疾患解説

百日咳が流行中!知っておきたい最新情報と予防のポイント

百日咳とは?

百日咳は、百日咳菌(Bordetella pertussis)による急性の呼吸器感染症で、激しい咳発作が特徴です。咳が約100日間続くことからこの名前がつけられました。感染力は非常に強く、免疫がない場合、1人の感染者から16~21人に感染する可能性があります。 特に乳幼児や高齢者、免疫が弱い方は重症化リスクが高いため注意が必要です。

最新の流行状況

2025年4月時点で、日本国内の百日咳患者数は急増しており、診断週12週時点で4,200例が報告され、2024年の年間報告数(4,054例)をすでに上回っています。これは2018年以降の同時期で最多です。 当院でも発熱外来をしていると頻度は多くないですが百日咳と診断される方がパラパラといらっしゃいます。

耐性菌の増加

百日咳の治療には通常、マクロライド系抗菌薬(エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど)が使用されますが、近年、マクロライド耐性百日咳菌(MRBP)の報告が増加しています。日本では2018年に大阪で初めて耐性菌が確認され、2024年にはさらに報告が広がっています。 耐性菌の場合、代替療法としてST合剤(スルファメトキサゾール・トリメトプリ)が推奨されることがありますが、早期診断と適切な治療が重要です。

百日咳の診断方法

百日咳の診断には以下の方法がありますが、それぞれ特徴と課題があります。

  • 抗原迅速検査(イムノクロマト法)
    鼻咽頭拭い液を使用して約15分で結果が得られる迅速検査キット(例:リボテスト® 百日咳)が利用可能です。 2021年6月から届出基準にも追加され、保険適用されています。 しかし、現在、百日咳患者の増加により検査キットの在庫が不足している状況です。当院でも検査キットの在庫がないときもあります。 陰性でも百日咳を否定できないため、注意が必要です。
  • LAMP法(ループ介在等温増幅法)
    LAMP法は、百日咳菌の遺伝子を増幅して検出する高感度な検査で、2016年から保険適用されています。 鼻咽頭スワブや吸引液を使用し、迅速かつ簡便に診断できるため、発症早期(2~3週間以内)の診断に適しています。 ただし、検体採取には鼻の奥まで綿棒を入れる必要があり、痛みを伴う場合があります。また、ワクチン接種後の患者では菌量が少なく、感度が低下する可能性があります。 結果判明まで数日かかることがあり、迅速検査が利用できない場合の代替手段となります。
  • 血液検査(抗体検査)
    血液検査では、百日咳菌に対するIgMやIgA抗体を測定します。 発症2週間以降に適しており、ワクチン接種の影響を受けにくいIgA-IgM測定法が推奨されます。 しかし、結果が出るまでに1週間程度かかるため、迅速な診断には不向きです。 現在、検査会社によってはIgM/IgA抗体の検査受託を一時中止している場合があります。

学生や特定の方への注意点

  • 学生の出席停止
    百日咳は感染力が非常に強く、学校保健安全法に基づき、適切な抗菌薬治療開始後5日間、または咳が消失するまで出席停止となります(最大3週間)。 学校での感染拡大を防ぐため、咳症状がある場合は早めに医療機関を受診してください。
  • 免疫が弱い方や赤ちゃんのいる家庭への注意
    1歳以下の乳児、特に生後6か月未満の赤ちゃんは、百日咳による重症化リスクが高く、肺炎や脳症、場合によっては死亡する可能性があります。 高齢者や免疫が弱い方も重症化しやすいため、特に赤ちゃんのいる家庭では、咳エチケット(マスク着用や咳時に口を覆う)や手洗いを徹底してください。 当院では小児の診療を行っておりませんので、お子様の症状が疑われる場合は、小児科専門の医療機関を受診してください。

予防のためにできること

  • ワクチン接種
    百日咳はワクチンで予防可能な病気です。生後2か月から5種混合ワクチン(百日咳、ジフテリア、破傷風、ポリオ、Hib)を接種でき、1歳半までに4回接種が推奨されます。 ただし、ワクチンの効果は10~12年で弱まるため、成人でも追加接種(三種混合ワクチン)を検討してください。
  • 咳エチケットと感染対策
    感染初期は風邪のような症状で感染力が強いため、咳やくしゃみがある場合はマスクを着用し、周囲への感染を防ぎましょう。室内の加湿や換気も効果的です。

最後に

百日咳は、早期診断と適切な治療が重要です。長引く咳や激しい咳発作がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。特に、赤ちゃんや高齢者、免疫が弱い方が近くにいる場合は、感染拡大防止のため迅速な対応が必要です。当院では小児診療は行っておりませんが、成人の百日咳診断・治療に対応しております。ご不明点があれば、ぜひご相談ください。

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