疾患解説

「クインケ浮腫」とは?──唇やまぶたが突然パンパンに腫れる病気を循環器内科が解説

ニュース概要

2026年7月14日、TBSの安住紳一郎アナウンサーが、総合司会を務める朝の情報番組『THE TIME,』で、前日13日に番組を休んだ理由を説明しました。報道によれば、上唇が急に腫れ上がったため医療機関を受診し、「クインケ浮腫」と診断されたと公表しています。

番組内では、まぶたや唇などの皮膚・粘膜が突然腫れる症状であること、軽いものは2〜3日程度で治まること、そして気道に腫れが出ると呼吸ができなくなることもあること、原因にはアレルギー・遺伝・薬の副作用があることが紹介されました(東スポWEB、2026年7月14日)。翌15日の放送では、同じ症状を経験した別の著名人から連絡があったことも語られています。

「クインケ浮腫」は聞き慣れない名前かもしれませんが、医学的には「血管性浮腫(けっかんせいふしゅ)」といい、決して珍しい症状ではありません。そして高血圧のお薬を飲んでいる方には、他人事ではないテーマでもあります。京都市西京区・桂川・桂・洛西口エリアで生活習慣病の治療を続けておられる方にこそ、知っておいていただきたい内容です。

※以下は、ご本人が公表された内容を出発点にした、病気そのものの一般的な解説です。特定の方の診療内容を推測するものではありません。

医学的背景

じんましんとの違いは「腫れる深さ」

皮膚の浅い層が盛り上がり、強いかゆみを伴って数時間で消えるのが「じんましん」。それに対してクインケ浮腫は、皮膚の深い層(真皮深層〜皮下)や粘膜が腫れます。

そのため、

  • かゆみは弱く、張った感じ・重い感じが主体
  • 腫れが大きく、左右非対称(片方の唇だけ、片方のまぶただけ)
  • 消えるまでに2〜3日かかることがある

という特徴が出ます。「かゆくないから虫刺されでもなさそう」と、正体がつかみにくいのはこのためです。好発部位はまぶた・唇・舌・のど(喉頭)・手足・外陰部で、腸管粘膜に出ると原因不明の強い腹痛として現れることもあります。

原因は大きく3タイプ

タイプ 主な原因 特徴 抗ヒスタミン薬
① アレルギー性(ヒスタミン型) 食物、薬剤、虫刺され など じんましんを伴いやすい。最も多い 効きやすい
② 薬剤性(ブラジキニン型) ACE阻害薬(降圧薬)など 顔・唇・舌・のどに出やすい 効きにくい
③ 遺伝性・後天性(HAE など) C1インヒビターの機能低下 繰り返す。家族歴があることも 効かない

循環器内科の視点:ACE阻害薬と血管性浮腫

ACE阻害薬は、高血圧・心不全・慢性腎臓病の治療で長く使われてきた重要なお薬です(薬剤名が「〜プリル」で終わるもの:エナラプリル、イミダプリル など)。

このお薬は、血管をひろげる作用を持つ「ブラジキニン」という物質の分解をおさえます。その結果ブラジキニンが増えると、血管の壁から水分がしみ出しやすくなり、顔面・口唇・舌・咽喉頭に浮腫が生じることがあります。厚生労働省の「重篤副作用疾患別対応マニュアル(血管性浮腫)」でも、注意すべき副作用として明記されています。

臨床上、とくに重要なのが次の2点です。

  1. 服用期間にかかわらず起こりうる。飲み始めて数日のこともあれば、何年も安定して飲んでいた方に、ある日突然現れることもあります
  2. 抗ヒスタミン薬が効きにくい。アレルギー性とは発症のしくみが異なるためです

したがって、降圧薬を服用中の方に顔・唇・舌の腫れが出た場合は、必ず主治医に報告してください。原因薬剤の可能性を評価し、必要であれば同等の降圧効果を持つ別系統のお薬への変更を検討します。

なお、ご自身の判断でお薬を中止・減量することは避けてください。血圧が急に上昇するリスクのほうが大きい場合があります。判断は主治医と一緒に行いましょう。

日常生活で気をつけたいポイント

  1. 腫れたら、まず写真を撮る。受診時には引いていることがほとんどです。スマホの写真は診断の最大の手がかりになります。
  2. お薬手帳を常に携帯する。とくに降圧薬・痛み止め(NSAIDs)は、血管性浮腫の原因として重要です。
  3. 腫れの「日記」をつける。日時・部位・きっかけ(食べたもの、新しく始めた薬、体調)・持続時間をメモしておくと、原因の絞り込みが一気に進みます。
  4. 繰り返す場合は「たまたま」で片づけない。2回、3回と起きているなら、必ず原因の評価を受けてください。
  5. のど・舌の腫れは別格と心得る。「顔の腫れは待てても、のどの腫れは待てない」──この一線だけは覚えておいてください。
  6. 家族歴を確認しておく。ご両親・ごきょうだいに同じ症状の方がいれば、遺伝性血管性浮腫(HAE)の可能性を考える手がかりになります。

受診の目安

ただちに救急要請(119番)を

  • 息がしづらい、ゼーゼーする
  • 声がかすれる、声が出しにくい
  • のどが詰まる感じ、飲み込みにくい
  • 舌が腫れて口の中がいっぱいになる
  • 唇の腫れが舌・のどへ広がってきている

上気道の浮腫は、短時間で気道閉塞に進行することがあります。様子を見てはいけない症状です。

早めに外来受診を

  • 顔・唇・まぶたの腫れを繰り返している
  • 降圧薬(とくに「〜プリル」)を飲んでいて、顔や口まわりが腫れた
  • 抗ヒスタミン薬を飲んでも腫れが引かない
  • 原因の見当がまったくつかない
  • ご家族に同じ症状の方がいる

まとめ

  • クインケ浮腫(血管性浮腫)は、まぶた・唇・舌などが突然、左右非対称に腫れる症状。かゆみは弱く、引くまで2〜3日かかることがあります
  • 原因はアレルギー性・薬剤性・遺伝性の3タイプ。見た目は似ていても、効く治療が異なります
  • 降圧薬(ACE阻害薬)による薬剤性は、循環器内科として見逃せません。何年も飲んでいた方に突然起こることがあります
  • 息苦しさ・声のかすれ・のどの詰まり・舌の腫れは、ためらわず119番を
  • 腫れたときの写真お薬手帳が、原因究明の最短ルートです

顔が突然腫れるのは、驚きも不安も大きい経験です。けれど、原因のタイプさえ分かれば、次の一手ははっきりします。避けるべきもの、備えるべきもの、変えるべきお薬が見えてくるからです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療に代わるものではありません。服薬の変更・中止は、必ず主治医にご相談ください。

当院で相談できること

医療法人グロース 桂川さいとう内科循環器クリニックは、京都府京都市西京区下津林南大般若町37番地 リペアス下津林2Fにあり、阪急桂駅・JR桂川駅・洛西口駅からお越しいただけるエリアで、一般内科・循環器内科・生活習慣病の診療を行っています。

クインケ浮腫に関しては、次のようなご相談に対応しています。

  • 内服薬の見直し:降圧薬(ACE阻害薬)をはじめとする、原因となりうるお薬の評価と、必要に応じた変更のご提案
  • 高血圧の総合的な管理:お薬を変更する場合も、血圧コントロールを崩さないよう調整します
  • 原因の絞り込み:問診・経過の整理・アレルギー評価
  • 専門医療機関へのご紹介:遺伝性血管性浮腫(HAE)が疑われる場合など、専門的な検査・治療が必要なケース

「血圧の薬を飲んでいて顔が腫れた」「腫れを繰り返している」という方は、どうぞお気軽にご相談ください。受診の際は、腫れているときの写真お薬手帳をお持ちいただけると、より的確なお話ができます。

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引用文献・参考サイト


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