研究

INOCA、冠動脈に狭窄がないのに狭心症?

開院して9ヶ月が過ぎてコロナ患者さんも減ってきてクリニックも落ち着きを取り戻しています。様々な症状の患者さんが来院されますが、その中で比較的多いのが更年期にあたる40~50代の女性患者さんで胸部の圧迫感を主訴として来院される患者さんです。

小倉記念病院や京都大学医学部附属病院に勤務しているころにももちろん同じような症状の患者さんはいらっしゃっったのですが全体にしめる割合はクリニックを開院してからのほうが多いです。特徴としては心電図や心エコーでははっきりした異常所見がなく、狭心症を疑って冠動脈CTや運動負荷検査を行っても異常がないことが多いということです。

最近ではそのような患者さんにはINOCAという病名がつけられることがあります。INOCAとはIschemia and No Obstrructive Coronary Artery の略語です。冠動脈の痙攣(スパスムと呼ばれます)が原因の場合もあり、この場合は冠攣縮性狭心症と呼ばれます。これは入院して頂いて冠動脈造影を行い、アセチルコリン、エルゴタミンなどで負荷試験を行い冠動脈の痙攣が誘発された場合に診断がされます。しかし明らかな痙攣が誘発されない場合のほうが多くこの場合は微小血管障害が関与しているのではないかと言われていました。

現在の医学では微小血管を画像として描出する方法はないので、血管内圧や血流を測定して微小血管抵抗を計算して診断がなされることもあります。

最近の研究ではINOCA患者さんの原因としては半数以上が微小血管障害ではないかと報告されています。

Ford TJ., Yii E., Sidik N., et al. Ischemia and No Obstructive Coronary Artery Disease: Prevalence and Correlates of Coronary Vasomotion Disorders. Circ Cardiovasc Interv 2019;12(12). Doi: 10.1161/CIRCINTERVENTIONS.119.008126.

INOCAと更年期障害の関連も指摘されており東北大学を中心とした研究も進められているようです。当院では桂枝茯苓丸、加味逍遙散、半夏厚朴湯などの漢方薬も使用して治療をしています。桂枝茯苓丸、桂枝加竜骨牡蛎湯などがよく効く場合もあり漢方薬の有用性を実感します。

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