風邪をひいた、お腹を壊した、熱がある……。
糖尿病の治療中にこのような「体調が悪い日」のことをシックデイ(Sick Day)と呼びます。
体調が悪い時は、たとえ食事ができていなくても、体の中ではストレスホルモンの影響で血糖値が上がりやすくなったり、逆に急降下したりと不安定になりがちです。いざという時に慌てないための「薬剤調整のルール」を確認しておきましょう。
1. シックデイの「4つの鉄則」
- 安静と水分補給:脱水を防ぐため、水やお茶、経口補水液をこまめに飲みましょう。
- 栄養摂取:おかゆ、うどん、ゼリー飲料など、食べやすいものを摂りましょう。
- 自己判断で薬を止めない:特にインスリンの中断は非常に危険です。
- 早めに受診・相談:迷ったらすぐにクリニックへ連絡しましょう。
2. お薬の調整
食事が摂れない時の薬剤調整は、「低血糖」と「深刻な副作用」を防ぐことが目的です。一般的にガイドラインで示されている目安は以下の通りです。
🚫 原則として「中止(休薬)」するお薬
脱水状態や食欲不振の時に服用を続けると、重篤な副作用を招く恐れがあるお薬です。
- ビグアナイド薬(メトグルコ、メトホルミンなど)
- 脱水時に服用すると、血液が酸性に傾く「乳酸アシドーシス」という危険な状態になる恐れがあります。
- SGLT2阻害薬(ジャディアンス、フォシーガ、カナグル、カナリアなど)
- 尿から水分を出すため脱水を助長しやすく、また「正常血糖ケトアシドーシス」という特殊な合併症のリスクがあるため、すぐに中止します。
- SU薬(アマリールなど)やグリニド薬
- インスリン分泌を促すため、食事が摂れないと深刻な低血糖を起こす危険があります。
⚠️ 「減量」または「継続」を検討するお薬
血糖値を直接下げる力が比較的緩やかなものは、状況に応じて継続することがあります。
- DPP-4阻害薬(ジャヌビア、トラゼンタ、エクアなど)
- 単独では低血糖が起こりにくいですが、全く食べられない場合は中止を検討します。
- インスリン注射
- 「食べていないから打たない」という自己判断が最も危険です。 全く打たないと「糖尿病ケトアシドーシス」という命に関わる状態になることがあります。基礎インスリン(持効型)は継続し、追加インスリン(食前)を減量するのが一般的ですが、必ず事前に指示された量に調整してください。
3. 薬剤調整の目安一覧表
| 薬剤の種類 | 食事が摂れない時 | 理由・注意点 |
| ビグアナイド薬 | 中止 | 脱水時の重症副作用(乳酸アシドーシス)予防 |
| SGLT2阻害薬 | 中止 | 脱水・ケトアシドーシスの予防 |
| SU薬・グリニド薬 | 中止 または 減量 | 重篤な低血糖を予防 |
| DPP-4阻害薬 | 継続 または 中止 | 食事量に応じて主治医の指示を確認 |
| インスリン注射 | 減量して継続 | 絶対に自己中断しないこと! |
4. 相談していただく方が良い場合
以下のような症状がある場合は、すぐに受診、またはお電話ください。
- 38度以上の高熱が続いている
- 激しい嘔吐や下痢が続き、水分も摂れない
- 血糖値がずっと高い状態(例:300mg/dL以上)が続く
- 意識がぼーっとする、強い倦怠感がある
「あなた専用」のルールを決めましょう
上記は一般的な目安です。お薬の種類や病状によって、一人ひとりルールが異なります。あらかじめ診察時に「もし食事が半分しか摂れなかったら?」「全く摂れなかったら?」という具体的なパターン、中止減量すべき薬品名を相談して、メモに残しておきましょう。

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