つば九郎の担当者の訃報に寄せて
プロ野球ヤクルトスワローズの公式マスコット「つば九郎」として球団スタッフが、肺高血圧症のために逝去されました。球団は「これまでつば九郎を支えてきた社員スタッフが永眠いたしました。球団マスコットとして、ここまで育ててくれた功績に感謝と敬意を表します」と発表し、多くのファンがその訃報に心を痛めています。
つば九郎は1994年のデビュー以来、球界屈指の人気マスコットとして活躍し、「フリップ芸」や「空中くるりんぱ」などでファンに笑いと元気を届けてきました。その舞台裏では、担当者が常に寄り添い、陰で支えていました。球団関係者によると、担当者は沖縄キャンプ後に体調を崩し、2月4日に空港で倒れ、病院に入院。回復の兆しを見せたものの、16日に亡くなられたとのことです。
つば九郎の活動はしばらく休止されることとなりました。彼を支え続けた担当者のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
今回は、その担当者の死因ともなった「肺高血圧症」について、病気の原因や症状、治療法を詳しく解説していきます。
肺高血圧症とは?
肺高血圧症とは、心臓から肺へ血液を送る「肺動脈」の血圧が異常に高くなる病気です(1)。通常、肺の血管は全身の血管に比べて圧力が低いのですが、何らかの異常によって肺動脈が狭くなる・硬くなる・血栓ができると、血液の流れが悪くなり、肺動脈圧が上昇します(2)。
この状態が続くと、心臓の右側(右心室)に大きな負担がかかり、次第に右心不全へと進行し、命に関わることもあります。
肺高血圧症は、厚生労働省が指定する指定難病の一つでもあり、適切な診断と治療が必要です(3)。
肺高血圧症の原因と分類
肺高血圧症は、原因により以下の5つのグループに分類されます(4)。
タイプ | 原因 |
---|---|
① 肺動脈性肺高血圧症 | 遺伝的要因、膠原病、HIV感染、特発性(原因不明)など |
② 左心疾患に伴う肺高血圧症 | 心不全、心筋梗塞、心臓弁膜症 |
③ 肺疾患や低酸素血症に伴う肺高血圧症 | 慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺疾患、高地生活 |
④ 慢性血栓塞栓性肺高血圧症 | 血栓が肺動脈に詰まり、血流が悪化 |
⑤ その他の要因による肺高血圧症 | 血液疾患、代謝性疾患、腫瘍など |
特に慢性血栓塞栓性肺高血圧症は、深部静脈血栓症(DVT)などが原因で発症するため、**長時間の飛行機移動(エコノミークラス症候群)**にも注意が必要です(5)。
肺高血圧症の症状
肺高血圧症は初期の症状が目立ちにくいため、発見が遅れがちです。しかし、進行すると次のような症状が現れます(6)。
主な症状
✅ 息切れ(労作時) – 軽い運動でも息苦しさを感じる
✅ 疲れやすい – 全身の酸素供給が低下
✅ むくみ(浮腫) – 静脈の血流が悪くなり、特に足にむくみが出る
✅ 失神 – 酸素不足により意識を失うことも
✅ チアノーゼ(皮膚や唇が青紫色になる) – 血中の酸素濃度が低下
進行すると…
肺動脈圧が上がることで、右心室に負担がかかり、右心不全を引き起こします。さらに、血流が滞ることで**血痰(けったん)や喀血(咳とともに血を吐く)**などが起こることもあります(7)。
肺高血圧症の治療法
肺高血圧症の治療は、原因や重症度に応じて以下の方法が用いられます(8)。
(1) 薬物療法
- プロスタサイクリン(PGI₂)製剤 – 血管を広げ、血栓を防ぐ
- エンドセリン受容体拮抗薬 – 血管を収縮させる物質の働きを抑える
- ホスホジエステラーゼ-5型阻害薬 – 血管を拡張するサイクリックGMPの増加を促す
(2) 非薬物療法
✔ 酸素療法 – 血液中の酸素を補う
✔ 塩分制限 – むくみを抑える
✔ 適度な運動 – 血流を改善(ただし医師の指導が必要)
✔ 手術(血栓除去術) – 慢性血栓塞栓性肺高血圧症の場合
肺高血圧症は完治が難しい病気ですが、治療を続けることで生活の質を向上させることが可能です(9)。
まとめ
✅ 肺高血圧症は、肺動脈の血圧が異常に高くなる病気
✅ 初期症状が少なく、発見が遅れることが多い
✅ 薬物療法や生活習慣の改善で管理が可能
✅ 進行すると右心不全へと進み、命に関わることも
つば九郎を支えてきた担当者の訃報を受け、改めて肺高血圧症という病気の恐ろしさと、早期発見・早期治療の重要性を痛感します。
📌 桂川さいとう内科循環器内科クリニックでは、肺高血圧症の診断、また専門病院への紹介や治療も行っています。気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください!
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