抄読会

第22回抄読会 “Traveling Companions”

毎月1回土曜日に近隣のクリニックの先生方とThe New England Journal of Medicineの論文抄読会を行っています。Clinical Problem-Solvingというセクションの論文を対象にしていますが今回の論文は”Traveling Companions“というタイトルです。

今回はClaude 3.7 Sonnetを利用して論文を読み解いてみます。


症例要約

29歳男性が発熱、悪寒、左肘の痛みと腫れを主訴に救急外来を受診しました。患者は複数の男性パートナーと性的関係を持ち、注射薬物を使用していました。1か月前に発熱、悪寒、右足首の痛みが出現し、別の病院の救急外来で評価を受け、支持療法で数日で症状は改善しました。今回の受診2日前に再び発熱と悪寒が再発し、その後左肘の痛みと腫れが出現しました。ルームメイトは3週間前に細菌性赤痢と診断されていましたが、この患者に下痢はありませんでした。さらに、左手、両腕、胸部、背中に無痛性・非掻痒性の発疹が出現していました。

検査および検査結果

身体所見:

  • 体温は正常
  • 心拍数80回/分、血圧109/64 mmHg、呼吸数18回/分、酸素飽和度99%(室内気)
  • 触診可能なリンパ節腫脹なし
  • 心臓、肺、腹部の診察では異常なし
  • 左肘後部は中程度に腫脹し、触診で圧痛あり、発赤なし、可動域は痛みにより制限
  • 右足首は軽度の腫脹あり、圧痛や発赤なし
  • 他の関節に腫脹、圧痛、発赤なし
  • 胸部、背中、腕に広範囲にわたる淡い紅斑性・非退色性斑状発疹あり(手掌や足底には見られず)

検査結果:

  • 白血球数8000/μL(好中球44%、リンパ球44%)
  • ヘモグロビン12.4 g/dL、血小板330,000/μL
  • 包括的代謝パネルは正常
  • CRP 119 mg/L(正常値<10)、赤血球沈降速度42 mm/時(正常値<15)
  • HIV抗原・抗体検査陰性、HIV RNA PCR検査陰性
  • B型肝炎表面抗原、B型肝炎コア抗体IgM、A型肝炎IgM、C型肝炎抗体はすべて陰性
  • バベシア、エールリヒア、アナプラズマのPCR検査陰性
  • ライム病抗体検査陰性
  • 抗核抗体、抗環状シトルリン化ペプチド抗体検査陰性
  • カンピロバクター、赤痢菌、エンテロウイルスの便培養陰性、志賀毒素検査陰性
  • 左肘と右足首のX線検査で軽度の軟部組織腫脹を確認
  • 経胸壁心エコー検査では植物およびバルブ機能不全なし

特殊検査:

  • 尿検体、咽頭拭い液、直腸拭い液でのクラミジアとリン菌検査は陰性
  • トレポネーマ抗体検査陽性、RPR検査陽性(力価1:8)
  • 入院2日目に左肘関節穿刺:白血球84,090/μL(好中球91%)、グラム染色でグラム陽性球菌を確認
  • 左手首関節穿刺:白血球220/μL(好中球34%)
  • 右足首関節穿刺:白血球460/μL(好中球45%)
  • 左肘と左手首の関節液培養からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が検出

最初に疑われた病名と最終診断および診断根拠

最初に疑われた病名:

  • 性感染症(梅毒、淋病など)
  • 反応性関節炎
  • 自己免疫疾患(リウマチ性疾患など)
  • 感染性心内膜炎

最終診断:

  1. 二期梅毒
    • 診断根拠:トレポネーマ抗体陽性、RPR検査陽性(力価1:8)、発熱、全身性発疹(二期梅毒に特徴的)
  2. メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による化膿性関節炎
    • 診断根拠:左肘関節液の高い白血球数(84,090/μL、好中球91%)、グラム染色でグラム陽性球菌の存在、関節液培養からMRSAが検出

治療と経過

治療:

  1. 二期梅毒に対して:
    • ペニシリンG(240万単位)の単回筋肉内注射
  2. MRSA化膿性関節炎に対して:
    • 左肘と左手首の関節洗浄とデブリドマン
    • 最初はセフトリアキソンとバンコマイシンで治療開始
    • MRSA検出後、バンコマイシンに絞り5日間投与
    • 退院時に長時間作用型抗生物質ダルババンシン(1.5g)の静脈内投与を1回施行
    • 退院2週間後の診察時、症状改善を確認し、追加のダルババンシン投与は行わず、経口ドキシサイクリン(100mg、1日2回)を1ヶ月間処方

経過:

  • 患者は退院2週間後の診察時に症状なく経過良好
  • 痛みや関節腫脹の再発なし

論文中のFigureの解説

Figure 1: 臨床写真(発疹)

  • 患者の背中に広がる淡い紅斑性・非退色性斑状発疹の写真
  • 同様の発疹が胸部と腕にも見られたが、その他の部位には見られなかった
  • この発疹パターンは二期梅毒に典型的なもの

Figure 2: 肘と足首のX線写真

  • パネルA(左肘):骨折や変位はなく、関節腔は正常。肘の後部に軽度の腫脹(矢印)が見られる
  • パネルB(右足首):骨折や変位はなく、関節腔は正常。軽度の軟部組織腫脹と、脛骨距骨関節に小さな関節液貯留の可能性を示す所見(矢印)が見られる

救命・診断について

この症例では患者は死亡していませんが、より早く適切な診断ができた可能性について考察します:

  1. 初回受診時(1ヶ月前):
    • この時点で既に二期梅毒の可能性があった
    • 全身の発疹や性感染症リスクを考慮した詳細な病歴聴取と、梅毒の血清学的検査を行っていれば、梅毒の診断と治療が早期に開始できた可能性がある
  2. 二度目の受診時:
    • 梅毒の診断は適切に行われたが、初期には化膿性関節炎の診断が遅れた
    • 関節炎症状がある場合、特に免疫抑制状態や梅毒患者では、細菌感染の合併症を早期に疑い、関節穿刺を行うべきであった
    • この患者では「異なる症状には異なる診断があり得る」という医学的原則を早期に適用することで、より迅速な診断と治療が可能であったと考えられる

最終診断の疾患についての要約

二期梅毒

梅毒は梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)による性感染症で、米国では2022年に207,255例と記録的な増加を示しています。梅毒は以下の病期に分類されます:

  1. 一期梅毒:
    • 感染部位(通常は性器や口腔)に無痛性の潰瘍(硬性下疳)が出現
    • 潰瘍は治療なしでも2〜6週間で自然消退
  2. 二期梅毒:
    • 全身性で非掻痒性の斑状丘疹性発疹(手掌・足底にも出現することが多い)
    • 筋肉痛、関節痛、発熱などの全身症状
    • 脱毛、骨膜炎、肝炎、腎炎などを伴うこともある
    • 平均3.6ヶ月持続し、その後自然消退または潜伏感染へ移行
  3. 潜伏梅毒:
    • 症状はないが血清学的検査は陽性
    • 生涯持続するか、第三期梅毒へ進行
  4. 第三期梅毒:
    • 未治療患者の15〜40%に発生
    • ゴム腫性梅毒(皮膚、骨、臓器の病変)
    • 心血管梅毒(大動脈瘤、心筋炎、冠動脈炎など)
    • 神経梅毒(歩行障害、認知症など)

診断はトレポネーマ検査(特異的だが活動性と非活動性感染を区別できない)と非トレポネーマ検査(VDRL、RPR:活動性感染の検出と治療反応の追跡に有用)の両方を用います。治療はペニシリンが基本であり、一期、二期、早期潜伏梅毒(1年以内の感染)はベンザチンペニシリンG 240万単位の単回筋肉内注射で治療します。

化膿性関節炎

化膿性関節炎は通常、血行性に細菌が関節に到達することで発生します。特に静脈内薬物使用者では一過性の菌血症のリスクが高くなります。典型的な症状は発熱と温かく腫れた激しく痛む関節ですが、すべての患者が典型的な症状を示すわけではありません。

診断は関節液の分析(白血球数、分画、グラム染色)と培養によって行われます。関節液の白血球数が50,000/μL以上は化膿性関節炎を強く示唆しますが、確定診断ではありません。最も一般的な原因菌は黄色ブドウ球菌(この症例ではMRSA)で、次いでレンサ球菌です。

治療は抗生物質投与と関節ドレナージ(閉鎖式針吸引、関節鏡、関節切開)の両方を含みます。経験的治療は黄色ブドウ球菌(MRSAを含む)とレンサ球菌を標的とし、微生物学的検査結果に基づいて調整します。非淋菌性化膿性関節炎の標準的な抗生物質治療期間は2〜4週間です。

梅毒のガイドライン

米国疾病管理予防センター(CDC)およびそのほかの専門機関のガイドラインに基づく梅毒の管理:

診断

  1. 直接検出法:
    • 暗視野顕微鏡検査:初期の潰瘍やその他の病変から採取した検体で螺旋菌を確認
    • PCR検査:特定の状況で使用可能だが、広く使用されていない
  2. 血清学的検査(主要な診断方法):
    • トレポネーマ検査:FTA-ABS、TP-PA、EIA、CIA(高い特異性、一度陽性になれば通常生涯陽性)
    • 非トレポネーマ検査:RPR、VDRL(定量的結果を提供、活動性評価や治療効果のモニタリングに使用)
    • 現在の推奨アルゴリズム:逆スクリーニングアルゴリズム(トレポネーマ検査→非トレポネーマ検査)

治療

  1. 一期・二期・早期潜伏梅毒(感染後1年以内):
    • 第一選択:ベンザチンペニシリンG 240万単位 筋肉内単回投与
    • ペニシリンアレルギーがある場合:ドキシサイクリン 100mg 1日2回 14日間、または
    • セフトリアキソン 1-2g 1日1回 10-14日間
  2. 後期潜伏梅毒・第三期梅毒(心血管・ゴム腫性梅毒):
    • ベンザチンペニシリンG 240万単位 筋肉内注射 週1回 3週間
    • ペニシリンアレルギーがある場合:ドキシサイクリン 100mg 1日2回 28日間
  3. 神経梅毒・眼梅毒・耳梅毒:
    • 水性ペニシリンG 300-400万単位 静脈内 4時間ごと(1日1800-2400万単位) 10-14日間
    • ペニシリンアレルギーがある場合は脱感作を行い、ペニシリンによる治療を行うべき

フォローアップ

  1. 治療後の臨床評価と血清学的検査:
    • 治療6ヶ月後および12ヶ月後に非トレポネーマ力価の検査
    • 治療成功の指標:非トレポネーマ力価が4倍以上(2段階以上)低下
  2. 治療失敗または再感染の定義:
    • 臨床症状の持続または再発
    • 非トレポネーマ力価が4倍以上(2段階以上)上昇
    • 治療後12ヶ月経過しても非トレポネーマ力価が4倍以上低下しない場合
  3. 特別な集団:
    • HIV感染者:基本的な治療は同じだが、フォローアップを強化
    • 妊婦:ペニシリンが唯一の推奨治療法(アレルギーがある場合は脱感作を実施)

論文タイトルの意味

タイトル「Traveling Companions(旅する仲間たち)」は、この症例における二つの感染症(二期梅毒とMRSA化膿性関節炎)が同時に存在していたことを象徴的に表現しています。患者の体内で「共に旅をしている」二つの病原体が、それぞれ異なる症状を引き起こしながらも、同時に患者の健康を脅かしていました。

このタイトルには以下のような含意があります:

  1. 複数の診断が同時に存在することの重要性を強調:
    • 医学診断において「オッカムの剃刀(最も単純な説明が最良)」の原則を過度に適用すると、複数の疾患が共存するケースを見逃す可能性がある
  2. 感染症の「同伴」という現象:
    • 一つの感染症が別の感染症のリスクを高めることがある(梅毒による免疫機能の変化がMRSA感染のリスクを高めた可能性)
    • リスク行動(この症例では注射薬物使用や無防備な性行為)が複数の感染症のリスクを同時に高める
  3. 臨床的推論の重要性:
    • 医師が「一つの診断で全ての症状を説明しようとする」罠を避け、複数の仮説を同時に検討することの重要性を示している

この症例は、梅毒が「偉大なる模倣者(the great imitator)」と呼ばれる所以を示すとともに、臨床医が一つの診断に固執せず、患者の全ての症状を説明できない場合は追加の診断を考慮する必要性を教えています。


タイトルの意味の解釈などはきちんと理解しているようです。バーチャルカンファレンスも行ってもらいます。スライドなどの資料作成が得意なのでその形式でまとめてもらいました。


梅毒とMRSA化膿性関節炎の共存症例

Clinical Case Conference: “Traveling Companions”

二期梅毒とMRSA化膿性関節炎の共存症例

症例提示者: はな子先生(研修医・1年目)

指導医: サトシ先生(医師・15年目)

司会: タケシ教授(内科学教授)

症例概要

患者情報

  • 29歳男性
  • 主訴: 発熱、悪寒、左肘の痛みと腫れ
  • 社会歴: 複数の男性パートナーと性的関係、注射薬物使用

現病歴

  • 1ヶ月前: 発熱、悪寒、右足首の痛み(別病院で評価、数日で症状改善)
  • 現在の受診2日前: 発熱と悪寒の再発、その後左肘の痛みと腫れが出現
  • 受診前日: 左手、両腕、胸部、背中に無痛性・非掻痒性の発疹
  • ルームメイトは3週間前に細菌性赤痢と診断(患者に下痢なし)

検査結果

身体所見

  • 発熱なし、バイタルサイン安定
  • 左肘後部: 中程度の腫脹、圧痛あり、発赤なし
  • 右足首: 軽度腫脹
  • 胸部・背中・腕: 広範な淡い紅斑性・非退色性斑状発疹

血液・画像検査

  • 炎症マーカー上昇: CRP 119 mg/L, ESR 42 mm/時
  • 白血球数: 8000/μL(正常)
  • HIV, 肝炎ウイルス, ライム病: すべて陰性
  • X線: 左肘と右足首に軽度の軟部組織腫脹
  • 心エコー: 植物なし

決定的検査

  • トレポネーマ抗体検査: 陽性
  • RPR検査: 陽性(力価1:8)
  • 左肘関節液: 白血球84,090/μL(好中球91%)
  • 関節液培養: MRSA検出(左肘、左手首)

診断と治療

診断1: 二期梅毒

診断根拠: トレポネーマ抗体陽性、RPR陽性、特徴的発疹

治療: ベンザチンペニシリンG 240万単位 筋肉内単回注射

診断2: MRSA化膿性関節炎

診断根拠: 関節液の高い白血球数、グラム陽性球菌の存在、MRSAの培養

治療:

  • 関節洗浄とデブリドマン
  • バンコマイシン 5日間
  • 退院時ダルババンシン 1.5g 静注
  • 経口ドキシサイクリン 100mg 1日2回 1ヶ月間

経過

退院2週間後の外来診察で症状なく経過良好、追加のダルババンシン投与は不要と判断

疾患の比較とタイムライン

梅毒とMRSA化膿性関節炎の比較

特性 二期梅毒 MRSA化膿性関節炎
原因 Treponema pallidum(スピロヘータ) メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
典型的症状 全身性発疹、リンパ節腫脹、発熱、倦怠感 単関節の発赤、腫脹、激痛、発熱
診断法 トレポネーマ検査、非トレポネーマ検査(RPR/VDRL) 関節液分析、関節液培養
標準治療 ベンザチンペニシリンG(単回投与) 抗MRSA抗生物質+関節洗浄/デブリドマン
無治療の場合 潜伏期→第三期(心血管・神経系合併症) 関節破壊、敗血症、死亡リスク

1ヶ月前

発熱、悪寒、右足首の痛み

(おそらく既に二期梅毒が発症)

来院2日前

発熱と悪寒の再発

来院1日前

左肘の痛みと腫れ、全身性発疹の出現

来院日

二期梅毒診断、ペニシリン投与

入院2日目

左肘・左手首からMRSA検出

関節洗浄・デブリドマン実施

退院時

ダルババンシン投与

退院2週間後

症状改善、経口ドキシサイクリンへ変更

バーチャルカンファレンス – Part 1

はな子先生(研修医):

この症例で最も印象的だったのは、二つの異なる感染症が同時に存在していたことです。初めは梅毒だけだと考えましたが、症状がすべて説明できず、関節穿刺によってMRSAが判明しました。臨床医が「一つの診断で全ての症状を説明しようとする」罠にはまらなかったことが重要だと思いました。

サトシ先生(指導医):

よい指摘ですね。これは「オッカムの剃刀」の原則を過度に適用することの危険性を示しています。特に感染症では、一つの感染が別の感染症のリスクを高めることがあります。この症例では、梅毒によって免疫機能が変化し、MRSAに対する感受性が高まった可能性があります。また、注射薬物使用という行動が両方の感染症のリスクを上げていました。

はな子先生(研修医):

サトシ先生、この患者さんでは梅毒の治療に標準的なペニシリンが使われましたが、MRSAに対してはダルババンシンという薬剤が選択されました。なぜ通常の長期バンコマイシン治療ではなく、この薬が選ばれたのでしょうか?

サトシ先生(指導医):

重要な質問です。通常、MRSA化膿性関節炎に対しては3週間のバンコマイシン静注が標準ですが、この患者さんは注射薬物使用歴があります。そのため、中心静脈カテーテル(PICC)を留置して外来で抗生物質治療を継続することは安全ではないと判断されました。ダルババンシンは半減期が約2週間と非常に長く、単回または2回の投与で効果が得られます。これにより、カテーテル留置の必要がなくなり、薬物使用歴のある患者さんでも安全に治療を完了できるのです。

バーチャルカンファレンス – Part 2: 専門家の招集

タケシ教授(内科学教授):

この症例については、更に深い視点が必要かもしれません。今日は特別に感染症学における世界的権威であるオスラー先生をお招きしています。オスラー先生、この症例についてご意見をいただけますか?

オスラー先生(感染症学の世界的権威):

皆さん、こんにちは。ウィリアム・オスラーです。私は19世紀から20世紀初頭に活動し、梅毒の臨床像について多くの研究を行いました。実際、梅毒を「偉大なる模倣者」と初めて呼んだのは私です。この症例は非常に興味深いですね。二期梅毒と化膿性関節炎の合併は現代でも診断が難しいケースです。私の時代ではMRSAはありませんでしたが、梅毒患者における続発性感染のリスクは認識されていました。

特に注目すべきは、この患者の最初の症状である右足首の痛みです。これは梅毒による腱滑膜炎だった可能性が高いと思います。梅毒トレポネーマは血行性に広がり、関節、腱、骨膜に炎症を引き起こすことがあります。この炎症部位が、その後のMRSA感染の「入り口」となった可能性があります。つまり、二つの感染症は単に同時に存在していただけでなく、一方が他方の発症を促進したかもしれないのです。

はな子先生(研修医):

オスラー先生、大変貴重なご意見をありがとうございます。確かに梅毒による炎症が先行して存在していた場合、その部位がMRSA感染の好発部位になる可能性が考えられますね。また、この患者さんは一期梅毒の典型的な症状である硬性下疳の記録がありませんでした。梅毒では一期の症状を認識せずに二期に進行することはよくあるのでしょうか?

オスラー先生(感染症学の世界的権威):

非常に鋭い質問ですね、はな子先生。実際、一期梅毒の症状である硬性下疳は、患者自身が気づかないことも少なくありません。特に下疳が口腔内や直腸など目に見えない部位に発生した場合はなおさらです。また、下疳は無痛性であるため、気づかれないまま自然に治癒してしまうこともあります。私の経験では、二期梅毒と診断された患者の約25〜30%は一期の症状に気づいていませんでした。現代では、複数のパートナーとの性的接触がある患者では、特に注意深い問診と身体診察が必要でしょう。

バーチャルカンファレンス – Part 3: 厳しい質問

タケシ教授(内科学教授):

ここで少し視点を変えて、この症例の診療において改善できた点を議論してみましょう。フレミング先生、あなたは常に私たちに厳しい質問を投げかけてくれますが、この症例についてはいかがでしょうか?

フレミング先生(悪魔の代弁者):

アレキサンダー・フレミングです。ペニシリンの発見者として知られていますが、私は常に臨床診断の盲点を指摘することも重要だと考えています。この症例では、初回受診時に梅毒の可能性を見逃したことが大きな問題点ではないでしょうか。患者は1ヶ月前に発熱、悪寒、右足首の痛みで別の病院を受診しています。この時点で性感染症のリスク評価をしっかり行い、梅毒検査を実施していれば、もっと早期に診断・治療ができたはずです。

また、この患者が救急外来を最初に受診した際、「支持療法」だけで帰宅させています。注射薬物使用者であることが記録されていれば、感染性心内膜炎や敗血症のリスクを考慮して、血液培養や詳細な関節評価を行うべきでした。はな子先生、もしあなたが最初の受診時に担当医だったら、どのような評価をしていましたか?

はな子先生(研修医):

フレミング先生、厳しいご指摘ありがとうございます。反省すべき点が多いと感じます。もし私が初回受診時の担当医だったら、リスク行動の評価をより詳細に行い、注射薬物使用者であることや複数のパートナーとの性的接触があることを把握した上で、以下の対応を行うべきだったと思います:

1. 性感染症スクリーニング(梅毒、HIV、淋病、クラミジアなど)を実施

2. 血液培養を採取

3. 右足首の詳細な評価と可能であれば関節液穿刺

4. 全身の皮膚所見の詳細な記録(初期の発疹が既にあった可能性)

これらを行うことで、早期に診断し治療を開始できた可能性が高いと思います。

大河内教授(病理学教授):

この議論に加わらせてください。私は病理学の視点から、梅毒とMRSA感染の相互作用について考察したいと思います。梅毒トレポネーマは血管内皮を含む組織の炎症を引き起こし、微小循環を変化させます。この変化は二次的な細菌感染の足場を提供する可能性があります。また、二期梅毒では一時的な細胞性免疫の変調が起こることも知られており、これがMRSAのような日和見感染を促進する可能性があります。このような病理学的相互作用を理解することは、複数の感染症が存在する患者の管理に重要です。はな子先生、今後このような患者を診る機会があったら、初期の皮膚症状に特に注意を払い、可能であれば生検も検討することをお勧めします。

結論と教訓

タケシ教授(内科学教授):

今日の議論は非常に実りあるものでした。オスラー先生、フレミング先生、大河内教授、貴重なご意見をありがとうございました。この症例から学ぶべき点は多岐にわたりますが、最も重要なのは診断的思考の柔軟性と複数の疾患の共存可能性を常に念頭に置くことでしょう。また、患者の社会的背景を考慮した診断・治療アプローチの重要性も再確認できました。

はな子先生、あなたはこの症例から多くを学ばれたと思います。今後の診療に活かしてください。

Take Home Message

  1. 「一つの診断で全てを説明しようとする」思考の罠に注意し、複数の疾患の共存を常に考慮する
  2. 梅毒は「偉大なる模倣者」として様々な臨床像を呈するが、特徴的な発疹を見逃さないことが重要
  3. 静脈内薬物使用者では、血行性感染症のリスクが高く、細菌性関節炎を念頭に置く
  4. 患者の社会的背景やリスク行動を考慮し、標準治療を個別化する柔軟性が重要
  5. 感染症間の病理学的相互作用を理解することで、複雑な臨床像を適切に解釈できる
  6. 初回受診時のリスク評価と適切なスクリーニング検査が早期診断につながる

スライド形式にすると読みやすいですね、対訳も行ってもらいました。


Traveling Companions: 梅毒とMRSA化膿性関節炎の共存症例(日英対訳)
The New England Journal of Medicine
Rachel K. Gardner, M.D., Daniel A. Solomon, M.D., Allison S. Bloom, M.D., Yee-Ping Sun, M.D., and Bruce D. Levy, M.D.

Traveling Companions / 旅する仲間たち

Clinical Problem-Solving

Caren G. Solomon, M.D., M.P.H., Editor

臨床問題解決

編集: Caren G. Solomon, M.D., M.P.H.

In this Journal feature, information about a real patient is presented in stages (boldface type) to an expert clinician, who responds to the information by sharing relevant background and reasoning with the reader (regular type). The authors’ commentary follows.

本ジャーナルの特集では、実際の患者に関する情報が段階的に(太字で)専門医に提示され、専門医はその情報に対して関連する背景や推論を読者と共有します(通常の書体)。著者のコメントが続きます。

Case Presentation – Part 1 / 症例提示 – 第1部

A 29-year-old man presented to the emergency department with fever, chills, and elbow pain and swelling. He reported having multiple male sexual partners and using injection drugs. One month earlier, fever, chills, and right ankle pain had developed. At that time, he was evaluated in the emergency department of another hospital; the only available information from the other hospital was a radiograph of his ankle, which showed no fracture. His symptoms were managed with supportive care, and they resolved over the course of a few days. Two days before the current presentation, his fever and chills recurred, followed by pain and swelling in his left elbow. His roommate had received a diagnosis of shigellosis 3 weeks earlier; this patient had not had diarrhea.

29歳男性が発熱、悪寒、肘の痛みと腫れを主訴に救急外来を受診した。患者は複数の男性パートナーとの性的関係と注射薬物の使用を報告した。1ヶ月前に発熱、悪寒、右足首の痛みが発症した。その時、別の病院の救急外来で評価され、その病院から得られた唯一の情報は足首のX線写真で、骨折は認められなかった。症状は支持療法で管理され、数日で改善した。今回の受診の2日前に発熱と悪寒が再発し、その後左肘の痛みと腫れが出現した。患者のルームメイトは3週間前に細菌性赤痢と診断されていたが、この患者に下痢はなかった。

The subacute presentation of fever and polyarticular arthritis is suggestive of infection, especially in a patient with underlying risk factors including sexual exposures and injection-drug use. Sexually transmitted infections (STIs) such as human immunodeficiency virus (HIV) infection, syphilis, and gonorrhea may cause arthritis. Reactive arthritis — perhaps caused by chlamydia or shigellosis — should also be considered; chlamydia is more likely to occur without diarrhea than shigellosis. The reduction in pain in his right ankle before the involvement of his left elbow suggests a migratory pattern. Migratory polyarthritis can occur with infections or rheumatic diseases.

発熱と多関節炎の亜急性の症状は、特に性的接触や注射薬物使用などの基礎的なリスク因子を持つ患者では感染を示唆します。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、梅毒、淋病などの性感染症(STI)が関節炎を引き起こす可能性があります。クラミジアや細菌性赤痢によって引き起こされる可能性のある反応性関節炎も考慮すべきです。クラミジアは細菌性赤痢よりも下痢なしで発症する可能性が高いです。左肘の症状が現れる前に右足首の痛みが軽減したことは、移動性のパターンを示唆しています。移動性多関節炎は感染症やリウマチ性疾患で起こり得ます。

Case Presentation – Part 2 / 症例提示 – 第2部

The patient also reported a nonpruritic and nonpainful rash on his left hand, both arms, chest, and back that had appeared the day before the current presentation. Testing for severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 antigen was negative. The patient had no known drug allergies. His grandmother had rheumatoid arthritis; there was no other family history of autoimmune disease. He spent limited time outdoors or around animals. He reported no recent travel outside New England.

患者はまた、今回の受診の前日に出現した左手、両腕、胸部、背中の非掻痒性で無痛性の発疹を報告した。重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2抗原検査は陰性だった。患者には既知の薬物アレルギーはなかった。祖母にリウマチ性関節炎の既往があったが、他に自己免疫疾患の家族歴はなかった。屋外や動物の周りで過ごす時間は限られていた。ニューイングランド地方外への最近の旅行は報告されなかった。

His rash, fever, and arthritis suggest the possibility of an underlying STI. Early secondary syphilis is manifested by a transitory macular rash on the torso and limbs, whereas late secondary syphilis is often characterized by a nonpruritic morbilliform or pustular rash on the palms and soles. Disseminated gonococcal infections are commonly associated with a diffuse, nonblanching petechial or pustular rash on the torso and limbs. Infection with salmonella, campylobacter, or yersinia (among others, including chlamydia and shigella, as previously noted) can precipitate reactive arthritis, which is associated with hyperkeratotic lesions on the palms and soles. Lyme disease should also be considered, although the classic associated skin manifestation is a targetoid lesion. An autoimmune disease, such as systemic lupus erythematosus or vasculitis, is a possibility, owing to the patient’s family history. Cancer and drug reactions should always be considered but are unlikely, given the acute time course and the absence of use of new medications.

発疹、発熱、関節炎は、基礎となる性感染症の可能性を示唆しています。早期二期梅毒は胴体と四肢に一過性の斑状発疹として現れ、一方、後期二期梅毒はしばしば手掌と足底に非掻痒性の麻疹様または膿疱性発疹が特徴的です。播種性淋菌感染症は通常、胴体と四肢に広がる非退色性の点状出血または膿疱性発疹を伴います。サルモネラ、カンピロバクター、エルシニア(前述のクラミジアや赤痢菌を含む他の菌)による感染は反応性関節炎を引き起こす可能性があり、これは手掌と足底の過角化性病変を伴います。ライム病も考慮すべきですが、典型的な皮膚症状は標的様病変です。患者の家族歴から、全身性エリテマトーデスや血管炎などの自己免疫疾患の可能性もあります。がんや薬物反応も常に考慮すべきですが、急性の経過と新しい薬の使用がないことを考えると可能性は低いでしょう。

Case Presentation – Part 3 / 症例提示 – 第3部

The patient reported using intravenous methamphetamines, which he injected twice monthly into his antecubital fossae. His last injection, which had been in his right arm, was 2 weeks earlier. He occasionally reused his own needles, but he never shared injection supplies with others. He reported that he did not drink alcohol or use tobacco or other drugs.

患者は静脈内メタンフェタミンの使用を報告し、月に2回肘窩に注射していた。最後の注射は2週間前で、右腕に行われていた。彼は時々自分の針を再使用することがあったが、注射用具を他人と共有することはなかった。アルコール、タバコ、その他の薬物は使用していないと報告した。

His drug use puts him at risk for injection-site infections. Local infections are usually limited to the skin and soft tissue. Septic arthritis resulting from injection-drug use occurs through direct inoculation of bacteria into the bloodstream or through spread from a soft-tissue infection into a local vascular bed. Reuse of needles increases the risk of soft-tissue infections. Sharing injection supplies increases the risk of bloodborne infections such as HIV infection, hepatitis B virus infection, and hepatitis C virus infection. In addition, adulterants in drugs can cause rashes at injection sites, although they classically cause sores and ulcers.

薬物使用により注射部位の感染リスクが高まります。局所感染は通常、皮膚や軟部組織に限られます。注射薬物使用による化膿性関節炎は、細菌が血流に直接接種されるか、軟部組織感染から局所の血管床に広がることで発生します。針の再使用は軟部組織感染のリスクを高めます。注射用具の共有はHIV感染、B型肝炎ウイルス感染、C型肝炎ウイルス感染などの血液感染症のリスクを高めます。さらに、薬物中の添加物は注射部位に発疹を引き起こす可能性がありますが、典型的には痛みや潰瘍を引き起こします。

Case Presentation – Part 4 / 症例提示 – 第4部

The patient was sexually active with multiple male partners. He engaged in both insertive and receptive oral and anal sex. His last sexual encounter was 2 months before the current presentation. He took daily emtricitabine–tenofovir disoproxil fumarate for preexposure prophylaxis against HIV infection. He did not use condoms and did not take doxycycline for postexposure prophylaxis. He had no history of STIs. He reported no diarrhea, dysuria, abdominal pain, nausea, vomiting, or vision changes.

患者は複数の男性パートナーと性的に活発であった。挿入型と受容型の両方の口腔性交と肛門性交を行っていた。最後の性的接触は今回の受診の2ヶ月前であった。HIV感染に対する曝露前予防としてエムトリシタビン-テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を毎日服用していた。コンドームは使用せず、曝露後予防としてドキシサイクリンも服用していなかった。性感染症の既往はなかった。下痢、排尿痛、腹痛、吐き気、嘔吐、視力の変化は報告されなかった。

Although his use of emtricitabine–tenofovir disoproxil fumarate reduces his risk of HIV infection, acute or chronic HIV infection remains on the differential diagnosis; a fourth-generation antigen–antibody assay and a polymerase-chain-reaction (PCR) assay for HIV RNA (to assess the viral load) should be performed. His lack of condom use during sexual activity increases his risk of acute or chronic HIV infection and other STIs. He should be screened for syphilis, as well as for gonorrhea and chlamydia at all potential sites of infection on the basis of his sexual activity. Postexposure prophylaxis with doxycycline may be considered for future protection against bacterial STIs.

エムトリシタビン-テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩の使用によりHIV感染のリスクは低減されていますが、急性または慢性HIV感染症は鑑別診断に残っています。第4世代抗原-抗体検査およびHIV RNA(ウイルス量を評価するため)のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査を実施すべきです。性行為中のコンドーム不使用は、急性または慢性HIV感染症および他の性感染症のリスクを高めています。彼の性行為に基づいて、すべての潜在的な感染部位で梅毒、淋病、クラミジアのスクリーニングを行うべきです。細菌性性感染症に対する将来の保護のために、ドキシサイクリンによる曝露後予防を検討することができます。

Case Presentation – Part 5 / 症例提示 – 第5部

On physical examination, the patient was afebrile. His heart rate was 80 beats per minute, his blood pressure 109/64 mm Hg, his respiratory rate 18 breaths per minute, and his oxygen saturation 99% while he was breathing ambient air. He had no palpable lymphadenopathy. Cardiac, pulmonary, and abdominal examinations were unremarkable. The posterior aspect of his left elbow was moderately swollen and tender on palpation. There was no erythema. The range of motion of his left elbow was limited by pain. His right ankle was minimally swollen, with no tenderness or erythema. No swelling, tenderness, or erythema was present in any of his other joints. There was no skin breakdown or stigmata of intravenous drug use. A diffuse, faint, erythematous, nonblanching macular rash was observed on his chest, back, and arms but was absent on his palms and soles (Fig. 1). He had no nail changes. No focal neurologic findings were present. A genital examination was deferred owing to the patient’s preference and the absence of symptoms.

身体診察では、患者に発熱はなかった。心拍数は毎分80回、血圧は109/64 mmHg、呼吸数は毎分18回、室内気での酸素飽和度は99%だった。触診可能なリンパ節腫脹はなかった。心臓、肺、腹部の診察に特記すべき所見はなかった。左肘の後部は中程度に腫脹し、触診で圧痛があった。発赤はなかった。左肘の可動域は痛みにより制限されていた。右足首はわずかに腫脹していたが、圧痛や発赤はなかった。他の関節には腫脹、圧痛、発赤は見られなかった。皮膚の破綻や静脈内薬物使用の痕跡はなかった。胸部、背中、腕に広がる淡い紅斑性、非退色性の斑状発疹が観察されたが、手掌と足底にはなかった(図1)。爪の変化はなかった。局所的な神経学的所見は認められなかった。生殖器の診察は、患者の希望と症状がないことから延期された。

Taken together, the generalized, diffuse rash and the arthritis in his left elbow suggest a systemic inflammatory process. Although infective endocarditis should be considered, given the patient’s history of injection-drug use, no physical examination findings were consistent with such a condition (i.e., no new murmurs, splinter hemorrhages, Janeway lesions, or Osler nodes were present).

全身性の広範囲な発疹と左肘の関節炎を総合すると、全身性炎症プロセスが示唆されます。患者の注射薬物使用歴から感染性心内膜炎を考慮すべきですが、身体所見はそのような状態と一致していませんでした(すなわち、新しい心雑音、線状出血、ジェーンウェイ病変、オスラー結節は存在しませんでした)。

Figure 1. Clinical Photograph of Rash.

A photograph shows a diffuse, faint, erythematous, nonblanching macular rash on the patient’s back. The rash was also present on his chest and arms but was not seen in other locations.

Case Presentation – Part 6 / 症例提示 – 第6部

His white-cell count was 8000 per microliter; 44% of the cells were neutrophils and 44% were lymphocytes). His hemoglobin level was 12.4 g per deciliter, and his platelet count was 330,000 per microliter. A comprehensive metabolic panel was normal. The C-reactive protein level was elevated (119 mg per liter; normal value, <10), as was the erythrocyte sedimentation rate (42 mm per hour; normal value, <15). Blood testing for HIV antigen and antibodies was negative; a PCR assay for HIV RNA was also negative. Blood tests for hepatitis A virus IgM, hepatitis B virus core IgM, hepatitis B virus surface antigen, and hepatitis C virus antibodies were all negative. PCR testing for babesia, ehrlichia, and anaplasma was negative. Lyme disease antibodies were not detected. Antinuclear antibody and anticyclic citrullinated peptide antibody tests were negative. A stool culture for campylobacter species, shigella species, and enterovirus was negative, as was testing of a stool specimen for Shiga toxin.

A radiograph showed mild soft-tissue swelling over the posterior aspect of the left elbow (Fig. 2A). A radiograph of the right ankle showed mild soft-tissue swelling and suggested the presence of a small tibiotalar joint effusion (Fig. 2B). A transthoracic echocardiogram showed no vegetations or valvular dysfunction.

白血球数は8000/μL(好中球44%、リンパ球44%)。ヘモグロビン値は12.4 g/dL、血小板数は330,000/μLだった。包括的代謝パネルは正常だった。C反応性タンパク質値は上昇していた(119 mg/L;正常値<10)、赤血球沈降速度も上昇していた(42 mm/時間;正常値<15)。HIV抗原および抗体の血液検査は陰性で、HIV RNAのPCR検査も陰性だった。A型肝炎ウイルスIgM、B型肝炎ウイルスコアIgM、B型肝炎ウイルス表面抗原、C型肝炎ウイルス抗体の血液検査はすべて陰性だった。バベシア、エールリヒア、アナプラズマのPCR検査は陰性だった。ライム病抗体は検出されなかった。抗核抗体および抗環状シトルリン化ペプチド抗体検査は陰性だった。カンピロバクター属、赤痢菌属、エンテロウイルスの便培養は陰性で、志賀毒素の便検体検査も陰性だった。

X線写真では左肘の後部に軽度の軟部組織腫脹が見られた(図2A)。右足首のX線写真では軽度の軟部組織腫脹と小さな脛骨距骨関節液貯留の存在が示唆された(図2B)。経胸壁心エコー図では植生物や弁機能不全は認められなかった。

Figure 2. Radiographs of the Elbow and Ankle.

A radiograph of the left elbow (Panel A) shows no displaced fractures, as well as normal alignment and normal joint spaces. No effusions are seen. Mild swelling is present over the posterior aspect of the elbow (arrow). A radiograph of the right ankle (Panel B) shows no displaced fractures, along with normal alignment and normal joint spaces. Mild soft-tissue swelling is noted. In addition, a subtle soft-tissue density suggestive of a possible small tibiotalar joint effusion is seen (arrow).

Case Presentation – Part 7 / 症例提示 – 第7部

Tests for chlamydia and gonorrhea that were performed on a urine sample, an oropharyngeal swab, and a rectal swab were negative. A blood test for treponemal antibodies was positive, and a rapid plasma reagin (RPR) test was positive at a titer of 1:8. The patient was treated with a single dose of penicillin (2.4 million units) administered intramuscularly.

尿サンプル、咽頭拭い液、直腸拭い液で実施されたクラミジアと淋菌の検査は陰性だった。トレポネーマ抗体の血液検査は陽性で、迅速血漿レアギン(RPR)検査は力価1:8で陽性だった。患者は筋肉内に投与されたペニシリン(240万単位)の単回投与で治療された。

The positive treponemal antibody and RPR tests confirm the diagnosis of syphilis. The patient’s fever and diffuse macular rash are consistent with secondary syphilis, and his arthritis most likely reflects hematogenous spread. Elevated levels of inflammatory markers are consistent with secondary syphilis but are nonspecific. A single intramuscular injection of penicillin is highly effective for the treatment of secondary syphilis.

トレポネーマ抗体陽性とRPR検査陽性により梅毒の診断が確定します。患者の発熱と広範囲の斑状発疹は二期梅毒と一致し、関節炎はおそらく血行性の拡散を反映しています。炎症マーカーの上昇は二期梅毒と一致していますが、非特異的です。ペニシリンの単回筋肉内注射は二期梅毒の治療に非常に効果的です。

Case Presentation – Part 8 / 症例提示 – 第8部

On the second night of admission, his left elbow pain worsened suddenly, and he had new severe pain in his left wrist. His left elbow appeared erythematous, warm, and more swollen. Two sets of blood cultures that had been obtained at the time of admission were negative for bacteremia. Arthrocentesis of the left elbow, left wrist, and right ankle was performed. Analysis of the synovial fluid obtained from his left elbow revealed 84,090 white cells per microliter, 91% of which were neutrophils. Analysis of the fluid from his left wrist revealed 220 white cells per microliter, 34% of which were neutrophils (clotted aspirate), and analysis of the sample from his right ankle showed 460 white cells per microliter, 45% of which were neutrophils. The samples obtained from the elbow and wrist were purulent, but the sample obtained from the ankle showed no purulence. Gram’s staining of the synovial fluid from his left elbow revealed gram-positive cocci. The Gram’s stains of the fluid from his left wrist and right ankle were negative. No crystals were noted. His left elbow and left wrist were irrigated and débrided, and treatment with ceftriaxone and vancomycin was initiated.

入院2日目の夜、左肘の痛みが突然悪化し、左手首に新たな激しい痛みが生じた。左肘は発赤し、温かく、さらに腫れていた。入院時に採取された2セットの血液培養は菌血症陰性だった。左肘、左手首、右足首の関節穿刺が実施された。左肘から得られた滑液の分析では、白血球数84,090/μL、そのうち91%が好中球だった。左手首からの液体の分析では、白血球数220/μL、そのうち34%が好中球(凝固した吸引物)で、右足首からのサンプルの分析では、白血球数460/μL、そのうち45%が好中球だった。肘と手首から得られたサンプルは膿性だったが、足首から得られたサンプルには膿性はなかった。左肘の滑液のグラム染色ではグラム陽性球菌が認められた。左手首と右足首の液体のグラム染色は陰性だった。結晶は認められなかった。左肘と左手首は洗浄・デブリドマンされ、セフトリアキソンとバンコマイシンによる治療が開始された。

The fact that the synovial fluid sample obtained from the patient’s left elbow contained more than 50,000 white cells per microliter is highly suggestive of septic arthritis. However, low white-cell counts in synovial fluid do not rule out septic arthritis and may be seen in patients with disseminated gonococcal infection, a low white-cell count in peripheral blood, or joint replacement. Empirical treatment with antibiotic agents should cover gram-positive cocci — some of the most common types of bacteria — in addition to gram-negative organisms such as Neisseria gonorrhoeae, as well as Pseudomonas aeruginosa (which is relevant given the patient’s history of injection-drug use).

患者の左肘から得られた滑液サンプルに50,000/μLを超える白血球が含まれているという事実は、化膿性関節炎を強く示唆しています。しかし、滑液中の白血球数が少ないからといって化膿性関節炎が否定されるわけではなく、播種性淋菌感染症の患者、末梢血の白血球数が少ない患者、または関節置換術を受けた患者で見られることがあります。抗生物質による経験的治療は、グラム陽性球菌(最も一般的な細菌の一種)に加えて、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)などのグラム陰性菌、および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(患者の注射薬物使用歴を考慮すると関連性がある)をカバーすべきです。

Case Presentation – Part 9 / 症例提示 – 第9部

Cultures of the fluid obtained from the left elbow and left wrist grew methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA). Culture of the fluid obtained from the right ankle remained negative. The antibiotics he had been receiving were narrowed to vancomycin, which he received for 5 days. Given his injection-drug use, discharge home with a peripherally inserted central catheter for administration of vancomycin was considered to be unsafe. Instead, he received one intravenous dose of dalbavancin (at a dose of 1.5 g) immediately before discharge, with plans for a second dose 2 weeks later.

左肘と左手首から得られた液体の培養からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が検出された。右足首から得られた液体の培養は陰性のままだった。彼が受けていた抗生物質はバンコマイシンに絞られ、5日間投与された。注射薬物使用歴があるため、バンコマイシン投与のための末梢挿入型中心静脈カテーテルを用いての退院は安全でないと考えられた。代わりに、退院直前にダルババンシン(1.5 gの用量)の静脈内投与を1回受け、2週間後に2回目の投与を計画した。

Although the typical antibiotic treatment for MRSA septic arthritis is a 3-week course of intravenous vancomycin, this approach was avoided in this patient, given his injection-drug use. Dalbavancin, a lipoglycopeptide antibiotic, has excellent MRSA coverage with a very long half-life (approximately 2 weeks), which makes it a great option in this case.

MRSA化膿性関節炎の典型的な抗生物質治療は3週間の静脈内バンコマイシン投与ですが、この患者では注射薬物使用歴があるため、このアプローチは避けられました。リポグリコペプチド系抗生物質であるダルババンシンは、非常に長い半減期(約2週間)を持つMRSAに対する優れたカバー率を持ち、このケースでは絶好の選択肢となります。

Case Presentation – Part 10 / 症例提示 – 第10部

Two weeks after discharge, the patient was doing well, without pain or joint swelling. Given his improvement, the decision was made to defer a second dose of dalbavancin; instead, he received oral doxycycline at a dose of 100 mg twice daily for 1 month.

退院2週間後、患者は痛みや関節の腫れもなく順調だった。改善が見られたため、ダルババンシンの2回目の投与を延期することが決定され、代わりに経口ドキシサイクリン100 mgを1日2回、1ヶ月間服用することになった。

Commentary – Part 1 / コメンタリー – 第1部

This patient presented with fever, chills, arthritis, and a diffuse rash; diagnoses of both secondary syphilis and septic arthritis were made. Clinicians who are presented with a case with disparate signs and symptoms often aim to construct a single unifying diagnosis, according to the law of parsimony. This strategy risks premature closure, and in this case, it delayed diagnosis of the patient’s septic arthritis.

Syphilis is caused by infection with the spirochete Treponema pallidum and is spread through sexual or vertical transmission. The incidence of syphilis has increased since 1950, with a record high of 207,255 cases diagnosed in the United States in 2022. Persons infected with T. pallidum follow a predictable disease course that can be divided into four stages: primary, secondary, latent, and tertiary. Primary and secondary syphilis are the sexually transmissible stages. Primary syphilis is characterized by one — or less commonly, more than one — single painless ulcer (chancre) at the site of inoculation, typically the genitals or the mouth. The usual incubation period is approximately 3 weeks to 3 months. The chancre typically resolves in 2 to 6 weeks, even without antibiotic therapy.

この患者は発熱、悪寒、関節炎、広範囲の発疹を呈し、二期梅毒と化膿性関節炎の両方の診断がなされました。様々な徴候と症状を示す症例に遭遇した臨床医は、しばしば倹約の法則に従って単一の統一的な診断を構築しようとします。この戦略は診断の閉鎖を早めるリスクがあり、この症例では患者の化膿性関節炎の診断が遅れました。

梅毒はスピロヘータのトレポネーマ・パリドゥム(Treponema pallidum)による感染によって引き起こされ、性的または垂直感染によって広がります。梅毒の発生率は1950年以降増加し、2022年には米国で診断された症例が207,255件と記録的な高さとなりました。T. pallidumに感染した人は予測可能な病気の経過をたどり、それは4つの段階に分けることができます:一期、二期、潜伏期、三期。一期と二期の梅毒は性的に伝染する段階です。一期梅毒は典型的には生殖器または口の接種部位に1つ(あるいはそれほど一般的ではありませんが複数の)の無痛性潰瘍(下疳)が特徴です。通常の潜伏期間はおよそ3週間から3ヶ月です。下疳は抗生物質療法がなくても通常2〜6週間で治まります。

Commentary – Part 2 / コメンタリー – 第2部

Secondary syphilis typically manifests with myalgias and a nonpruritic, disseminated, maculopapular rash, often on the palms and soles. Other manifestations may include alopecia, periostitis, hepatitis, nephritis, and (infrequently) arthralgias. This patient’s previous right ankle pain may have arisen from tenosynovitis due to hematogenous spread of T. pallidum into his tendon, as has been described in case reports. Secondary syphilis lasts an average of 3.6 months and then either resolves or evolves into latent (asymptomatic) infection.

The high percentage of patients in whom latent syphilis is diagnosed as compared with earlier stages indicates that many primary and secondary syphilis cases go untreated or undiagnosed. Latent syphilis can last a lifetime or can progress to tertiary syphilis. Natural history studies have shown that tertiary syphilis occurs in 15 to 40% of untreated patients, and onset ranges from 1 year to decades after an initial infection. Tertiary syphilis is classically subdivided into gummatous syphilis (involving skin, bone, or other organs), which accounts for about half of cases; cardiovascular syphilis (e.g., aortic aneurysms, myocarditis, or coronary arteritis), which accounts for about a third of cases; and late neurosyphilis syndromes (e.g., gait impairments, dementia, general paresis, or tabes dorsalis), otic syphilis, or ocular syphilis, which account for the remaining cases.

二期梅毒は典型的には筋肉痛と非掻痒性の広範囲にわたる斑丘疹性発疹(しばしば手掌や足底に現れる)で現れます。他の症状には脱毛、骨膜炎、肝炎、腎炎、および(まれに)関節痛が含まれることがあります。この患者の以前の右足首の痛みは、症例報告で説明されているように、T. pallidumの血行性拡散による腱滑膜炎から生じた可能性があります。二期梅毒は平均3.6ヶ月続き、その後、治まるか潜伏(無症状)感染に進展します。

早期段階と比較して潜伏梅毒と診断される患者の割合が高いことは、多くの一期および二期梅毒症例が未治療または未診断であることを示しています。潜伏梅毒は一生続くことも、三期梅毒に進行することもあります。自然経過の研究では、三期梅毒は未治療患者の15〜40%に発生し、発症は初期感染後1年から数十年にわたることが示されています。三期梅毒は古典的にゴム腫性梅毒(皮膚、骨、またはその他の臓器に関与)、症例の約半分を占める;心血管梅毒(例えば、大動脈瘤、心筋炎、冠動脈炎)、症例の約3分の1を占める;および後期神経梅毒症候群(例えば、歩行障害、認知症、全般性麻痺、または脊髄癆)、耳梅毒、または眼梅毒、残りの症例を占める、の3つに細分されます。

Commentary – Part 3 / コメンタリー – 第3部

Syphilis is diagnosed with the use of treponemal and nontreponemal tests. Both types of tests are needed, since serologic testing (especially nontreponemal tests) can be associated with false positive results. Treponemal tests detect antibodies against T. pallidum; they are highly specific but cannot distinguish active infections from inactive ones. Nontreponemal tests (i.e., the Venereal Disease Research Laboratory test and the RPR test) quantify the amount of antibodies and therefore are useful for detecting active infection and tracking treatment response. Evaluation of nontreponemal titers should be repeated 6 and 12 months after initiation of treatment. With successful treatment, RPR titers should drop by at least a factor of 4 in 6 to 12 months.

Penicillin is the backbone of syphilis treatment. Primary, secondary, and early latent syphilis (infection within the past year) are typically treated with a single intramuscular injection of 2.4 million units of benzathine penicillin G. Late latent and tertiary syphilis are typically treated with three weekly injections of 2.4 million units of benzathine penicillin G. Patients, especially those with early syphilis (i.e., primary, secondary, or early latent syphilis that was acquired within the previous 12 months), should be counseled that fever, chills, myalgias, and headaches may develop within 24 hours after treatment because of cytotoxin release from the breakdown of spirochetes, known as the Jarisch–Herxheimer reaction.

梅毒はトレポネーマ検査と非トレポネーマ検査を用いて診断されます。血清学的検査(特に非トレポネーマ検査)は偽陽性結果と関連する可能性があるため、両方のタイプの検査が必要です。トレポネーマ検査はT. pallidumに対する抗体を検出します;それらは非常に特異的ですが、活動性の感染を非活動性のものから区別することはできません。非トレポネーマ検査(すなわち、性病研究所検査とRPR検査)は抗体の量を定量し、したがって活動性感染の検出と治療反応の追跡に有用です。非トレポネーマ力価の評価は治療開始後6ヶ月と12ヶ月で繰り返す必要があります。治療が成功すると、RPR力価は6〜12ヶ月で少なくとも4倍低下するはずです。

ペニシリンは梅毒治療の基本です。一期、二期、および早期潜伏梅毒(過去1年以内の感染)は通常、ベンザチンペニシリンGの240万単位の単回筋肉内注射で治療されます。後期潜伏梅毒および三期梅毒は通常、ベンザチンペニシリンGの240万単位を週1回、3回注射で治療されます。特に早期梅毒(すなわち、過去12ヶ月以内に獲得された一期、二期、または早期潜伏梅毒)の患者は、スピロヘータの分解からのサイトトキシンの放出によって、ヤーリッシュ-ヘルクスハイマー反応として知られる治療後24時間以内に発熱、悪寒、筋肉痛、頭痛が発生する可能性があることをカウンセリングされるべきです。

Commentary – Part 4 / コメンタリー – 第4部

For patients who cannot receive penicillin owing to an allergy or to drug shortages (as have recently occurred), alternative treatments with cure rates similar to those of penicillin can be used; these include oral doxycycline and intramuscular ceftriaxone. Pregnant patients with a penicillin allergy and patients with neurosyphilis should undergo desensitization followed by penicillin treatment.

The patient’s second diagnosis was septic arthritis. Septic arthritis most frequently arises from occult bacteremia. Small breaks in the skin, such as from intravenous drug use, can allow skin flora (most commonly staphylococcus and streptococcus species) to enter the bloodstream; similarly, gastrointestinal and genitourinary infections can allow predominantly gram-negative species to enter the bloodstream. This patient’s history of intravenous drug use increased his risk of transient bacteremia from direct inoculation of bacteria into his bloodstream or from bacterial entry through minute breaks in his skin. Other recognized risk factors for septic arthritis include preexisting joint disease and immunocompromise. This patient had no known preexisting joint disease, although tenosynovitis due to secondary syphilis may have been susceptible to seeding from transient bacteremia.

アレルギーや薬剤不足(最近発生しているような)のためにペニシリンを投与できない患者に対しては、ペニシリンと同様の治癒率を持つ代替治療を使用することができます;これらには経口ドキシサイクリンと筋肉内セフトリアキソンが含まれます。ペニシリンアレルギーのある妊婦および神経梅毒患者は脱感作を受けた後、ペニシリン治療を受けるべきです。

患者の2つ目の診断は化膿性関節炎でした。化膿性関節炎は最も頻繁に隠れた菌血症から発生します。静脈内薬物使用などによる皮膚の小さな破れは、皮膚常在菌(最も一般的にはブドウ球菌およびレンサ球菌種)が血流に入ることを許可する可能性があります;同様に、胃腸および泌尿生殖器感染は主にグラム陰性菌種が血流に入ることを許可する可能性があります。この患者の静脈内薬物使用歴は、細菌が直接血流に接種されることや、皮膚の微小な破れを通じて細菌が侵入することからの一過性菌血症のリスクを高めました。化膿性関節炎の他の認識されたリスク因子には、既存の関節疾患と免疫不全が含まれます。この患者には既知の既存の関節疾患はありませんでしたが、二期梅毒による腱滑膜炎は一過性菌血症からの播種に感受性があった可能性があります。

Commentary – Part 5 / コメンタリー – 第5部

Septic arthritis is classically manifested by fever and a warm, swollen, exquisitely painful joint; however, in a series involving patients in the United Kingdom who had septic arthritis, only 58% had fever and only approximately half had leukocytosis. Although most of the cases were monoarticular, involvement of more than one joint occurred in up to 20% of the patients and was most common among patients with inflammatory arthritides, immunocompromise, or sustained bacteremia. An elevated erythrocyte sedimentation rate and an elevated C-reactive protein level are very common among patients with septic arthritis but are nonspecific. Blood cultures should be obtained before starting antibiotics, although they are positive in only 50 to 70% of patients with nongonococcal septic arthritis. The most common cause of septic arthritis is S. aureus, followed by streptococcus species.

The evaluation for septic arthritis includes analysis and Gram’s staining of the synovial fluid, aerobic and anaerobic cultures of the synovial fluid, and measurement of the white-cell count and differential count in the synovial fluid. A white-cell count that exceeds 50,000 per microliter is highly suggestive, but not diagnostic, of septic arthritis. Gram’s stains are positive in 60 to 80% of cases, and cultures are positive in more than 90% of cases. No pathognomonic imaging findings are associated with this infection, but baseline plain radiography is recommended to rule out bone or joint disease.

化膿性関節炎は古典的には発熱と温かく腫れた非常に痛い関節によって現れます;しかし、英国の化膿性関節炎患者を含むシリーズでは、発熱があったのは58%のみで、白血球増加症があったのはおよそ半分だけでした。ほとんどの症例が単関節性でしたが、複数の関節の関与は患者の最大20%に発生し、炎症性関節炎、免疫不全、または持続性菌血症の患者で最も一般的でした。赤血球沈降速度の上昇とC反応性タンパク質レベルの上昇は化膿性関節炎患者の間で非常に一般的ですが、非特異的です。血液培養は抗生物質を開始する前に採取されるべきですが、非淋菌性化膿性関節炎患者の50〜70%でしか陽性ではありません。化膿性関節炎の最も一般的な原因はS. aureusで、次にレンサ球菌種です。

化膿性関節炎の評価には、滑液の分析とグラム染色、滑液の好気性および嫌気性培養、滑液中の白血球数と分画の測定が含まれます。1マイクロリットル当たり50,000を超える白血球数は化膿性関節炎を強く示唆しますが、診断的ではありません。グラム染色は症例の60〜80%で陽性で、培養は90%以上の症例で陽性です。この感染症に関連する病理学的な画像所見はありませんが、骨または関節の疾患を除外するためにベースラインの単純X線撮影が推奨されます。

Commentary – Part 6 / コメンタリー – 第6部

Treatment of septic arthritis involves the use of antibiotics, along with joint drainage by means of closed-needle aspiration, arthroscopy, or arthrotomy (an open procedure). Empirical treatment with antibiotics targeting S. aureus (including MRSA) and streptococcus species should be started immediately after obtaining synovial fluid and then tailored on the basis of results of microbiologic testing. Empirical regimens typically include vancomycin or daptomycin (for MRSA coverage) plus a third- or fourth-generation cephalosporin (for gram-negative–organism coverage). For patients with risk factors for pseudomonas infection (e.g., immunosuppression or injection-drug use), a cephalosporin with antipseudomonal activity should be used. Source control by means of surgical débridement or arthrocentesis is vital for joint decompression, removal of bacteria, and improved blood flow. A switch to oral antibiotics with high bioavailability (i.e., fluoroquinolones or doxycycline) after source control is associated with good clinical outcomes and obviates the need for durable intravenous access. In a retrospective observational study, a high cure rate for serious gram-positive infections was observed with dalbavancin, but prospective data comparing dalbavancin with standard care are limited. The typical duration of antibiotic therapy for nongonococcal septic arthritis is 2 to 4 weeks.

化膿性関節炎の治療には、閉鎖針吸引、関節鏡検査、または関節切開術(開放手術)による関節ドレナージとともに、抗生物質の使用が含まれます。S. aureus(MRSAを含む)およびレンサ球菌を標的とした抗生物質による経験的治療は、滑液を採取した後すぐに開始され、その後、微生物学的検査の結果に基づいて調整されるべきです。経験的レジメンには通常、バンコマイシンまたはダプトマイシン(MRSA対応)に加えて、第三または第四世代のセファロスポリン(グラム陰性菌対応)が含まれます。緑膿菌感染のリスク因子(例:免疫抑制または注射薬物使用)を持つ患者には、抗緑膿菌活性を持つセファロスポリンを使用すべきです。外科的デブリドマンまたは関節穿刺による感染源のコントロールは、関節減圧、細菌の除去、および血流改善に不可欠です。感染源コントロール後の高バイオアベイラビリティの経口抗生物質(すなわち、フルオロキノロンまたはドキシサイクリン)への切り替えは良好な臨床転帰と関連しており、持続的な静脈内アクセスの必要性を回避します。後ろ向き観察研究では、ダルババンシンを用いた重度のグラム陽性感染症に対する高い治癒率が観察されましたが、ダルババンシンと標準治療を比較する前向きデータは限られています。非淋菌性化膿性関節炎に対する抗生物質治療の典型的な期間は2〜4週間です。

Commentary – Conclusion / コメンタリー – 結論

This case highlights the importance of considering additional diagnoses when the clinical picture is unclear. Furthermore, this case reminds us to consider the varied clinical manifestations of syphilis, for which it has earned the name “the great imitator,” as well as the many complications associated with injection-drug use.

この症例は、臨床像が不明確な場合に追加の診断を考慮することの重要性を強調しています。さらに、この症例は、梅毒の様々な臨床症状を考慮することを私たちに思い出させます。梅毒はそのために「偉大なる模倣者」という名前を獲得しており、注射薬物使用に関連する多くの合併症も同様です。

Key Lessons

  • Clinicians should avoid the trap of trying to explain all symptoms with a single diagnosis, especially in patients with complex risk factors.
  • Syphilis presents with varied clinical manifestations and may affect multiple organ systems, including the musculoskeletal system.
  • Injection drug use increases the risk of various infections, including septic arthritis, often through transient bacteremia.
  • Treatment plans must be individualized, taking into account patient’s social circumstances and risk behaviors.
  • The title “Traveling Companions” aptly describes how multiple infections can coexist and interact in a single patient.

重要な教訓

  • 臨床医は、特に複雑なリスク要因を持つ患者において、すべての症状を単一の診断で説明しようとする罠を避けるべきです。
  • 梅毒は様々な臨床症状を呈し、筋骨格系を含む複数の臓器系に影響を与える可能性があります。
  • 注射薬物使用は、多くの場合一過性菌血症を通じて、化膿性関節炎を含む様々な感染症のリスクを高めます。
  • 治療計画は、患者の社会的状況やリスク行動を考慮して個別化する必要があります。
  • タイトル「旅する仲間たち」は、複数の感染症が一人の患者の中で共存し相互作用する様子を適切に表現しています。

References / 引用文献

  1. U.S. Department of Health and Human Services. HHS announces department actions to slow surging syphilis epidemic.
  2. Ghanem KG, Ram S, Rice PA. The modern epidemic of syphilis. N Engl J Med 2020;382:845-54.
  3. Peeling RW, Mabey D, Kamb ML, Chen X-S, Radolf JD, Benzaken AS. Syphilis. Nat Rev Dis Primers 2017;3:17073.
  4. Ratnaraj F, Brooks D, Walton M, Nagabandi A, Abu Hazeem M. Forgotten but not gone! Syphilis induced tenosynovitis. Case Rep Infect Dis 2016;2016:7420938.
  5. Garnett GP, Aral SO, Hoyle DV, Cates W Jr, Anderson RM. The natural history of syphilis: implications for the transmission dynamics and control of infection. Sex Transm Dis 1997;24:185-200.
  6. Satyaputra F, Hendry S, Braddick M, Sivabalan P, Norton R. The laboratory diagnosis of syphilis. J Clin Microbiol 2021;59(10):e0010021.
  7. Clement ME, Okeke NL, Hicks CB. Treatment of syphilis: a systematic review. JAMA 2014;312:1905-17.
  8. Ross JJ. Septic arthritis of native joints. Infect Dis Clin North Am 2017;31:203-18.
  9. Earwood JS, Walker TR, Sue GJC. Septic arthritis: diagnosis and treatment. Am Fam Physician 2021;104:589-97.
  10. Li H-K, Rombach I, Zambellas R, et al. Oral versus intravenous antibiotics for bone and joint infection. N Engl J Med 2019;380:425-36.

読みやすいですね、いつもはReadableで対訳を作成しているのですが両者の和約に多少の違いがあるので相違点を比較してもらいました。

Claudeの対訳とReadableの対訳の比較

Claudeの対訳とReadableの対訳の比較分析

翻訳の正確性について

Claudeが作成した対訳と、Readableから提供された対訳を比較すると、基本的には両者とも原文の意味を適切に日本語に翻訳できています。しかし、いくつかの違いが見られます。

専門用語の翻訳

医学用語の翻訳において、両者に若干の違いが見られます:

英語原文 Claudeの翻訳 Readableの翻訳 評価
Septic arthritis 化膿性関節炎 敗血症性関節炎 「化膿性関節炎」の方が日本の医学界では一般的に使用される訳語です
Treponema pallidum トレポネーマ・パリドゥム トレポネーマ パリドゥム どちらも正確ですが、学術的にはClaudeの訳の方が正式です
RPR test RPR検査 RPR検査 両者とも同じ訳語で適切です

全体的に、両者とも専門用語の翻訳は適切に行われていますが、「Septic arthritis」の訳語において、Claudeの「化膿性関節炎」の方が日本の医学文献で一般的に使用される表現です。「敗血症性関節炎」という訳も意味としては間違いではありませんが、日本語の医学用語としては「化膿性関節炎」の方が正確です。

文章構造と読みやすさ

文章の構造や読みやすさについて、両者の翻訳スタイルに違いが見られます:

例:症例説明部分

英語原文: “A 29-year-old man presented to the emergency department with fever, chills, and elbow pain and swelling. He reported having multiple male sexual partners and using injection drugs.”

Claudeの翻訳: 「29歳男性が発熱、悪寒、肘の痛みと腫れを主訴に救急外来を受診した。患者は複数の男性パートナーとの性的関係と注射薬物の使用を報告した。」

Readableの翻訳: 「29歳の男性が発熱、悪寒、肘の疼痛と腫脹で救急部を受診した。彼は複数の性的パートナーがおり、注射薬を使用していると報告した。」

両者の翻訳を比較すると:

  • Claudeの翻訳は「主訴に」という医学的な表現を用いており、より専門的な文体になっています
  • Readableの翻訳は「疼痛と腫脹」と医学用語を使用していますが、文体はやや簡素です
  • 「multiple male sexual partners」の訳において、Claudeは「複数の男性パートナーとの性的関係」と明確に性別を含めていますが、Readableは「複数の性的パートナー」と性別情報が抜け落ちています

この例においては、Claudeの翻訳の方がより原文に忠実で、医学論文の文体としても適切です。

診断過程の説明部分

診断過程の説明部分においても、いくつかの違いが見られます:

例:二期梅毒の症状説明

英語原文: “Secondary syphilis typically manifests with myalgias and a nonpruritic, disseminated, maculopapular rash, often on the palms and soles.”

Claudeの翻訳: 「二期梅毒は典型的には筋肉痛と非掻痒性の広範囲にわたる斑丘疹性発疹(しばしば手掌や足底に現れる)で現れます。」

Readableの翻訳: 「二次梅毒は、典型的には、筋肉痛と、痒みのない、播種性の、斑状丘疹状の発疹が、しばしば手掌と足底に現れます。」

両者の翻訳を比較すると:

  • 「Secondary syphilis」の訳語として、Claudeは「二期梅毒」、Readableは「二次梅毒」を使用していますが、日本の医学文献では一般的に「二期梅毒」が使われます
  • Claudeの訳は文の流れが自然ですが、Readableの訳はコンマの多用により、やや読みにくい印象があります
  • 「maculopapular rash」について、両者とも「斑丘疹性発疹」または「斑状丘疹状の発疹」と適切に訳していますが、Claudeの方がより簡潔です

この例では、Claudeの翻訳の方が日本語の医学文献として読みやすく、専門用語の選択も適切です。

治療過程の説明

治療過程に関する説明部分にも違いが見られます:

例:ダルババンシンの使用理由

英語原文: “Although the typical antibiotic treatment for MRSA septic arthritis is a 3-week course of intravenous vancomycin, this approach was avoided in this patient, given his injection-drug use. Dalbavancin, a lipoglycopeptide antibiotic, has excellent MRSA coverage with a very long half-life (approximately 2 weeks), which makes it a great option in this case.”

Claudeの翻訳: 「MRSA化膿性関節炎の典型的な抗生物質治療は3週間の静脈内バンコマイシン投与ですが、この患者では注射薬物使用歴があるため、このアプローチは避けられました。リポグリコペプチド系抗生物質であるダルババンシンは、非常に長い半減期(約2週間)を持つMRSAに対する優れたカバー率を持ち、このケースでは絶好の選択肢となります。」

Readableの翻訳: 「MRSA敗血症性関節炎に対する典型的な抗生物質治療は3週間のバンコマイシン静注コースであるが、この患者では注射薬を使用していたため、このアプローチは避けた。リポグリコペプチド系抗生物質であるダルババンシンは、半減期が非常に長く(約2週間)、MRSAに対するカバー力に優れている。」

両者の翻訳を比較すると:

  • Claudeの訳は「静脈内バンコマイシン投与」、Readableは「バンコマイシン静注コース」と訳していますが、どちらも適切です
  • Claudeの訳は「注射薬物使用歴」と過去の使用歴であることを明確にしていますが、Readableの訳は「注射薬を使用していた」とやや曖昧です
  • 「excellent MRSA coverage」の訳として、Claudeは「MRSAに対する優れたカバー率」、Readableは「MRSAに対するカバー力に優れている」と訳していますが、医学的には両者とも適切です
  • 全体として、Claudeの訳はより丁寧な文体であるのに対し、Readableの訳はよりシンプルで簡潔です

この例では、両者とも内容は適切に訳されていますが、Claudeの訳の方が原文のニュアンスをより正確に反映しています。

総合評価

Claudeの対訳とReadableの対訳を比較した結果、以下の点が明らかになりました:

  1. 専門用語の選択: Claudeの対訳の方が日本の医学界で一般的に使用される専門用語を適切に選択している傾向があります。特に「化膿性関節炎」や「二期梅毒」などの重要な専門用語において、より正確です。
  2. 文章構造と読みやすさ: Claudeの対訳はより自然な日本語の文体で、医学論文として読みやすい構造になっています。一方、Readableの対訳はコンマの多用や断片的な文構造があり、やや読みにくい箇所があります。
  3. 情報の正確性: 原文のすべての情報を伝える点では、Claudeの対訳の方がより正確です。特に性別情報などの重要な詳細を適切に訳しています。
  4. 文体の一貫性: Claudeの対訳は医学論文らしい専門的で一貫した文体が維持されていますが、Readableの対訳はやや不統一な印象があります。

総合すると、医学論文の正確な翻訳として、Claudeの対訳の方がより適切であると評価できます。専門用語の選択、文章構造、情報の正確性、文体の一貫性のすべての面でReadableの対訳よりも優れています。ただし、Readableの対訳も基本的な内容は伝えられており、大きな誤訳はありません。


次にこの論文からクイズを作ってもらいました。

「旅する仲間たち」症例クイズ

Clinical Case Quiz: “Traveling Companions”

Test your knowledge about the coexistence of syphilis and MRSA septic arthritis!

問題 1: 初期評価

29歳男性の患者が発熱、悪寒、左肘の痛みと腫れを主訴に救急外来を受診しました。患者は複数の男性パートナーと性的関係があり、注射薬物を使用しています。この患者の臨床症状を考えると、最初に考慮すべき診断は何ですか?

  • A) リウマチ性関節炎
  • B) 痛風
  • C) 性感染症による反応性関節炎
  • D) 感染性心内膜炎

正解: C) 性感染症による反応性関節炎

この患者の発熱、多関節痛、複数の男性パートナーとの性的接触歴、および注射薬物使用歴を考慮すると、性感染症(STI)による反応性関節炎が最初に考慮すべき診断です。特に、梅毒、淋病、クラミジア感染などのSTIは関節炎を引き起こす可能性があります。また、STIリスクが高い集団では、感染性心内膜炎も鑑別診断に含まれますが、この時点では関節症状が主であり、心内膜炎の典型的な所見(新しい心雑音など)がないため、STIによる反応性関節炎がより可能性が高いです。

問題 2: 診断検査

この患者から得られた滑液が左肘から84,090/μLの白血球数(91%が好中球)を示し、グラム染色でグラム陽性球菌が検出されました。この所見に基づく最も可能性の高い診断は何ですか?

  • A) 腱滑膜炎
  • B) 化膿性関節炎
  • C) 結晶誘発性関節炎
  • D) 反応性関節炎

正解: B) 化膿性関節炎

滑液中の白血球数が50,000/μLを超え、好中球優位(91%)で、グラム染色で細菌(グラム陽性球菌)が検出されたことは、化膿性関節炎の診断を強く示唆します。これは細菌感染による関節の急性炎症です。この症例では、その後の培養でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が同定されました。結晶誘発性関節炎では結晶が検出され、反応性関節炎では通常、滑液中の白血球数はこれより少なく、細菌は直接検出されません。腱滑膜炎は腱鞘の炎症であり、この症例の関節液所見とは一致しません。

問題 3: 梅毒の診断

患者のトレポネーマ抗体検査が陽性で、RPR検査が力価1:8で陽性でした。身体所見として胸部、背中、腕に広がる淡い紅斑性・非退色性斑状発疹が認められました。これらの所見から、梅毒のどの段階が最も考えられますか?

  • A) 一期梅毒
  • B) 二期梅毒
  • C) 潜伏梅毒
  • D) 三期梅毒

正解: B) 二期梅毒

トレポネーマ抗体とRPR検査の両方が陽性で、全身に広がる非掻痒性の斑状発疹があることは、二期梅毒に典型的です。二期梅毒は通常、一期梅毒の下疳が治癒した後(感染から約4〜10週間後)に発生し、全身性の症状(発熱、全身倦怠感など)と広範囲の発疹を特徴とします。一期梅毒は局所的な無痛性潰瘍(下疳)を特徴とし、潜伏梅毒は血清学的検査は陽性ですが症状がなく、三期梅毒はゴム腫形成、心血管系症状、または神経系症状を伴う後期の合併症を特徴とします。

問題 4: 治療アプローチ

MRSA化膿性関節炎と診断された注射薬物使用歴のあるこの患者に対して、治療チームはバンコマイシンを5日間投与した後、退院前にダルババンシン1.5gの単回投与を選択しました。この治療アプローチが選択された主な理由は何ですか?

  • A) バンコマイシンに対する薬物アレルギーがあったため
  • B) ダルババンシンはMRSAに対してより効果的だったため
  • C) 注射薬物使用者への中心静脈カテーテル(PICC)挿入が安全上の懸念があったため
  • D) 患者がバンコマイシンに対する耐性を示したため

正解: C) 注射薬物使用者への中心静脈カテーテル(PICC)挿入が安全上の懸念があったため

通常、MRSA化膿性関節炎の治療には3週間の静脈内バンコマイシン投与が標準ですが、この患者の場合、注射薬物使用歴があるため、バンコマイシン投与のための末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)を用いての退院は安全上の懸念がありました。ダルババンシンはリポグリコペプチド系抗生物質で、非常に長い半減期(約2週間)を持つため、単回または2回の投与で十分な効果が得られます。これにより、長期的な静脈アクセスの必要性をなくし、薬物使用歴のある患者でのカテーテル関連合併症のリスクを回避することができます。この治療選択は、患者の社会的背景を考慮した個別化された治療アプローチの良い例です。

問題 5: 臨床的教訓

この症例のタイトル「Traveling Companions(旅する仲間たち)」の最も適切な解釈は何ですか?

  • A) 患者が複数のパートナーと性的接触を持っていたことを指す
  • B) 梅毒スピロヘータが血流を通じて体内を移動することを表現している
  • C) 複数の感染症(梅毒とMRSA感染症)が同時に存在し相互作用していることを象徴している
  • D) 患者が地域間を移動し、複数の病院で治療を受けたことを示す

正解: C) 複数の感染症(梅毒とMRSA感染症)が同時に存在し相互作用していることを象徴している

「Traveling Companions(旅する仲間たち)」というタイトルは、この患者に同時に存在していた二つの異なる感染症(二期梅毒とMRSA化膿性関節炎)を象徴的に表現しています。これらの感染症は患者の体内で「共に旅をしている」だけでなく、相互に影響し合っている可能性があります。特に、梅毒による腱滑膜炎が先行して存在していた場合、その部位がMRSA感染の足場となった可能性があります。このタイトルは、医学診断において「オッカムの剃刀(単一の診断で全てを説明しようとする原則)」を過度に適用することの危険性を教えています。複雑な症例では、複数の疾患が共存する可能性を常に考慮すべきという重要な臨床的教訓を含んでいます。


症例の診断に至る過程をフローチャートで図示してもらいます。

flowchart TD
    A[患者来院:\n29歳男性\n発熱・悪寒・左肘の痛みと腫れ] --> B{リスク因子の評価}
    
    B --> |複数の男性パートナー\n注射薬物使用| C[性感染症のスクリーニング]
    B --> |発疹の存在| D[皮膚所見の評価]
    B --> |関節症状| E[関節評価]
    
    C --> C1[トレポネーマ抗体検査\nRPR検査]
    C --> C2[HIV検査\n肝炎ウイルス検査]
    C --> C3[淋菌・クラミジア検査]
    
    D --> D1[広範囲の斑状発疹\n(胸部・背中・腕)]
    
    E --> E1[X線検査]
    E --> E2[炎症マーカー\nCRP・赤沈]
    
    C1 --> |陽性| F[梅毒の診断]
    C2 --> |陰性| G[HIV・肝炎は否定的]
    C3 --> |陰性| H[淋菌・クラミジアは否定的]
    
    D1 --> I[二期梅毒を示唆]
    
    E1 --> |軟部組織腫脹| J[関節穿刺の検討]
    E2 --> |上昇| K[全身性炎症の存在]
    
    F --> L[二期梅毒の確定診断]
    L --> M[ペニシリンG筋注\n単回投与]
    
    J --> |入院後の症状悪化| N[関節穿刺実施]
    
    N --> O[左肘関節液の分析:\n白血球84,090/μL\n好中球91%\nグラム陽性球菌]
    
    O --> P[化膿性関節炎の診断]
    P --> Q[関節洗浄・デブリドマン\n経験的抗生物質投与]
    
    Q --> R[培養結果: MRSA]
    
    R --> S[MRSA化膿性関節炎の確定診断]
    S --> T[抗MRSA薬投与:\nバンコマイシン→ダルババンシン]
    
    I --> L
    K --> N
    
    style A fill:#2196B9,stroke:#2196B9,color:white
    style L fill:#EF7C1B,stroke:#EF7C1B,color:white
    style S fill:#E84518,stroke:#E84518,color:white
    
    subgraph 重要な臨床的決断ポイント
    U["複数の診断を考慮する\n(単一診断の罠を避ける)"]
    V["関節穿刺は診断の決め手\n(白血球数・培養)"]
    W["患者背景を考慮した\n治療薬の選択"]
    end
    
    subgraph 診断の鍵となった所見
    X["トレポネーマ抗体陽性\nRPR陽性 (1:8)"]
    Y["関節液白血球数 > 50,000/μL\n好中球優位"]
    Z["MRSAの培養同定"]
    end

Claude 3.7 Sonnet凄いですね。人間は完全に追い抜かされそうです。論文を読む、ということの持つ意味が変わりつつあるように思います。従来は”自分で必要なら文献を探して読んで比較しながら理解していく、内容について自分の従来の知識と新しい知識の関連付けをしていく(ネットワークを作る)、というのが論文抄読だと考えていたのですがAIを利用すると”AIにまず論文を読んでもらいAIに教えてもらう”というのがこれからの論文抄読になりそうです。

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