研究

SGLT2 inhibitor Seminarにパネリストとして参加いたしました

本日はSGLT2 inhibitor Seminarにパネリストとして参加いたしました。東京大学の波多野将先生から心不全の最新治療、トピックについて講演頂き勉強いたしましたので内容について紹介いたします。

心不全は心臓が十分に働かなくなった状態です。そのため 十分な量の血液を全身に送れなくなり、呼吸困難やむくみ、動悸、疲労感など、さまざまな症状が出現します。日本国内の高齢化に伴い心不全の患者さんはどんどん増えてきており、”心不全パンデミック”ともいわれる状態になっています。心不全は心筋梗塞、心臓弁膜症、様々な疾患が背景にあるため根治することが難しく一旦改善してもまた悪くなることも多い病気です。心不全については多くの研究がなされており、講演された波多野先生も参加されたJROAD研究では心不全患者の高齢化や左室収縮能の保たれたHFpEFの患者さんが増えてきていることが明らかなになっています。医学の進歩も目覚ましく新しい治療薬もどんどん開発され患者さんに使用できるようになってきています。心不全の治療は一つの薬で行われるのではなく、薬効の異なるいくつかの薬を組み合わせて行われます。

代表的な心不全の治療薬剤4つを”Fantastic Four”と称して心不全、とくに収縮力の低下した心不全の患者さんに投与することがガイドラインで推奨されています。その他の薬でもイバブラジンといった以前に当ブログで紹介した薬剤心不全治療薬として注目されており心拍数の早い患者さんなどでは有効性がSHIFT研究などで示唆されていますも講演で発表されておりました。

波多野先生が強調されていたのは”Fantastic Four”の投与が推奨されているものの実際の診療では腎障害や副作用等もありなかなかすべての薬剤を内服することもできない患者さんもたくさんいるということです。その他には新しく注目されている薬としてベルイシグアトなど新しい作用機序の薬が注目されていることも紹介頂きました。

心不全の患者さんには腎障害を合併していることも多いのですが腎障害があると血液中のカリウム値が上昇しやすいことが知られています。”Fantastic Four”の1つであるARNIという薬剤でもカリウムが上昇するため注意が必要であるとされています。ARNIはPARADIGM-HF試験でARNIの有効性が示唆され、現在はガイドラインでも使用が推奨されていますが、ACE阻害剤など従来の薬と比べて高カリウム血症の頻度は少ないことが紹介されておりました。波多野先生の講演ではまた高カリウムに対する治療薬としてロケルマという新しい高カリウム血症の治療薬も紹介頂きました。また実際の投与方法、カリウム値のコントロール方法なども実際の症例提示を通じて講演頂きました。

最後にメインテーマである”SGLT2阻害剤“について講演をいただきました。SGLT2阻害剤はもともとは糖尿病の薬剤として承認されましたが、心不全にも非常に有用であるということで現在注目されている薬です。当院でもSGLT2阻害剤を内服頂いている患者さんも多く、内服により浮腫みが改善したり、息苦しさが改善した患者さんもいらっしゃいます。特に糖尿病を合併した患者さんには減量効果もありますので患者さんからみた場合の満足度も高いと考えています。SGLT2阻害剤には血糖とともに体の過剰な水分を排泄する効果があるのですが、それ以外にも交感神経の興奮を抑えたり、腎臓を保護する作用、また腎性貧血(腎臓を原因とした貧血)にも効果があり、それらが心不全に対して複合的に効いているのではないかとのことでした。波多野先生が勤務されている東大病院での実際のSGLT2阻害剤の使用状況、またその変遷もご発表頂き現在SGLT2阻害剤の使用がどんどん増えていることも紹介されていました。その後は実際の薬剤の使用方法を症例を通じて教えて頂きました。私もパネリストとして参加させて頂き質問させて頂きました。

医学の進歩とともに使用できる薬剤はどんどん増えています、クリニックではできない治療もありますがしっかりと勉強して最新の知見にキャッチアップしていきたいと考えています。

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