疾患解説

インフルエンザ治療薬の最新研究を解説!

インフルエンザの流行はピークを越えましたが、今後も注意が必要です。特に、高齢者や基礎疾患を持つ方は、重症化を防ぐために適切な治療が重要です。

最近、JAMA Internal Medicineに**「非重症インフルエンザの抗ウイルス治療」に関する最新の研究が発表されました(1)。
これは
73の臨床試験(34,332人)を分析したシステマティックレビューとネットワークメタ解析**であり、抗ウイルス薬の有効性について非常に重要な知見を提供しています。

※本記事はアブストラクトのみを参考に執筆しており、詳細なデータ解析には言及していません。


研究のポイント:どの抗ウイルス薬が有効か?

この研究では、以下の主要な治療薬について評価されました。

  • バロキサビル マルボキシル(商品名:ゾフルーザ®)
  • オセルタミビル(商品名:タミフル®)
  • ザナミビル(商品名:リレンザ®)
  • ペラミビル(商品名:ラピアクタ®)
  • アマンタジン(商品名:シンメトレル®)
  • ウミフェノビル(海外で使用、日本未承認)

主要な結果

  1. バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ®)
    • 高リスク患者の入院リスクを減少させる可能性がある(低確実性)。
    • 症状の持続期間を約1日短縮する可能性が高い(中等度の確実性)。
    • 副作用は少ない(高確実性)。
    • 耐性ウイルスの出現リスクがある
  2. オセルタミビル(タミフル®)
    • 入院リスクにはほとんど影響なし(高確実性)。
    • 症状の持続期間への影響も限定的(中等度の確実性)。
    • 副作用(吐き気、嘔吐など)が増加する可能性(中等度の確実性)。
  3. その他の抗ウイルス薬
    • **ザナミビル(リレンザ®)ペラミビル(ラピアクタ®)**は、直接比較のデータが少なく、有効性の評価が不確実。
    • アマンタジン(シンメトレル®)はA型インフルエンザに対して一部効果があるが、耐性株の出現でほぼ使われていない。

当院での処方の実際

当院でも、バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ®)を処方することが多いです。特に、

  • 早期に症状を改善したい方
  • 単回投与を希望する方(服薬が1回で済むため、飲み忘れのリスクが低い)
  • 副作用をできるだけ避けたい方

には適した選択肢と考えています。

一方で、高齢者や基礎疾患を持つ方では、耐性ウイルスのリスクも考慮し、オセルタミビル(タミフル®)やザナミビル(リレンザ®)など他の選択肢を検討することもあります。


抗ウイルス薬の選び方のポイント

治療薬特徴メリットデメリット
ゾフルーザ®単回投与服薬が1回で済む / 症状を早く改善 / 副作用が少ない耐性ウイルスのリスクあり
タミフル®1日2回×5日間長年の使用実績あり / 妊婦や小児に使用可能吐き気・嘔吐などの副作用
リレンザ®吸入薬吐き気・嘔吐が少ない / 妊婦にも使用可能吸入のため使用が難しい場合あり
ラピアクタ®点滴薬経口摂取できない重症患者向け入院が必要

まとめ:適切な治療選択が重要

今回の研究では、

  • バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ®)は、特に健康な成人にとって有効な選択肢になり得る
  • オセルタミビル(タミフル®)は、高齢者や基礎疾患のある方での使用を考慮
  • インフルエンザの症状が出たら早めの受診が重要

と示唆されました。

抗ウイルス薬の選択には患者さんの年齢、健康状態、希望する治療法を考慮することが大切です。


参考文献

(1) Gao Y, Zhao Y, Liu M, et al. Antiviral Medications for Treatment of Nonsevere Influenza: A Systematic Review and Network Meta-Analysis. JAMA Intern Med. Published online January 13, 2025. doi:10.1001/jamainternmed.2024.7193

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