疾患解説

「暑さ」と心臓の深い関係──気候変動で“暑さによる心臓病”が2050年に最大3倍に?(JAMA Cardiology 2026)

はじめに

これから本格的な夏がやってきます。年々「今年も暑くなりそうだな」と感じている方も多いのではないでしょうか。

「暑さ」というと、まず思い浮かぶのは熱中症かもしれません。でも実は、暑さは心臓にも大きな負担をかけていることが、近年あらためて注目されています。

2026年、米国の研究チームが循環器の専門誌 JAMA Cardiology に発表した研究では、気候変動による気温の上昇が、これからの数十年で「暑さに起因する心臓病」を大きく増やす可能性があることが示されました。今日は、この研究をきっかけに「なぜ暑さが心臓に良くないのか」「どんな人が気をつけるべきか」、そして「これからの季節に今日からできる暑さ対策」を、循環器内科の視点からやさしくご紹介します。

今日のニュース

どんな研究だったの?

研究を行ったのは、米国の ケース・ウェスタン・リザーブ大学、ユニバーシティ・ホスピタルズ、ルイス・ストークス・クリーブランド退役軍人医療センター などのチームです。

研究チームは、米国本土の各郡(市区町村のような単位)における過去の心臓病のデータ、NASA由来の気候モデルによる将来の気温予測、そして人口の予測データを組み合わせ、2050年に「暑さに起因する心血管疾患(心臓・血管の病気)」の負担がどのくらいになるかをシミュレーションしました。

わかったこと

この研究では、次のような予測が示されています。

  • 温室効果ガスの排出が多い(気温が大きく上がる)シナリオでは、「暑さに起因する心臓病」の負担が2050年までに約3倍に増える可能性がある。
  • 社会全体の 高齢化 も考え合わせると、暑さに関連する心臓病の負担はさらに大きくなると見込まれる。
  • 暑さの影響は地域によって差があり、もともと暑く、心臓病をかかえる人が多い地域などで、より大きな影響が出る可能性がある。

これは米国を対象にした将来予測であり、そのまま日本に当てはまるわけではありません。ただ、「暑さは心臓にとって決して軽視できない負担になる」という大切なメッセージは、年々夏が暑くなっている日本に暮らす私たちにとっても、しっかり受け止めたいものです。

なぜ「暑さ」は心臓に負担をかけるの?

暑い環境では、体は体温を下げようとしてさまざまな働きをします。これが、心臓には思いのほか大きな仕事になります。

  • 汗をたくさんかいて水分が失われる(脱水) … 血液が濃く・少なくなり、心臓は同じ量の血液を送るためにより頑張る必要が出てきます。
  • 皮膚の血管が広がる … 体の熱を外に逃がすために皮膚へたくさん血液を送るため、心臓の拍動が増え、負担が大きくなります。
  • 血圧の変動 … 暑さや脱水で血圧が乱れやすくなります。

もともと 高血圧・心不全・狭心症・不整脈 などをお持ちの方や、ご高齢の方では、こうした負担が体調の悪化につながりやすいため、特に注意が必要です。

患者さんに知っておいてほしいポイント

  • 「暑さ=熱中症だけ」ではありません。 暑さは、心臓にも確かな負担をかけます。心臓に持病のある方ほど、夏の体調管理を意識していただきたいところです。
  • ご高齢の方は特に注意を。 年齢を重ねると、暑さやのどの渇きを感じにくくなることがあります。「のどが渇いていないから大丈夫」ではなく、時間を決めてこまめに水分をとることが大切です。
  • お薬を飲んでいる方は自己判断で中断しないこと。 「夏は血圧が下がりやすいから」と、ご自身の判断で降圧薬などを止めたり減らしたりするのは危険です。気になることがあれば、必ず主治医にご相談ください。
  • いつもと違うサインに早めに気づく。 強い疲れ、めまい・ふらつき、動悸、息切れ、足のむくみ、いつもより尿が少ないなどがあるときは、無理をせず休み、必要なら受診をご検討ください。

まとめ・当院からのメッセージ

今回ご紹介した研究は、「これからの暑さは、心臓にとっても見過ごせない負担になりうる」ことを、将来予測という形で示したものでした。気候の話は壮大に聞こえますが、私たち一人ひとりにとっては、「この夏をどう健やかに過ごすか」という、とても身近なテーマにつながっています。

暑い季節を元気に乗り切るために、こまめな水分補給、暑い時間帯の無理を避ける、室内では適切に冷房を使う、そして血圧・体調の変化に気を配ること──こうした基本の積み重ねが、心臓を守る確かな一歩になります。

「心臓に持病があるけれど、夏の過ごし方が心配」「暑い日に動悸や息切れが気になる」──そんなときは、ぜひ当院にお声がけください。お一人おひとりの持病や体調に合わせて、夏の過ごし方やお薬の調整を一緒に考えていきます。 自己判断でのお薬の中断はせず、まずはお気軽にご相談ください。

参考・引用元


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