昼休みの時間を利用してWeb講演会に参加しました。鹿児島大学大学院の大石充教授による「超高齢社会における帯状疱疹予防の重要性」というテーマで、高齢者の健康維持と帯状疱疹予防について多くの学びがありましたので、ポイントをまとめてご紹介します。
高齢化の現実と新たな視点
日本の65歳以上人口は全体の29%を超え、世界でも類を見ない「超高齢社会」となっています。興味深いことに、最近の研究では1992年と2002年を比較すると、同じ年齢でも歩行速度や握力、知力などが約10歳若返っているというデータがあります。このため、「高齢者」の定義も見直されつつあり、75歳以上を高齢者とする新しい考え方も提案されています。
健康寿命を延ばすための鍵
多くの高齢者の方が望んでいるのは、単に長生きすることではなく、「健康で自立した生活」を送ることです。アンケート結果からも、健康寿命の延伸や充実した生活、自立性の維持が重視されていることがわかります。
健康寿命を脅かす要因の一つに「フレイル」があります。フレイルとは、健康な状態と要介護状態の中間にある状態で、適切な介入により改善が可能です。歩行速度が1m/秒未満の場合は、フレイルの可能性を疑った方が良いでしょう。
帯状疱疹の恐ろしさ
帯状疱疹は、かつて水ぼうそう(水痘)を引き起こしたウイルスが体内に潜伏し、免疫力の低下などをきっかけに再活性化することで発症します。50歳以上の方の約65.7%、60歳以上では約45~46%の方が発症リスクを持っています。
特に注意すべきは、帯状疱疹の合併症です:
- 帯状疱疹後神経痛(PHN): 痛みが長期間続き、生活の質を著しく低下させます
- 脳卒中リスクの上昇: 帯状疱疹発症後は脳卒中リスクが約2倍に
- 心筋梗塞リスクの増加: 循環器系疾患のリスクも高まります
- 再発の可能性: 一度かかると再発することも少なくありません
帯状疱疹をしっかりと予防することは高齢者の健康寿命を延伸しフレイルを予防する効果があることが期待されます。
シングリックスワクチンによる予防
帯状疱疹は予防が重要です。シングリックスワクチンは、2回の筋肉注射(通常2か月間隔)で接種します。その効果は非常に高く:
- 予防効果: 90%以上と極めて高い効果
- 長期効果: 10年以上の長期にわたる保護効果
- 神経痛予防: 帯状疱疹後神経痛(PHN)の発生率をほぼゼロに低減
副反応としては筋肉痛や発赤、疲労感などがありますが、重篤な副作用は稀で、基本的に安全性が確認されています。
こんな方は特に接種を検討しましょう
- 65歳以上の方: 定期接種の対象となる年齢です
- 免疫力が低下している方: ストレスや疲労が続いている場合
- 生活習慣病をお持ちの方: 糖尿病、高血圧、動脈硬化性疾患など
- 50歳以上で心血管リスクがある方: 早期予防が望ましいとされています
健康寿命を延ばすために
帯状疱疹予防は、健康寿命を延ばすための重要な取り組みの一つです。ワクチン接種と合わせて、バランスの良い食事、適度な運動、口腔機能の維持も大切です。特にタンパク質の摂取と口腔機能の維持は、フレイル予防の観点からも重要です。
当院でも帯状疱疹ワクチン接種しております
お知らせでも案内しておりますが帯状疱疹の公費補助が2025年4月から始まりました。当院でもシングリックスワクチンの接種を行っております。シングリックスは当日の申し込みでも大丈夫です。希望される方はお電話で予約をお願いいたします。
いろいろな機会を利用して日々勉強していきます。このような講演会で得た知識を、患者さんの健康維持や疾病予防に役立てていきたいと思います。
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