開院後

高カリウム血症患者への新たな治療アプローチ – ロケルマ講演会を振り返って

本日の昼休みにインターネット講演会に参加しました。テーマは「高カリウム血症患者における新たなアプローチ」で、東京慈恵医科大学の松本啓先生の講演でした。腎臓病や透析患者に関連する最新の知見が盛り込まれた内容で、特に「高カリウム血症」への治療法として注目されているロケルマについて詳しく紹介されました。自分の勉強も兼ねて講演内容を紹介いたします。


透析患者の現状:増え続ける患者数と背景

毎年約4万人の新しい透析患者が加わる中で、糖尿病性腎症や腎硬化症といった疾患が透析の主な原因となっています。特に、腎硬化症による透析患者が増えているのが特徴です。

腎機能低下の進行を抑えるには?

腎機能が低下すると、症状が現れる前に「アルブミン尿」が検出されることがよくあります。この段階で治療介入することが、透析を回避するための鍵となります。糖尿病や高血圧は腎臓の働きを悪化させるため、次のポイントが重要です:

  • 糖尿病患者:アルブミン尿が出た段階での早期治療。
  • 高血圧患者:腎機能の指標であるGFR(糸球体濾過量)が下がった時点での治療開始。

糖尿病と腎機能管理:最新の治療ガイドライン

松本先生は糖尿病の治療について、特にSGLT2阻害剤やGLP-1作動薬といった新しい治療法に注目されていました。

欧州 vs 日本のガイドラインの違い

  • 欧州ガイドライン:肥満の有無に関係なく、SGLT2阻害剤やGLP-1作動薬を推奨。
  • 日本のガイドライン:肥満患者と非肥満患者に分けて治療法を選択し、イメグリフロジン(国内承認薬)にも配慮。

SGLT2阻害剤の役割

近年の研究(DAPA-CKD試験など)では、SGLT2阻害剤が糖尿病患者だけでなく、非糖尿病患者の慢性腎臓病(CKD)にも有効であることが示されています。この薬は腎臓や心臓の保護作用があるため、腎障害の進行を抑える効果が期待されています。ただし、尿路感染症や脱水などの副作用に注意が必要です。


高カリウム血症とその管理方法

腎臓病やRAS系阻害薬(ACE/ARB)の使用に伴い、高カリウム血症は一般的な問題です。カリウムの摂取制限は重要ですが、食事指導が難しい場合もあります。

便利なアプリ「ハカリウム」

最近は、食事に含まれるカリウム量を写真で計算できる「ハカリウム」というアプリも登場しています。これにより、日常生活の中でカリウム摂取量を管理する手助けが可能になります。

ロケルマ:ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム

高カリウム血症の治療薬として注目されているのが「ロケルマ」です。この薬は、1日で血液中のカリウム濃度をある程度低下させることが可能です。松本先生は、透析が一時的にできない患者さんでロケルマが効果を発揮した症例を紹介されていました。


まとめ

今回の講演を通じて、透析患者の増加背景や糖尿病治療の最新情報、高カリウム血症への具体的なアプローチについて学びました。腎臓病や高カリウム血症の治療は日々進化しています。クリニックでも医学の進歩に遅れないよう勉強を続けていきたいと思います。

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