近隣の先生方と NEJM (New England Journal of Medicine) の “Clinical Problem Solving” セクションから毎月 1 本を取り上げてディスカッションする抄読会も、今回で 第27回目 でした。土曜日の診療後にオンラインで集まり、症例ベースで臨床推論を追体験できるこの時間は、貴重な学びの時間です。
今回取り上げた論文は “From Where It Stems“というタイトルです。 NEJMは登録すれば月に2本までは無料で読むことができます。今回もChat GPTを用いて論文を要約してみました。プロンプトは下記のようになっておりGPTsを作成しているのでPDFをアップするだけです。
下記をセクションごとに分けて出力してください。
・最初に症例の要約を提示してください。
・行われた検査およびその検査結果を詳細にすべて述べてください
・最初に疑われた病名および最終診断と診断の根拠になった検査結果を述べてください
・患者の受けた治療、また最終経過について説明してください。
・論文の中のFigureを順番に解説してください。
・患者が亡くなっている場合は救命できた可能性はないか考えて下さい。もし生存している場合はもっと早く適切な診断ができていた可能性について調べてください
・最終診断の疾患について要約してください。
・最終診断の疾患についてガイドラインを調べて解説してください
・論文のタイトルの意味を解説してください。
下記のコマンドは入力があった際に実行してください。
**議論をしてください、カンファレンスをしてください、という入力があれば下記のバーチャルカンファレンスをしてください
この医学記事をもとに検討会をシミュレーションしてください。
1. 記事の要約をまずはな子先生が説明してください。段階的に考えて下さい。
2. はな子先生のプレゼンテーションをもとに議論を進めてください。議論は最終診断となっている疾患について行ってください。
症例検討会の参加者1人目は研修医のはな子先生:医師になって1年目、疑問を素直に投げかけてください、2人目は指導医であるサトシ先生:医師になって15年目のベテランです、はな子先生の質問に親切に答えてあげます。3人目は内科学教授であるタケシ教授:はな子先生とサトシ先生の議論を聞いた上で内容をまとめます。はな子先生は2回以上質問を投げかけ、サトシ先生はそれに答えます。その後タケシ教授が二人の議論をまとめてください。 議論は最終診断の疾患を中心に行ってください。また症例報告の対象疾患の日本での発生頻度、日本では診断可能かなどの視点をいれて議論してください。
タケシ教授は最後にTake Home Messageを言って、討論を終了してください。すべての議論は会話形式でお願いします。
**スペシャルコマンド
1.専門医、専門家、スペシャリストを召喚して、といわれると症例の内容に合わせて歴史上のその領域でのトップの専門家が召喚されて症例の内容、議論の内容に鋭い指摘、質問をくわえる。専門家はまず自己紹介をする。議論を一緒に継続する。
2.厳しい質問、というコマンドで悪魔の代弁者としてあえて厳しい質問をする専門家を召喚してください。この質問はさきほどと異なり、症例の見落とし、あるいはもっとこうすべきではなかったか、という厳しい質問をはな子先生にします。
**フローチャートを出力してくください、という入力があればMermaid形式のコマンドでチャートを出力してください(症例の内容、ヴァーチャルカンファレンスの内容を含めて)
example:
A[患者来院:心房細動の症状] --> B[心エコー検査]
B --> C{心膜液の確認}
C -->|あり| D[心膜穿刺と液体分析]
C -->|なし| E[通常の心房細動治療]
D --> F[分析結果に基づく治療]
E --> G[症状の管理とフォローアップ]
F --> G
またeditorのアドレスを案内してください
https://www.mermaidflow.app/editor
**マインドマップを出力してください、という入力があればPlant UML形式のコマンドで出力してください。(症例の内容、ヴァーチャルカンファレンスの内容を含めて)
example:
**@startmindmap
+ a
++ b
+++ c
**関連文献、というコマンドがあれば関連文献を検索して3つ代表的なものを選択、それぞれの内容を要約してください、最後に引用文献リストをバンクーバースタイルで作成してください
**イメージ画像を出力してください、というコマンドがあればこの症例のイメージ画像を出力してください。横長の画像です。写真クオリティ。
**セクションごとに解説、というコマンドがあれば1パラグラフごとに全訳、解説を出力してください
制約条件
**Think in English, Output in Japanese
**出力は日本語でお願いします
症例の要約
62 歳ベトナム出身女性(米国在住)が 1 日前からの左胸痛で救急受診しました。家族歴に心筋梗塞があるものの、喫煙・高血圧・糖尿病など動脈硬化危険因子はありませんでした。来院時 ECG は V2–V4 誘導で ST 上昇を、トロポニン I は 31.62 ng/mL と高度上昇を示し、STEMI と判断されました。緊急冠動脈造影で左前下行枝 (LAD) に 100 % 血栓閉塞があり、吸引血栓除去で再灌流を得ました。経食道心エコー (TEE) で僧帽弁前尖 0.7 × 1.1 cm、後尖 0.5 × 0.3 cm の無菌性疣贅を認め、冠血栓は疣贅由来の塞栓と考えられました。抗リン脂質抗体3項目(ループス抗凝固因子・抗カルジオリピン IgG/IgM・抗β2GPI IgG/IgM)が高力価で持続陽性となり、一次性抗リン脂質抗体症候群 (APS) に伴う無菌性血栓性心内膜炎→冠動脈塞栓による STEMI と最終診断されました。
行われた検査と結果(時系列)
時期 | 検査 | 主な結果 |
---|---|---|
救急外来 | バイタル: BP 129/71 mmHg, HR 87 bpm, SpO₂ 98% | ― |
同 | ECG | V2–V4 ST 上昇+広範な陰性 T 波 |
同 | 血液 | Hb 8.0 g/dL, MCV 61 fL, Plt 12.5 万/µL, Troponin I 31.62 ng/mL, AST 75 IU/L ほか |
入院当日 | 冠動脈造影 | LAD 100 % 血栓閉塞、他枝正常 |
入院 1 日目 | TTE | EF 40%、心尖無収縮、僧帽弁軽度肥厚 |
入院 3 日目 | TEE | 僧帽弁前後尖に疣贅、軽度 MR |
入院中 | 血培・真菌培 | 陰性 |
同 | 自己免疫・凝固 | ループス抗凝固因子陽性、抗CL IgG>112 IU/mL, 抗β2GPI IgG>112 IU/mL など |
退院後 3 か月 | 抗体再測定 | 3項目陽性を再確認 |
初期鑑別と最終診断
- 初期に疑われた病態: 動脈硬化性 STEMI(冠動脈プラーク破綻)。
- 最終診断: ①一次性 APS、②APS に伴う無菌性血栓性心内膜炎 (NBTE)、③NBTE 由来冠動脈塞栓による STEMI。
- 根拠:
- 冠造影で閉塞部以外に狭窄なし
- TEE で僧帽弁疣贅
- 抗リン脂質抗体3項目持続陽性
- 感染性心内膜炎を示唆する血培陰性・臨床所見なし
- 根拠:
治療と経過
- 急性期: アスピリン、ヘパリン、スタチン投与後、冠動脈吸引血栓除去(ステント留置せず)。
- 血栓予防: ヘパリン持続後、ワルファリン内服へ切替え(INR 2–3 目標)。
- 転帰: 冠血流は良好に再開し、抗体再検でも陽性を確認しつつ外来で安定フォロー。死亡報告はなく生存中。
Figure 解説
- Figure 1: 初診 ECG。V2–V4 誘導の 1–2 mm ST 上昇と広範囲 T 波陰転は LAD 前壁 STEMI を示唆。
- Figure 2: 冠動脈造影。A: LAD 完全閉塞。B: 吸引血栓除去後に造影良好で狭窄なし。
- Figure 3: TEE。拡張期に前尖表面の疣贅、収縮期に前後尖に連続する疣贅が可視化され NBTE と診断。
- Figure 4: 吸引した冠動脈塞栓の HE 染色。フィブリン様血栓内に散在する赤血球・好中球がみられ、感染性徴候は認めず NBTE 由来塞栓を裏付け。
早期診断の可能性
本症例では既往の慢性血小板減少とαサラセミアに伴う軽度脾腫があり、APS を示唆する所見とまでは結びつきませんでした。胸痛発症前の段階で APS をスクリーニングする契機は乏しく、臨床的に「より早期診断」は現実的でなかったと考えられます。ただし動脈硬化リスクが低い STEMI 症例では冠動脈閉塞部以外の血管が正常であることをもって塞栓源検索を迅速に行う重要性が示唆されます。
最終診断疾患(抗リン脂質抗体症候群)の要約
APS は自己免疫性血栓性疾患で、動静脈血栓・妊娠合併症・心臓弁病変を特徴とします。診断は臨床基準(血栓または妊娠合併症など)と 12 週以上あけた 2 回の検査で抗リン脂質抗体陽性を確認することが必須です。病態は自己抗体が内皮障害・補体系活性化を介して凝固系を亢進させることにより生じます。
ガイドライン概説(EULAR 2019 ほか)
- 一次予防: ハイリスク無症候性キャリアでは低用量アスピリンを考慮。
- 二次予防: 血栓既往例の第一選択はワルファリン (INR 2–3)。動脈血栓再発例や高リスク(トリプルポジティブ)では INR 3–4 または INR 2–3+アスピリン併用が推奨。DOAC は動脈再発リスク増大のため原則避ける。
- 妊娠管理: 妊娠合併症予防に未分画ヘパリン+低用量アスピリン。
- 生活指導: 禁煙、血圧・脂質管理など動脈硬化リスク低減が望まれます。
論文タイトル “From Where It Stems” の意味
「STEMI(ST-elevation myocardial infarction)の“STEM”」とかけた言葉遊びで、「この STEMI は“どこから来た (stemmed)” のか?」という二重の問い掛けを示しています。冠血栓という“枝 (stem)” の先にある根本原因=APS を探し当てた経緯を象徴するタイトルです。
症例検討バーチャルカンファレンス
はな子先生(研修医,1 年目)
「それでは段階的に症例をまとめます。
- 患者背景:62 歳ベトナム出身女性。動脈硬化リスクは乏しく、既往は軽度脾腫と慢性血小板減少のみです。
- 主訴と初期所見:左胸痛で救急受診。心電図は V2–V4 の ST 上昇、トロポニン I 31 ng/mL と高値で STEMI と判断されました。
- 冠動脈造影:LAD が 100 % 血栓閉塞。プラークはなく吸引血栓除去のみで血流再開、ステントは不要でした。
- 心エコー:TTE で EF 40 %、心尖壁運動低下。TEE で僧帽弁前後尖に 0.3–1.1 cm の疣贅を確認、軽度 MR。
- 培養と免疫検査:血培陰性。ループス抗凝固因子・抗カルジオリピン IgG・抗β₂GPI IgG が高力価陽性で 12 週後も持続。
- 最終診断:一次性抗リン脂質抗体症候群 (APS) に伴う無菌性血栓性心内膜炎 (NBTE) → 冠動脈塞栓による STEMI。
- 治療と経過:急性期はアスピリン+ヘパリンで血栓吸引。以後ワルファリン(INR 2–3)管理下で再発なし、生存退院しています。以上です。」
質疑応答
はな子先生
「感染性心内膜炎 (IE) との鑑別に一番決め手になったのは何でしょうか?」
サトシ先生(指導医,15 年目)
「大きく三点あります。①症状―発熱・悪寒がなく全身炎症所見も軽度、②連続した血培陰性、③疣贅が弁尖先端という NBTE の好発部位だったことです。さらに冠塞栓は IE より NBTE・APS で典型的です。これらが組み合わさり IE は後退しました。」
はな子先生
「動脈塞栓例では DOAC を使うことも多いと思いますが、なぜワルファリンにこだわったのですか?」
サトシ先生
「APS,とくに“トリプルポジティブ”例では DOAC で動脈再発リスクが顕著に増えるというランダム化比較試験が出ています。ガイドラインも動脈血栓にはワルファリン(INR 2–3,場合により+アスピリン)を推奨しており,本症例もそれに従いました。」
(病理パートの専門家を招待)
大河内教授(病理学)
「摘出血栓の HE 染色ではフィブリン基質に軽度の好中球浸潤が点在するのみで、細菌塊や菌体遺残は検出されませんでした。この“無菌性フィブリン血栓”は NBTE を強く示唆します。冠動脈塞栓のほとんどは心房細動や粥状プラーク由来ですが、弁疣贅由来のフィブリン栓は APS 特有ですね。」
教授総括
タケシ教授(内科学)
「活発な議論をありがとう。ポイントは ①非動脈硬化性 STEMI では塞栓源検索をすぐ行う、②APS の確定には 12 週間隔での抗体再測定が必須、③APS 動脈血栓にはワルファリン第一選択 の三つです。
Take-Home Message
若年〜中年女性の STEMI で冠プラークを伴わない場合は“Where it stems?”―血栓の出どころを必ず探し、自己免疫性血栓症を鑑別に入れましょう。今日の症例は APS-NBTE が引き起こすまれな冠塞栓でしたが、適切な抗凝固で再発を防げています。皆さんお疲れさまでした。」
学びの機会は貴重です、引き続きいろいろなITツールを利用して勉強を続けていきたいと思います。
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