網膜動脈閉塞症(RAO)は“目の脳梗塞”。突然の視野欠損が起きたとき、循環器クリニックではどんな検査・治療・再発予防を行うのかを解説します。
ポイントまとめ
- 網膜動脈閉塞症(RAO)は、目の網膜を流れる動脈が血栓で詰まる緊急疾患。
- 目の症状=全身の血管トラブルのサイン。原因検索と再発予防が命を守ります。
- 当院では 心臓・頸動脈のスクリーニング+生活習慣・薬物療法 をワンストップで実施。
1. まずは症状チェック:こんなときはすぐ受診!
症状 | チェックポイント |
---|---|
視界の一部が突然欠ける | カーテンが下りたように暗い部分ができる |
片目だけピントが合わない | 痛みはほとんどない |
数分〜1時間で固定 | 視界が戻らないまま固まる |
発症から 4 時間以内 が視力回復のラストチャンスと考えられています。違和感があれば迷わず眼科を受診してください。
2. なぜ循環器クリニックで診るの?
網膜動脈閉塞症 の多くは
- 心臓(心房細動など)から飛んできた血栓
- 頸動脈プラークが剥がれて血管を詰まらせた
という “全身の血管病” が背景にあります。
視力を守るだけでなく 脳梗塞や心筋梗塞の再発を防ぐ ために、循環器的な原因検索と治療が必須です。
3. 当院で受けられる原因検索フロー
時期 | 検査 | 目的 |
---|---|---|
初診当日 | – 12誘導心電図 – 採血(炎症・凝固・脂質・血糖) – 頸動脈エコー | 心房細動・重症頸動脈狭窄の即時確認 |
24h 以内 | 24h ホルター心電図(外注) | 発作性心房細動の追加探索 |
必要に応じて | – 心エコー(TTE) – 頭部 MRI/MRA・頸動脈 CTA(近隣病院紹介) – 専門凝固検査 | 心臓内血栓・無症候性脳梗塞・高凝固状態の評価 |
検査で原因が判明するのは 3~4 割程度 が現実です。原因が分からなくても再発予防は続きますのでご安心ください。
4. 再発を防ぐ 3 本柱
4-1. 血圧・コレステロール・血糖管理
- 目標:血圧 130/80 mmHg 未満、LDL-C 100 mg/dL 未満、HbA1c 7% 未満
- 減塩(1 日 6 g 目安)、野菜+魚中心、1 日 30 分の有酸素運動
4-2. 抗血栓療法の最適化
背景疾患 | 推奨薬 | 目的 |
---|---|---|
心房細動あり | DOAC(直接経口抗凝固薬) | 心原性脳梗塞・網膜動脈閉塞症再発予防 |
頸動脈プラークあり | アスピリン or クロピドグレル | 動脈硬化性塞栓の抑制 |
原因不明 (cryptogenic) | 個別リスクで判断 | 出血リスクと効果のバランスを吟味 |
4-3. 定期フォローとセルフモニタ
- 3~6 か月ごと の頸動脈エコー・心電図チェック
- スマホアプリやウェアラブルで 脈拍・血圧を毎日モニタ
- 視野の再変化があれば眼科再診を推奨
5. よくいただくご質問
Q. 原因が分からない場合でも薬は必要?
はい。原因が特定できなくても 脳梗塞リスクは 2~3 倍 といわれています。抗血栓治療薬が必要とされることが多いです。
Q. 視力が元に戻ったら治療終了?
いいえ。視力が回復しても 心臓・頸動脈の再評価 を続けましょう。再発や別の血管イベントを防ぐことが命を守ります。
Q. 予防接種やサプリで防げませんか?
直接効果のあるワクチンやサプリはありません。血圧・コレステロール管理が最も確実な予防法です。
6. まとめ
- 網膜動脈閉塞症は 「目に起きる脳梗塞」。
- 当院では 心臓・頸動脈の原因検索 と 生活習慣+薬物療法による再発予防 をセットで行います。
- 視界の急な変化は、視力だけでなく命のサイン。早期受診と継続フォローで、再発を未然に防ぎましょう。
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