます。原因と結果を断定するものではありません。
  • それでも、「有酸素運動に筋トレを“足す”と、心臓・血管の健康や長生きにとってプラスになりそう」という方向性は、これまでの多くの研究とも一致しています。
  • ポイントは、“ほどよい量”でよいということ。今回の研究では、長生きの面では週90〜120分あたりが目安で、それ以上頑張っても上乗せは見られませんでした。「もっともっと」と無理をする必要はありません。
  • 「筋トレ」といっても、ジムでバーベルを上げる必要はありません。スクワット、腕立て伏せ、かかと上げ、椅子からの立ち座り、ペットボトルやチューブを使った運動など、ご自宅でできる“自分の体重を使った運動”でも十分です。
  • ただし、心臓・血管に持病のある方や、血圧が高い方、運動を長く休んでいた方は、急に強い筋トレを始めると血圧が上がりすぎたり、関節を痛めたりすることがあります。始める前に、運動の種類や強さについて主治医にご相談ください。 「息を止めて思いきりいきむ」ような運動は血圧を急上昇させるので、呼吸を止めずに、無理のない範囲で行うのが安全です。
  • 運動中に胸の痛みや圧迫感、強い息切れ、めまい、動悸などが出たときは、無理をせず中止し、続くようなら受診してください。

まとめ・当院からのメッセージ

今回の大規模研究は、筋トレは週90〜120分くらいが“長生きのスイートスポット”で、心血管死や神経疾患死のリスク低下と関連し、有酸素運動と組み合わせるとさらに効果が期待できることを示しました。観察研究なので断定はできませんが、「ウォーキングなどの有酸素運動に、軽い筋トレを少し足す」という習慣は、心臓・血管の健康づくりにとって心強い味方になりそうです。

大切なのは、特別なことより続けられることです。週に合計1〜2時間ほどの軽い筋トレ+日々の有酸素運動(速歩きなど)を、ご自身の体力と体調に合わせて、無理なく組み立てていきましょう。当院では、血圧・心電図などの心臓・血管の評価とあわせて、持病やお薬の状況をふまえた“安全に始められる運動”のご相談を承っています。「運動を始めたいけれど心臓が心配」「血圧が高めだけど筋トレしても大丈夫?」という方は、どうぞお気軽にご相談ください。

参考・引用元

  • ScienceDaily「Scientists found the strength training sweet spot for a longer life」2026年6月12日: https://www.sciencedaily.com/releases/2026/06/260611024609.htm
  • 原著: Zhang Y, Lee DH, Rezende LFM, Ma Y, Giovannucci E.「Long-term resistance training with all-cause and cause-specific mortality: assessing dose-response and joint associations with aerobic physical activity」British Journal of Sports Medicine 2026; DOI: 10.1136/bjsports-2025-110503(BMJ Group)

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