2011年3月11日は前勤務先の永井病院でカテーテル治療をしておりました。治療中なので揺れに気づかず医局に戻ったあとでテレビで震災を確認しました。津波による被害、原発の爆発、放射能漏れ、多くの亡くなった方々の連日のニュースを覚えています。今日はあれからちょうど10年です。
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2011年3月11日、私はといえば4月から大学勤務となることが決まっており自分としてはやりたかった研究ができるということでワクワクとしてました。PTMCを開発した井上寛治先生、TAVIを開発したAlain Cribier先生、そのような仕事をしたい、達成できないまでもいけるところまで近づきたいという思いでした。日本の医療機器開発に貢献し、MedtronicやAbbottのような世界的企業を作りたい、と考えていました。
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あれから10年、振り返れば”日本からの心血管カテーテル治療機器開発”という目標は達成できなかったのですが総論的には満足しています。”mission oriented”、”problem solving”、2通りの生き方があると思うのですが、自分は常にあらゆる状態で”mission oriented”に生きていきたいと考えています。少なくとも当初の数年は”mission oriented”に生きていくことができたのではないか、そういう意味では反省はあれども後悔はないです。反省点としては”弱みのうえに何かを構築しようとした”、ということが一番の理由ではないかと考えています。自分の得意分野、あるいは日本の得意分野のうえに何かを築こうとすれば違った結果が得られたかもしれませんがそれは自身の限界であり人生は一度きり、選択はやりなおせません。
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現在はクリニック開院に向けて準備をしています。大学病院で行っている循環器医療は高度ではありますがその恩恵をうける患者さんは一部ですし、またそこに至るまでに多くのプロセスを経ています。循環器疾患の多くは動脈硬化を背景としており、動脈硬化は一部は加齢現象であるものの生活習慣の改善、適切な薬物治療により発症、進展を防げると考えています。これらに関与する方法としてクリニック開院しより多くの患者さんにきめ細かい診療をすることが良いのではと考え開院の決断にいたりました。生活習慣病の診療については現在の定期通院、内服処方という形でなく、また違う最適な診療形態があるのではないかとも考えておりそれを日常診療の中から生み出していきたいと考えています。
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2021年3月11日、また新しい気持ちで挑戦をはじめたい。
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