研究

血圧の“第3の数字”『脈圧』をご存じですか?──心臓と脳を守るカギかもしれません

血圧を測ると「上は130、下は80」のように2つの数字が出ますが、じつはここにあまり知られていない“第3の数字”がかくれています。それが脈圧(みゃくあつ/パルスプレッシャー)です。

米国のNBC Newsが2026年6月14日に紹介した記事と、その元になった研究が話題になっています。元の研究は、米国神経学会の医学雑誌『Neurology』に2026年6月3日に掲載され、ノースカロライナ大学のLaura Raffield准教授らがまとめました。米国の大規模研究「REGARDS研究」(45歳以上の3万人超)のうち約9,000人(平均64歳)を約14年追跡し、「脈圧が高くなりやすい遺伝的傾向」が強い人で、認知症に関連した死亡リスクが16%高かったことが示されました。糖尿病や冠動脈疾患など他のリスク因子では、はっきりした関連は見られませんでした。

血圧管理に取り組む方が多い京都市西京区・桂川・洛西口エリアでも、ご自宅の血圧計で「上と下の差」をすぐ確かめられる、身近で“自分ごと”にしやすいテーマです。

医学的背景

脈圧の計算はとてもシンプルです。

脈圧 = 上の血圧(収縮期)− 下の血圧(拡張期)

たとえば 120/80 mmHg なら 120 − 80 = 40。この 40 mmHg が脈圧で、40前後が標準的とされています。脈圧は、血管がどれだけしなやかか/硬いか(動脈硬化の程度)を映す手がかりになります。やわらかい風船はらくにふくらみますが、新品の硬い風船は強い力がいる――硬くなった血管はそれに似て、上の血圧が上がり下の血圧が下がりやすく、その差=脈圧が広がります。

脈圧が広がりすぎることは、これまでも心臓病・脳卒中のリスク因子として知られてきました。有名なフラミンガム心臓研究では、脈圧が10 mmHg上がるごとに冠動脈疾患のリスクが約23%高くなると報告され、メイヨー・クリニックは脈圧60 mmHg超をとくに高齢者で心臓病リスクとしています。今回の研究は、ここに「脳・認知症との関連」という視点を加えたものです。ただし示されたのは遺伝的な“なりやすさ”と認知症関連死の関連であり、因果関係が証明されたわけではありません。元ACC会長のSteven Nissen医師も「脈圧が脳の健康と関連するのは驚かないが、遺伝との関連の確認にはさらなる研究が必要」と述べています。なお、血圧や脈圧が気になっても、服用中のお薬を自己判断で減らしたり中止したりしないでください。

日常生活で気をつけたいポイント

  1. 次に血圧を測ったら、「上」と「下」の差(脈圧)にも目を向けてみましょう。40前後が目安、60を超えて続くようなら一度ご相談、という感覚で十分です。
  2. 脈圧は運動後や測るタイミングでも変わります。 1回の数字に一喜一憂せず、家庭で続けて測り「ふだんの傾向」をみることが大切です。
  3. 減塩を中心に、野菜・果物・乳製品でカリウムやカルシウムをとる食事(DASH食の考え方)は、血圧とともに脈圧をやわらげるのに役立ちます。
  4. 適度な運動は血管のしなやかさを保ち、血圧・脈圧を下げる方向に働きます。無理のない範囲で続けましょう。
  5. 専門家も「血圧を治療すれば脈圧も下がる」と説明しています。まずは血圧そのものをきちんと整えることが基本です。

受診の目安

  • 家庭血圧で脈圧が60 mmHgを超える状態が続くとき
  • 上の血圧が高い/下の血圧が低い傾向が続き、動脈硬化が心配なとき
  • めまい・ふらつき・動悸・胸の違和感など、気になる症状をともなうとき
  • 健康診断で血圧や心電図の異常を指摘されたとき

※ 強い胸の痛み、呼吸が苦しい、ろれつが回らない・手足が動かないなどの症状があるときは、ためらわず救急(119番)を検討してください。

まとめ

血圧の“第3の数字”=脈圧は、血管のしなやかさを映す手がかりで、心臓・血管だけでなく脳の健康とも関わる可能性が今回の研究で示されました。とはいえこれは遺伝的傾向と認知症関連死の関連を示したもので、因果関係が証明されたわけではありません。安心していただきたいのは、脈圧は血圧の治療・減塩・運動で「下げられる」数字だということです。本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたもので、服薬の変更や治療の判断は必ず主治医にご相談ください。

当院で相談できること

医療法人グロース 桂川さいとう内科循環器クリニックは、京都府京都市西京区下津林南大般若町37番地 リペアス下津林2F(阪急桂駅・JR桂川駅・洛西口・桂川エリア)にあります。血圧(上・下、そして脈圧)やコレステロールの管理、家庭血圧の正しい測り方まで、循環器内科・内科の立場でご相談をお受けしています。「自分の脈圧は大丈夫?」と気になる方は、どうぞお気軽にご相談ください。

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引用文献・参考サイト


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