ニュース概要
2026年、循環器の専門誌 CJC Open(カナダ心臓血管学会)に、動悸(どうき)を訴えて救急外来を受診した患者さんを分析した研究が掲載されました。
対象となったのは、動悸で救急外来を受診した215人。詳しく調べたところ、80人(37%)に重症の基礎疾患(見逃してはいけない不整脈など)が見つかりました。動悸で救急を受診した人の、およそ3人に1人にあたります。
研究チームは、救急の受付段階(トリアージ)で分かる情報だけで危険度を見分けられるかに注目し、危ない原因と強く関連する4つの独立した目印を突き止めました。
- ① 年齢50歳以上(オッズ比 約7.6倍)
- ② 心臓病の既往(狭心症・心筋梗塞・心不全・不整脈など/約4.7倍)
- ③ 随伴する失神(動悸に加えて気が遠くなる・意識が飛ぶ/約11倍)
- ④ 頻脈(1分間に100拍以上)(約3.8倍)
さらに、この4つが1つもない人は、心臓が原因の危険な動悸である可能性が低い(除外の感度96%)ことも示されました。
京都市西京区・桂川・桂・洛西口エリアでも、「ドキドキするけれど、受診するほどでもないかな」と迷っている方は多いはず。この記事が、「様子を見る」か「早めに調べる」かの判断の助けになれば幸いです。
医学的背景
◆ 動悸とは
動悸とは、心臓の拍動をふだんより強く・速く・不規則に感じる状態の総称です。「ドキドキする」「脈が飛ぶ」「胸がバクバクする」などの表現をされます。原因は、緊張・カフェイン・運動・発熱・貧血・甲状腺の異常・そして不整脈までさまざまです。
多くは良性(心配のいらないもの)ですが、なかに心房細動・発作性上室頻拍・心室頻拍といった、治療が必要な不整脈が隠れていることがあります。
◆ なぜ“見分け”が難しいのか
動悸はその場では治まってしまうことが多く、診察のときには脈が正常に戻っていることがほとんどです。だからこそ、「どんな人の・どんな動悸が危ないのか」という手がかりが大切になります。今回の研究は、その手がかりを年齢・持病・失神・頻脈という具体的な形で示した点に価値があります。
◆ 特に注意したい「失神を伴う動悸」
4つのうち、失神(動悸とともに気が遠くなる・意識が飛ぶ)は、危険な原因が隠れている可能性を大きく高めます。命に関わる不整脈のサインのことがあり、すぐに受診すべき症状です。
なお、これは救急外来の患者さんを対象にした研究であり、この結果をそのまま自宅での自己判断ツールとして用いることはできません。この記事を読んで受診を遅らせたり、服薬を自己判断で変更・中止したりすることはお控えください。
日常生活で気をつけたいポイント
- 動悸が出たら、脈を測る:手首や首の脈に指を当て、「速いか・遅いか」「規則正しいか・バラバラか」「何分続いたか」を確認しておくと、診察で役立ちます。
- スマートウォッチの記録を活用:Apple Watchなどの心電図・脈拍記録は、受診時の貴重な手がかりになります。
- 引き金を減らす:カフェイン・アルコール・寝不足・強いストレスは動悸のありふれた引き金。思い当たる方は生活を整えることから。
- 持病を“言葉にできる”ように:高血圧・糖尿病・狭心症・心不全などがある方は、お薬手帳を携帯し、家族にも共有を。
- 「速い動悸が続く」「脈がバラバラ」を軽視しない:数分以上続く頻脈や不規則な脈は、心房細動などのサインのことがあります。
受診の目安
次に当てはまる方は、早めに循環器内科にご相談ください。
- 動悸を繰り返す、または速い動悸が数分以上続く
- 脈がバラバラ・不規則に感じる
- 50歳以上、または高血圧・糖尿病・狭心症・心不全・不整脈などの持病がある
- 健診で心電図異常を指摘された
ためらわず119番を(緊急)
- 動悸に加えて、気が遠くなった・意識が飛んだ(失神)
- 強い胸の痛みや、冷や汗を伴う激しい息苦しさを伴う動悸
- 動悸のあと意識がはっきりしない、呼びかけへの反応が悪い
まとめ
- 動悸の多くは良性ですが、救急外来のデータでは約3人に1人に危険な原因が隠れていました
- 危ない動悸の目印は、①50歳以上 ②心臓病の既往 ③失神を伴う ④頻脈(100拍/分以上)の4つ
- なかでも「失神を伴う動悸」はすぐ受診を。逆に4つが1つもなければ危険な可能性は低いとされます
- 動悸は原因を調べれば安心できることも多い症状。迷ったら一度きちんと調べておきましょう
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。服薬の開始・変更・中止は必ず主治医にご相談ください。
当院で相談できること
医療法人グロース 桂川さいとう内科循環器クリニック(京都府京都市西京区下津林南大般若町37番地 リペアス下津林2F/阪急桂駅・JR桂川駅・洛西口・桂川エリア)では、循環器内科として、動悸・脈の乱れの精査を行っています。
- 心電図(安静時・負荷)
- ホルター心電図(24時間記録。その場で治まる動悸・不整脈の拾い上げに有用)
- 心エコー(心臓の構造・ポンプ機能の評価)
- 血液検査(貧血・甲状腺機能など、動悸の背景にある要因のチェック)
- 健診で「心電図異常」「要精査」と言われた方の二次検査・フォロー
- 高血圧・脂質異常症・糖尿病など、不整脈の背景となる生活習慣病の管理
「これくらいで受診してもいいのだろうか」と迷う動悸こそ、ご相談ください。早めに調べておくことが、いちばんの安心につながります。
当院の関連記事もあわせてどうぞ
引用文献・参考サイト
- Risk Factors of a Serious Underlying Cause of Palpitations Among Patients Attending an Emergency Department(CJC Open, 2026)
- 同論文 全文PDF(CJC Open)
- Management of patients with palpitations: EHRA position paper(Europace. 2011;13:920-934)
- Palpitations: Evaluation in the Primary Care Setting(American Family Physician, 2017)
- 日本循環器学会

コメント