はじめに
「腎臓」と聞くと、心臓とは別の臓器で、自分にはあまり関係がないと感じる方も多いかもしれません。
けれども実は、腎臓と心臓は“一心同体”といってもよいほど、深く関わり合っています。腎臓が弱ると心臓に負担がかかり、心臓が弱ると腎臓にも負担がかかる──この関係は 「心腎連関(しんじんれんかん)」 と呼ばれ、循環器内科でもとても重視されています。
そんな中、2026年5月29日に、世界中の腎臓病の状況を調べた大規模な調査の結果が報じられました。これは医学誌 The Lancet(ランセット) に発表された 「Global Burden of Disease(GBD)2023」 という、世界の病気の負担を国ごと・年ごとに追いかける、非常に大規模な国際研究の一部です。
今日は、この調査が示した「慢性腎臓病(CKD)の世界的な広がり」と「腎臓と心臓のつながり」について、私たちの生活に引き寄せてやさしくご紹介します。
今日のニュース
慢性腎臓病(CKD)とは
慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease) とは、
- 腎臓のはたらき(老廃物をろ過する力=eGFR)が低下している
- または、尿にたんぱくが漏れている
といった状態が、3か月以上続いていることを指します。
腎臓は 「沈黙の臓器」 とも呼ばれ、かなり悪くなるまで自覚症状が出にくいのが特徴です。むくみや疲れやすさが出てきたときには、すでに進行していることも少なくありません。だからこそ、健診の血液検査・尿検査での早めの気づきがとても大切になります。
調査でわかったこと
今回の GBD 2023研究(IHME〔米ワシントン大学〕、ニューヨーク大学、グラスゴー大学などのチーム。133か国のデータと2,230本の論文を解析)が示したポイントは、次のとおりです。
- 慢性腎臓病の患者数は、1990年の約3.78億人から、2023年には約7.88億人へと倍以上に増加
- 慢性腎臓病が、世界の死因トップ10に初めて入った
- そして循環器にとって重要なのが、2023年には世界の心血管死(心筋梗塞・脳卒中・心不全など)のおよそ12%が、腎機能の低下に関係していたこと
- CKDは、心血管死の原因として世界で7番目に位置づけられた
つまり、慢性腎臓病は「腎臓だけの問題」ではなく、
心臓病・脳卒中といった命に関わる病気の、大きな“隠れた土台”になっている
ということが、世界規模のデータで改めて示されたのです。
なぜ腎臓と心臓はつながっているの?
腎臓と心臓が深く関わり合う理由には、次のようなものがあります。
- 高血圧:腎臓が弱ると血圧が上がりやすくなり、高い血圧はさらに腎臓と心臓を傷めます
- 体の水分・塩分のバランス:腎臓は余分な水分・塩分を尿として出す役割があり、ここが弱ると体に水分がたまり、心臓に負担がかかります(むくみ・息切れなど)
- 共通の危険因子:糖尿病・高血圧・肥満・喫煙などは、腎臓と心臓の“両方”を同時に傷めます
- 動脈硬化:腎機能の低下は、血管の動脈硬化とも関わり、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めます
このように、腎臓と心臓は 同じ危険因子を共有し、互いに影響し合うため、「片方を守ることが、もう片方を守ること」につながります。
患者さんにとってのポイント
外来でよくお伝えする内容を、5つにまとめます。
- 健診の「腎臓の数値」も必ずチェック
血液検査の クレアチニン・eGFR(腎臓のろ過の力) と、尿検査の 尿たんぱく は、腎臓の状態を知る大切な手がかりです。血圧やコレステロールだけでなく、腎臓の数値にも目を向けてみてください。 - 血圧と血糖の管理が、腎臓も心臓も守る
高血圧と糖尿病は、腎臓と心臓を同時に傷める“二大要因”です。血圧・血糖をていねいに管理することが、そのまま腎臓と心臓の両方を守ることにつながります。 - 減塩は“腎臓と心臓のための共通の習慣”
塩分のとりすぎは、血圧を上げ、腎臓にも心臓にも負担をかけます。1日6g未満の塩分を目安に、少しずつ薄味に慣れていきましょう。 - 市販の痛み止めや健康食品の“とりすぎ”に注意
一部の鎮痛薬(NSAIDs)の常用や、サプリメントのとりすぎが、腎臓に負担をかけることがあります。常用する前に、かかりつけ医や薬剤師にご相談ください。 - 腎臓は“沈黙の臓器”。気づいたときに、早めの相談を
むくみ、尿の泡立ちが続く、夜間のトイレが増えた、疲れやすい──こうしたサインがあるときは、自己判断で様子を見すぎず、一度ご相談ください。早く気づくほど、できる対策も増えます。
まとめ・当院からのメッセージ
今回の GBD 2023研究は、
「慢性腎臓病は世界で急速に広がっており、心臓病・脳卒中の大きな土台にもなっている」
という、私たちの健康にとって見過ごせないメッセージを伝えています。
腎臓と心臓は 「心腎連関」 と呼ばれるほど深くつながっています。だからこそ、
血圧・血糖・塩分・体重といった“ありふれた生活習慣の管理”が、腎臓と心臓を同時に守る一番の近道
になります。特別なことではなく、毎日の積み重ねが効いてくる分野です。
桂川さいとう内科循環器クリニックでは、
- 血液・尿検査による腎機能(eGFR・尿たんぱく)の評価
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症など、腎臓と心臓に共通する危険因子の管理
- 減塩・体重管理を含めた生活習慣のアドバイス
- 必要に応じた 腎臓専門医(腎臓内科)との連携
を、お一人おひとりの状態に合わせて行っています。
なお、当院の副院長は腎臓専門医です。毎週水曜日の午前に外来を担当していますので、腎臓のことをより専門的に相談したい方も安心してお越しいただけます。ご予約の際は、「一般内科・腎臓内科」の枠でお取りください。
「健診で腎臓の数値を指摘された」「血圧や血糖が気になる」「むくみや疲れが続く」── そんなときは、どうか 沈黙の臓器のサインを見逃さず、まずお気軽に外来でご相談ください。
腎臓を守ることは、心臓を守ること。今日からの“ちょっとした習慣”が、未来のあなたの心臓と腎臓を支えます。
参考・引用元
- A silent kidney crisis is spreading far faster than experts expected(ScienceDaily, 2026-05-29)
- Chronic kidney disease has more than doubled since 1990, now affecting nearly 800 million people worldwide(Institute for Health Metrics and Evaluation / IHME)
- Global, regional, and national burden of chronic kidney disease in adults, 1990–2023: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2023(The Lancet, 2025)
- New study reveals CKD affects nearly 800 million adults worldwide(News-Medical)

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