はじめに
映画やテレビで長年親しまれた俳優の中村玉緒さんが、2026年6月9日、肺炎のため86歳で亡くなられました(所属事務所が6月12日に発表)。多くの方に愛された方の訃報に、心よりお悔やみを申し上げます。
「肺炎」と聞くと、かぜがこじれたもの、という軽いイメージをお持ちの方もいるかもしれません。けれども実は、肺炎は日本人の死因でも長く上位に入る、決して油断できない病気です。とくにご高齢の方では、命に関わることもあります。今日はこの機会に、肺炎という病気と、その予防に役立つ「肺炎球菌ワクチン」について、わかりやすくお伝えします。
今日のニュース
なぜ高齢の方にとって肺炎が怖いのか
肺炎は、細菌やウイルスなどが肺に感染して炎症を起こす病気です。せき・たん・発熱・息切れなどが主な症状ですが、ご高齢の方では「はっきりした症状が出にくい」ことがあります。「なんとなく元気がない」「食欲がない」「ぼーっとしている」だけのこともあり、気づいたときには重くなっている、というケースも少なくありません。
年齢を重ねると、飲み込む力(嚥下機能)や、せきで異物を出す力、体を守る免疫の力が少しずつ弱くなります。そのため、食べ物や唾液が気管に入って起こる「誤嚥(ごえん)性肺炎」も増えてきます。さらに、心臓や肺、腎臓などの持病がある方では、肺炎をきっかけに全身の状態が一気に悪くなることもあります。
肺炎の代表的な原因「肺炎球菌」
高齢の方の肺炎の原因として、特に重要なのが「肺炎球菌(はいえんきゅうきん)」という細菌です。肺炎だけでなく、重い場合には血液や髄膜(脳をおおう膜)にまで広がって、命に関わる状態を引き起こすことがあります。
この肺炎球菌に対しては、あらかじめ備えておく「肺炎球菌ワクチン」があります。ワクチンは肺炎を100%防ぐものではありませんが、重症化を防いだり、かかりにくくしたりする効果が期待できる、大切な予防の手段です。
知っておきたい2つのワクチン──プレベナー20とキャップバックス
現在、成人で使える肺炎球菌ワクチンとして、注目されているのが次の2つです。
◆ プレベナー20(PCV20/20価結合型ワクチン)
20種類の肺炎球菌のタイプ(血清型)に対応したワクチンです。2026年4月1日から、高齢者の肺炎球菌の「定期接種(公費の対象)」のワクチンが、これまでのニューモバックス(PPSV23)からこのプレベナー20に切り替わりました。「結合型」という仕組みで体に強い免疫の記憶を残すため、原則として一生に一度の接種で、長く効果が続くことが期待されます(これまでの「5年ごとに打ち直し」から大きく変わりました)。定期接種の対象は、おおむね65歳の方(および一定の基礎疾患がある60〜64歳の方)で、過去に定期接種を受けていない方です。
◆ キャップバックス(PCV21/21価結合型ワクチン)
2025年に登場した、より新しいワクチンです(任意接種=自費)。21種類の血清型に対応し、プレベナー20ではカバーされない独自のタイプも含むのが特徴で、とくに高齢者で問題になりやすい肺炎球菌のタイプに合わせて設計されています。臨床試験では、重い肺炎球菌感染症(IPD)に対する想定カバー範囲が広く、注射部位の反応もやや少なめと報告されています。
患者さん向けのポイント
- どのワクチンが、いつ、ご自身に合っているかは、年齢・持病・これまでの接種歴によって変わります。「定期接種の対象になっているか」「プレベナー20とキャップバックスのどちらがよいか」「過去にニューモバックスを打った方の扱い」など、判断に迷う点が多いので、自己判断ではなく、医師にご相談のうえで決めるのが安心です。
- ワクチンはインフルエンザや新型コロナの予防接種とあわせて考えると、冬場の重い肺炎の予防に役立ちます。
- ワクチンと同じくらい大切なのが、毎日の予防です。手洗い・口の中を清潔に保つ(口腔ケア)・禁煙・しっかり食べて体力を保つ・持病をきちんと管理することが、肺炎の予防につながります。
- 次のような時はためらわず受診を:高い熱が続く、息苦しい・呼吸が速い、ぐったりして食事や水分がとれない、いつもと様子が違う(特にご高齢の方)。早めの受診が重症化を防ぎます。
まとめ・当院からのメッセージ
肺炎は、とくにご高齢の方にとって、決して軽く見てはいけない病気です。中村玉緒さんの訃報は、私たちにあらためてそのことを思い起こさせてくれます。だからこそ、「防げる肺炎は、防いでおく」という備えが大切です。
当院(医療法人グロース 桂川さいとう内科循環器クリニック)では、肺炎球菌ワクチン(定期接種のプレベナー20、任意接種のキャップバックス)の接種を承っております。「自分は対象になるの?」「どちらのワクチンがいいの?」「持病があるけれど打って大丈夫?」といったご相談だけでも大歓迎です。心臓や血圧などの持病をお持ちの方は、肺炎が全身に及ぼす影響も大きいため、予防の意義はより大きくなります。気になる方は、どうぞお気軽に当院までお問い合わせ・ご相談ください。
参考・引用元
- 時事ドットコム「俳優の中村玉緒さんが肺炎のため死去、86歳」2026年6月12日: https://www.jiji.com/jc/article?k=2026061200638&g=flash
- 日本経済新聞「俳優 中村玉緒さんが死去、86歳」2026年6月12日: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD124F40S6A610C2000000/
- 日本感染症学会「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第8版)」: https://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=56

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