ぐっと冷え込む季節になりました。
寒さを感じると体は熱を逃がさないように血管を収縮させるため、冬場はどうしても血圧が高くなりやすい時期です。
実際に当院の外来にも、最近血圧が上がってきたことを心配されて、桂川さいとう内科循環器クリニックにも連日多くの高血圧の患者さんが来院されています。
多くの方は、加齢や塩分の摂りすぎ、寒さの影響などが重なって血圧が上がっています(本態性高血圧)。しかし、その中には実は「別の病気」が原因で血圧が上がっているケースが隠れていることがあります。
これを「二次性高血圧(にじせいこうけつあつ)」と呼びます。
今回は、意外と見過ごされがちなこの病気について、少し詳しく解説します。
■「二次性」ってどういう意味?
「二次性」という言葉は少し聞き慣れないかもしれません。これは「二番目」という意味ではなく、「何らかの病気が原因で、その結果として(二次的に)高血圧になっている」という意味です。
- 一般的な高血圧(本態性): 原因が一つに特定できない(生活習慣、加齢、遺伝などが複雑に絡み合う)
- 二次性高血圧: ホルモン異常や腎臓の血管の異常など、はっきりとした「犯人(原因)」がいる
ここが非常に重要なポイントです。なぜなら、原因となっている病気を治療すれば、高血圧そのものが治ったり、薬を減らせたりする可能性があるからです。
■意外と珍しくありません
「特別な病気なんでしょ?」と思われるかもしれませんが、高血圧の患者さんのうち、**およそ5%~10%**がこの二次性高血圧だと言われています。
これは、高血圧で通院している患者さんが20人いれば、そのうち1人は該当する計算です。決して稀な病気ではありません。
■こんな方は、積極的に検査を推奨します
当院では、特に以下のような特徴がある方には、二次性高血圧の検査を積極的にお勧めしています。
- 若年の方(20代~40代など)で血圧が高い
- 急に血圧が高くなった
- 薬をしっかり飲んでいるのに、なかなか血圧が下がらない
- ご家族に高血圧の方がいないのに、自分だけ高い
- いびきがひどい、日中の眠気が強い(睡眠時無呼吸症候群の疑い)
特に若い方の高血圧は、単なる生活習慣の乱れではなく、ホルモンバランスの異常などが隠れているケースが少なくありません。放置すると動脈硬化が早く進んでしまうため、早めの発見が大切です。
■診断には「安静時採血」が必要です
二次性高血圧の原因として多いのが、血圧を上げるホルモン(アルドステロンなど)が過剰に出ているケースです。
このホルモンは非常にデリケートで、少し動いたり、立ったり座ったりするだけで数値が変動してしまいます。
そのため、正確な診断のためには「安静時採血」という特殊な方法が必要です。
- 検査の流れ: ベッドで仰向けになり、15分~30分ほど静かに横になっていただきます。 心身ともにリラックスした状態になってから、寝たままの姿勢で採血を行います。
通常の採血よりもお時間をいただきますが、正確な診断のためには欠かせないプロセスです。「ただの採血」と思わず、お時間に余裕を持ってご来院いただければと思います。
■原因を突き止めることが治療の第一歩
「一生薬を飲み続けるもの」と思われがちな高血圧ですが、二次性高血圧であれば、カテーテル治療や手術によって根治(完全に治ること)を目指せる場合もあります。「もしかして自分も?」と思われた方は、ぜひ診察室でご相談ください。

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