研究

コーヒーと血圧の『本当のところ』─ 2026年5月 最新レビューを循環器内科の視点で読み解く

はじめに

「健康診断で血圧が高めって言われたんですが、毎朝のコーヒーはやめたほうがいいですか?」
「コーヒー2杯飲んだあと家で血圧を測ったら、めちゃくちゃ高かったんです…」
「降圧薬を飲んでいるんですけど、カフェインって薬の効きに影響しますか?」

外来でも、こうしたご相談を本当によくいただきます。日本でもコーヒーは毎日の楽しみのひとつで、香りやひと息つく時間そのものがリフレッシュになっている方も多いですよね。

2026年5月17日、ScienceDaily(原典:The Conversation)に、「Scientists reveal the surprising truth about coffee and blood pressure(コーヒーと血圧の意外な真実)」 という解説記事が掲載されました。執筆は、栄養学・食事療法の専門家であるオーストラリア・ニューカッスル大学のClare Collins教授です。

今日はこのニュースを、「コーヒーを楽しみつつ、心臓と血管を守るには?」 という視点から、循環器内科の立場でやさしくご紹介します。

今日のニュース

どんな記事?

  • 発信元:ScienceDaily(2026年5月17日掲載、原典:The Conversation)
  • 執筆:Clare Collins 教授(オーストラリア・ニューカッスル大学、栄養学・食事療法のLaureate Professor)
  • テーマ:コーヒー・カフェインが血圧にどう影響するのか、長期的な高血圧リスクとの関係はどうなのか
  • 背景:コーヒーは世界で600年以上飲み継がれており、現在では一人あたり年間およそ2kgのコーヒー豆が消費されている

コーヒー(カフェイン)はどうやって血圧を上げる?

カフェインには、

  • 心拍数を増やす作用
  • 副腎を刺激してアドレナリンを出させる作用
  • 血管を一時的に縮めて血圧を上げる作用

があり、これらが重なってコーヒーを飲んだあとの血圧が一時的に上がります。

記事によると、

  • カフェインの血中濃度のピークは飲んでから30分〜2時間後
  • 半減期は3〜6時間(飲んでから3〜6時間で血中の量がおよそ半分に)
  • コーヒーやコーラ、エナジードリンク、チョコレートに含まれるカフェインで、収縮期血圧(上の血圧)が3〜15、拡張期血圧(下の血圧)が4〜13上昇するとの総説あり

特に、ふだんコーヒーを飲まない方や、すでに高血圧の方、心臓病・肝臓病をお持ちの方では、この影響が強く出やすいと指摘されています。

でも、コーヒー=高血圧の原因とは限らない?

ここがこの記事の重要ポイントです。

  • 31万5千人を対象に13件の研究をまとめたレビューでは、コーヒーを飲むことと、長期的な高血圧の発症リスクとの間に明確な関連は見つかりませんでした
  • この結論は、男女・コーヒーの量・カフェイン入りかデカフェか・喫煙の有無・追跡期間にかかわらず一貫していたとのことです
  • コーヒーには メラノイジン(体液バランスや血圧に関わる酵素を整える可能性)や、キナ酸(血圧を下げる方向にはたらく可能性)など、血管にプラスにはたらきうる成分が含まれていることもわかってきています

つまり、「適度なコーヒーが、ふつうの方の血圧をじわじわ悪化させる」という説には、現時点で強い裏付けはない、というのが今回のメッセージです。

ただし、重症の高血圧の方は要注意

一方で、見過ごせない研究も紹介されています。

  • 日本で行われた18,000人超の40〜79歳を約19年間追跡した研究では、
  • 収縮期160以上 または 拡張期100以上 の重症(グレード2〜3)高血圧の方で、
  • 1日2杯以上のコーヒーを飲んでいる人は、心血管死(心筋梗塞・脳卒中など)のリスクが約2倍になることが示されました
  • 一方で、正常血圧の方や軽症(グレード1)高血圧の方では、同じような上昇は確認されませんでした

ここからわかるのは、血圧が今どのくらいコントロールできているかで、コーヒーとの付き合い方を変える必要がある、ということです。

記事がすすめる「コーヒーとの付き合い方」

Collins教授は、患者さんへのアドバイスとして次のような点を挙げています(要約)。

  1. 自分の血圧の数値・家族歴・カフェインを含む飲食物を把握する
  2. 家族歴・食事・塩分・運動など、血圧に影響するほかの要因もあわせて見直す
  3. 血圧測定の前にはカフェインを控える(一時的に数値を押し上げてしまうため)
  4. 夜のカフェインは睡眠を妨げることがあるので、午後遅くからは控える
  5. コーヒーは1日4杯程度までを目安に、または デカフェに切り替える ことも検討
  6. 収縮期160以上、または拡張期100以上の方は、1日1杯までに減らし、主治医に相談する

患者さん・ご家族に知っておいてほしいポイント

「健康診断で血圧が高め」と言われた方へ

  1. コーヒーをやめれば血圧が一気に下がる、というほど単純ではありません。食塩・体重・運動・睡眠・お酒など、他の要因の影響のほうが大きいことも多いです。
  2. ただし、測定直前のコーヒーは数値を一時的に押し上げます。血圧測定の30分前からはコーヒー・お茶・エナジードリンクを控えるように心がけてください。
  3. 「ふだん何杯飲んでいるか」を、ぜひ受診のときに教えてください。生活全体を見て、減らしたほうがよい場面なのかどうかを一緒に考えます。

すでに降圧薬を飲んでいる方へ

  1. コーヒーをやめるかどうかを自己判断で決めず、現在の血圧の経過とあわせて主治医にご相談ください。
  2. 動悸・胸の違和感・寝つきの悪さを感じる方は、カフェイン量の見直しが役立つことがあります。コーヒー・玉露・濃いめのお茶・エナジードリンク・チョコレートはカフェイン源になります。
  3. 降圧薬は自己判断で止めないでください。コーヒーを減らしたから薬も減らせる、と早とちりすると、思わぬ血圧上昇につながることがあります。

不整脈(心房細動・期外収縮)をお持ちの方へ

  1. カフェインは人によっては動悸や不整脈を起こしやすくします。自分の場合にどうかを、しばらく記録してみるのが一番役に立ちます。
  2. 一方で、近年は適度なコーヒー摂取と、いくつかの不整脈(特に心房細動)リスクの関係について、必ずしも一方向ではない(むしろ中立〜やや有利との報告もある)ことが知られています。
  3. 「コーヒーを飲むと必ず動悸が出る」「翌日まで脈が乱れる」と感じる方は、種類・量・時間帯を調整してみる価値があります。気になる症状がある場合はご相談ください。

睡眠が浅い・寝つきが悪い方へ

  1. カフェインの半減期は3〜6時間。午後遅くや夕方のコーヒーは、夜の睡眠の質を下げることがあります。
  2. 睡眠不足は、それ自体が血圧と心血管リスクを押し上げる要因です。睡眠と血圧の両面から、午後のコーヒー量を見直すのは合理的な選択肢です。

今日からできること(クリニック編)

当院(桂川さいとう内科循環器クリニック)では、こうした「コーヒーと血圧の付き合い方」のご相談にも、循環器内科の立場でお手伝いができます。

  1. 家庭血圧の測定指導:朝・晩の血圧、コーヒーを飲んだ後の血圧など、ご自身のパターンを一緒に確認します
  2. 24時間血圧測定(ABPM):一日を通した血圧変動の中で、カフェインや日常の活動の影響を客観的に評価できます
  3. 降圧薬の調整:コーヒー量を含めた生活全体のなかで、いまの薬剤・用量が適切かを見直します
  4. 動悸・不整脈の評価:心電図・ホルター心電図で、カフェインと症状の関係を客観的に確認します
  5. 生活習慣全体のすり合わせ:塩分・体重・運動・睡眠・お酒など、血圧に影響する他の要因とあわせてご提案します

まとめ・当院からのメッセージ

  • 2026年5月17日、ScienceDailyに 「コーヒーと血圧の意外な真実」 をテーマにした最新解説が掲載されました。
  • カフェインは一時的に血圧を上げることが知られていますが、約31万5千人を対象としたレビューでは、適度なコーヒー摂取と長期的な高血圧発症との明確な関連は確認されませんでした
  • 一方で、収縮期160以上 / 拡張期100以上の重症高血圧の方では、1日2杯以上のコーヒーで心血管死亡リスクが上がる可能性が報告されています。
  • ポイントは「飲んでよいか / ダメか」ではなく、「自分の血圧の状態に合った量・タイミングか」です。
  • 血圧測定の前のコーヒー夕方以降のカフェイン動悸が出やすい方の濃いコーヒー は、見直す価値があります。
  • コーヒーを楽しみながら、心臓と血管を守る方法を、ぜひ当院で一緒に考えていきましょう。

参考・引用元


本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、特定の患者さんへの治療指示ではありません。降圧薬・抗不整脈薬などのお薬は、自己判断で中止・増減しないでください。コーヒーの量を見直したい方、家庭血圧の値が気になる方、動悸・胸の違和感がある方は、ご自身のかかりつけ医にご相談ください。

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