診療ガイドライン

心不全と「水分制限」―本当に必要?最近の研究(FRESH-UP試験)でわかったこと


💡そもそも水分制限って何?

「水分制限」とは、飲み物の量を1日1〜1.5リットルくらいにおさえることを意味します。これは心不全の方によく言われる生活指導のひとつで、「体にたまる余分な水分(むくみや肺の水たまり)を防ぐため」に行われてきました。

でも最近、「すべての患者さんに水分制限が本当に必要なのか?」ということが、見直されつつあります。


🧪【最新研究】水分制限をしなくても大丈夫?

2025年春、アメリカの大きな学会(ACC)で「FRESH-UP試験」という研究の結果が発表されました。

この研究では…

  • 心不全の患者さんを2つのグループに分けて、
    • Aグループ:水分制限あり(1.5Lまで)
    • Bグループ:水分制限なし(自由に水を飲める)
  • 約3か月間くらしや体調を比べました。

結果は…

  • 入院の回数に差はなし(制限してもしなくても)
  • 水分制限ありの人は「のどがかわいてつらい」と感じやすい
  • 生活の質(QOL)も、自由に飲めたグループの方が高かった

つまり、「水分をがまんしても、あまり意味がないかもしれない」という結果だったのです。


📖日本のガイドラインでは?

同じ時期に発表された日本の「2025年心不全診療ガイドライン」では、水分制限について次のように書かれています。

水分制限は、すべての患者さんに必ず必要というわけではありません。患者さんの体の状態を見ながら、必要な人だけに行いましょう」

また、脱水や口の渇きに注意しながら、うまく調整していくことも大切とされています。


👩‍⚕️水分は、がまんしすぎないで

心不全と聞くと「水分は絶対に制限しないとダメ」と思ってしまいがちですが、**最新の研究では「必ずしもそうではない」**ことがわかってきました。

相談しながら、あなたに合った量を

  • 体重が急に増えたとき
  • 足がむくんでいるとき
  • 息切れが強いとき

こうしたときには水分がたまっているかもしれません。逆に、暑い日や下痢・利尿薬で脱水になりやすい人もいます。

💬 自己判断せず、必ず医師や看護師に相談しながら調整しましょう。


🧊のどの渇きをやわらげる工夫

  • 氷をなめる
  • うがいをする
  • 口の中を湿らせるガムやスプレーを使う
  • 食事の塩分を少し見直す(塩分が多いとのどが渇きやすい)

📝まとめ

内容ポイント
水分制限は必要?すべての人に必要ではない。症状に応じて調整が必要。
制限しないとどうなる?研究では、入院率などに差はなかった。
注意点は?口渇、脱水に注意。自己判断せず医師と相談を。
工夫は?氷やうがいなどで快適に。

水分制限は「絶対ルール」ではなく、その人に合ったやり方を見つけることが大事です。つらいときは、遠慮せずにクリニックで相談してください。

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