疾患解説

マイコプラズマ肺炎の患者数が過去最多に~予防と対応のポイント~

2024年10月8日の報道によると、マイコプラズマ肺炎の患者数が急増し、1週間当たりの人数が過去最多を記録しています。この感染症は特に子どもに多く、今年は6月頃から徐々に増え始め、9月末時点で1医療機関あたり1.64人が報告されました。この数は、2016年の大流行を上回り、統計を取り始めた1999年以来最多となっています。この記事では、マイコプラズマ肺炎の症状、診断、治療法、予防策について詳しく解説します。


マイコプラズマ肺炎とは?

マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマ・ニューモニエMycoplasma pneumoniae)という細菌が原因で発症する肺炎です。この細菌はウイルスではなく細菌の一種ですが、一般的な細菌とは異なり、細胞壁がないため、特定の抗生物質にしか反応しません。

感染経路は主に飛沫感染接触感染で、特に子どもたちが集まる保育園や学校で集団感染が発生しやすいことが知られています。例年、秋から冬にかけて流行する傾向があり、今年も今後さらに患者が増える可能性があります(1)。


2024年のマイコプラズマ肺炎感染状況(京都府のデータから)

京都府が発表しているマイコプラズマ肺炎の感染状況を示すグラフ(下記のリンク参照)によると、2024年は過去5年間で最も急激な感染増加が見られます。特に、6月から9月末にかけての急激な上昇が特徴的です。

グラフからわかるように、2024年は27週目(7月中旬)から急激に患者数が増加し、9月末には1医療機関あたり2人近くに達しています。これにより、2016年の過去最多記録(1.61人)を上回り、過去最多の感染拡大が起こっています。

特に、過去数年間(2021年~2023年)は患者数が非常に低調であったため、2024年の急激な増加は例外的な現象であると言えます。これにより、学校や家庭での感染が広がりやすくなり、特に注意が必要です。


症状:長引くせきや発熱に注意

マイコプラズマ肺炎の主な症状は以下の通りです。

  • 発熱:微熱から高熱まで幅広く見られます。
  • せき:乾いたせきが特徴で、1週間以上長引くことがよくあります。
  • 倦怠感:全身のだるさや疲労感が伴うことがあります。

症状は軽症から中等症が多いものの、重症化して肺炎を引き起こすことがあり、特に小児や免疫力の低下している人がリスクとなります。また、まれに脳炎といった重篤な合併症を引き起こすこともあります。


診断方法:抗原検査が主流

マイコプラズマ肺炎の診断には主に抗原検査が使用されます。この方法は、迅速に結果が出るため、多くの医療機関で広く採用されています。

  • 抗原検査:マイコプラズマ菌の抗原を検出する簡易検査です。精度は高くはないものの、短時間で結果が出るため診断の初期に有効です。

一方で、PCR検査血液検査は、診断精度が高いものの一般的には施行されません。特に、PCR検査は費用や時間の問題から日常的に使用されることは少なく、抗体を調べる血液検査も結果が出るまでに時間を要するため、臨床現場での使用は限定的です。

診断キットの不足

現在、マイコプラズマ肺炎の急激な流行に伴い、特に抗原検査キットの供給が追いついていない状況です。多くの医療機関で在庫が不足しており、診断の遅れが懸念されています。このような場合、医師の臨床判断に基づき、症状に応じた治療が行われることもあります。


感染経路とその対策

マイコプラズマ肺炎は主に飛沫感染と接触感染を通じて広がります。特に、せきをする際に飛散する唾液や、患者が触れたものを介して感染することが一般的です。学校や家庭内での接触が多い場所で感染拡大が見られるため、予防策を徹底することが重要です。

予防策としては、以下の対策を徹底しましょう

  • 手洗い:石けんを使った手洗いを徹底することで、接触感染を防ぐことができます。
  • マスクの着用:特にせきやくしゃみを伴う症状がある場合、マスクを着用することで飛沫の拡散を防ぎます。
  • 定期的な換気:室内の空気を入れ替えることで、感染リスクを低減します。
  • 消毒:家庭内や学校などで、頻繁に手が触れる物の消毒を行うことが有効です。

治療法:適切な抗生物質を選ぶことが重要

マイコプラズマ肺炎は細菌性の感染症ですが、細胞壁を持たないため、一般的なペニシリン系の抗生物質は効果がありません。マクロライド系(クラリスロマイシンなど)やテトラサイクリン系ニューキノロン系の抗生物質が有効です。特に小児にはマクロライド系が主に使用されますが、耐性菌の問題もあり、必要に応じて他の抗生物質を選択することが求められます。


予防策:手洗いとマスクが基本

マイコプラズマ肺炎の感染を防ぐためには、基本的な衛生対策が有効です。厚生労働省も推奨している以下の対策を日常的に実践しましょう。

  • 手洗い:せっけんを使用し、こまめに手を洗うことで接触感染を防ぎます。
  • マスクの着用:特にせきが出る場合は、飛沫感染を防ぐためにマスクを着用しましょう。
  • 家庭や学校での衛生管理:定期的に部屋を換気し、物品の消毒も重要です。特に子どもがいる家庭では、玩具やドアノブなど、頻繁に触れる場所の消毒を心がけましょう。

おわりに

今年のマイコプラズマ肺炎の流行は例年よりも早く、感染が拡大しています。特に子どもが長引くせきや発熱を訴えた場合は、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。また、検査キットの不足も影響しているため、普段からの予防策を徹底することで、感染拡大を防ぐ努力が求められます。特に、手洗いやマスクの着用、家庭や学校での衛生対策を日常的に徹底することで、感染拡大を防ぐことができます。

マイコプラズマ肺炎は今後も秋から冬にかけてさらに患者数が増加する可能性があります。せきが長引いたり、発熱が続く場合には早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けましょう。特に今年は、これまでにない規模での流行が見られているため、予防と早期発見が重要です。


参考文献

(1) NHKニュース. マイコプラズマ肺炎 1週間当たりの患者数が過去最多に. 2024年10月8日. https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241008/k10014603571000.html
(2) 京都府. 感染症発生状況: マイコプラズマ肺炎. 2024年10月8日. https://www.pref.kyoto.jp/idsc/survey/weekly

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