研究

CD73欠損症による動脈硬化

近隣の先生方と抄読会をしています。抄読会とは論文を分担して読むことにより病気の診断、治療に対する理解を深めることです。今回で4回目の抄読会でした。今回もNEJMという雑誌のClinical Problem-Solvingの論文で”An Alternate Explanation“というタイトルです。

論文名は”An Alternate Explanation”、日本語で言うと”もう1つの説明”と言った意味になります。Clinical Problem-Solvingは通常の症例報告や学術論文と異なり、症例の提示に加えて、途中で解説や思考プロセスが織り込まれています。

提示された症例の概要ですが糖尿病と慢性腎臓病をもつ男性が下肢の虚血症状で来院、四肢の壊死や急性腎障害も出現し下肢切断に至った症例でした、切断された下肢の病理組織標本の所見で通常の動脈硬化病変は乏しく、動脈中膜の石灰化像を認め、全ゲノム解析の結果からCD73欠損症という診断になっており、診断後はチオ硫酸ナトリウムの投与により病状の進行が抑えられています。

CD73欠損症による動脈硬化(Arterial Calcification Due to Deficiency of CD73, 文献中ではACDCと略されています)にはいくつかの特徴があるようです。

  • 発症年齢: CD73欠損症による動脈硬化は、通常の動脈硬化よりも早く発症する傾向があります。CD73欠損症の患者は、10代や20代で症状を発症する場合があります。一方、通常の動脈硬化の患者は、通常、50代や60代で症状を発症します。
  • 影響を受ける動脈: CD73欠損症による動脈硬化は、通常の動脈硬化よりも多くの動脈に影響を及ぼす傾向があります。CD73欠損症の患者は、下肢の動脈だけでなく、心臓や脳の動脈にも影響を及ぼす可能性があります。一方、通常の動脈硬化は、通常、下肢の動脈に影響を及ぼします。また血管の内膜ではなく中膜に強い石灰化を来すという特徴があります。
  • 進行速度: CD73欠損症による動脈硬化は、通常の動脈硬化よりも進行が速い傾向があります。CD73欠損症の患者は、数年のうちに心筋梗塞や脳卒中を発症する可能性があります。一方、通常の動脈硬化の患者は、発症後数十年かけて心筋梗塞や脳卒中を発症する可能性があります。
  • 治療法: CD73欠損症による動脈硬化の治療法はありません。しかし、症状を管理するのに役立つ治療法があります。治療法には、抗炎症薬、抗凝固薬、コレステロール低下薬の使用が含まれます。重症の場合は、手術が必要になる場合があります。

調べたところ国内ではまだ報告が少ないようですが診断に至っていないだけの可能性もあるように思います。クリニック勤務ですと学会や研究会に参加する頻度も少なくなりますが遅れずにキャッチアップしていこうと思います。

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