研究

「座りすぎ」でも歩けば大丈夫?──1日の歩数が心臓を守る(University of Sydney/BJSM 2026)

2026年06月07日 | 医療法人グロース 桂川さいとう内科循環器クリニック

はじめに

「一日中デスクワークで、ほとんど座りっぱなし」「家にいる時間が長く、あまり動けていない」──そんなふうに感じている方は多いのではないでしょうか。座っている時間が長いと心臓や血管によくない、という話はよく耳にしますが、「では、もう手遅れなの?」と不安になってしまうかもしれません。

今日は、そんな方に少し前向きになっていただける研究をご紹介します。「座りすぎ」の影響は、毎日の歩数を増やすことである程度カバーできる可能性がある、という内容です。むずかしい運動でなくても、まずは”歩くこと”から始められる、というのは心強いお話です。

今日のニュース

オーストラリアのシドニー大学(Charles Perkins Centre)の研究チームが、スポーツ医学の専門誌 British Journal of Sports Medicine に発表した研究です(ScienceDaily 2026年4月18日報道)。

研究では、イギリスの大規模な健康データベース「UK Biobank」に参加した約7万2千人(平均年齢61歳)を対象に、手首に装着する活動量計(加速度計)を7日間つけてもらい、実際の歩数と座っている時間を客観的に測定しました。そのうえで、平均約7年間にわたり健康状態を追跡しています。

結果として、次のような傾向が見られました。

  • 1日の歩数が増えるほど、死亡のリスク心血管疾患(心臓病・脳卒中など)のリスクが下がっていました。
  • 効果が最も大きかったのは、1日およそ9,000〜10,000歩のあたりで、死亡リスクは約39%、心血管疾患のリスクは約21%低い、という関連が見られました。
  • うれしいことに、1日4,000〜4,500歩ほどでも、得られるリスク低下の「およそ半分」に達していました。つまり、いきなり1万歩を目指さなくても、少し歩数を増やすだけで意味があるということです。
  • そして重要なのは、この歩数の効果が、座っている時間が長い人でも・短い人でも同じように見られたという点です。

患者さんに知っておいてほしいポイント

  • 「座りすぎ」は完全に帳消しにはできませんが、歩くことでかなり取り返せる可能性があります。研究者も「座りすぎの免罪符ではないが、避けられない座位時間の影響は歩数を増やして補える」と述べています。
  • 完璧な1万歩でなくてもよいことが、この研究の大きな安心材料です。今より「少し多く歩く」だけでも、心臓にとってプラスになり得ます。
  • これは観察研究のため、「歩けば必ず病気が防げる」と断言できるものではありません。それでも、大人数・長期間のデータであり、毎日の生活に取り入れやすいヒントを与えてくれます。
  • 持病のある方や運動から長く離れていた方は、運動量を増やす前に、まずは無理のない範囲から。心配なときは主治医にご相談ください。

まとめ・当院からのメッセージ

「座っている時間が長いから、もうダメだ」とあきらめる必要はありません。今日ご紹介した研究は、歩数を少し増やすだけでも心臓と血管の健康にプラスになり得ることを示しています。1万歩は一つの目安にすぎず、まずは「いつもより1,000歩多く」「一駅分歩く」「エレベーターを階段に」といった小さな一歩からで十分です。

ただし、急に激しい運動を始めたり、自己判断でお薬を調整したりするのは避けてください。高血圧や心臓の持病がある方、胸の痛みや動悸・息切れが気になる方は、運動を増やす前にぜひ一度ご相談ください。あなたの体調に合った”歩き方”を一緒に考えていきましょう。当院では、生活習慣と心臓・血管の健康について、おひとりおひとりに合わせたアドバイスを行っています。

参考・引用元

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