当院にも「動悸がする」との主訴で来院される患者さんは多くいらっしゃいます。動悸にはいろいろなパターンがありますが、「脈が飛ぶ」「ドキッとする」「安静時に多い」といった訴えの場合、まず期外収縮を疑います。その中でも特に多いのが、流出路起源の心室期外収縮です。
「心臓がしゃっくりをしているような感じ」と表現されることもあるこの状態。どのようなメカニズムで起き、どんな治療が必要なのでしょうか?詳しく解説していきます。
流出路起源の心室期外収縮とは
心臓の流出路は、右心室や左心室から血液を送り出す部分(右心室流出路=RVOT、左心室流出路=LVOT)です。この領域から発生する心室期外収縮(PVC: Premature Ventricular Contractions)は、通常の心拍リズムとは異なるタイミングで起こる心室の早い収縮が原因です。
特徴
- 良性が多い:多くのケースで心臓の構造に異常がなく、健康な人にも見られることがあります。
- 自覚症状:動悸、不快感、脈の乱れなど。場合によっては症状がないこともあります。
- 誘発因子:ストレス、睡眠不足、カフェイン摂取、アルコール、疲労などが原因となる場合があります。
診断方法
流出路起源の心室期外収縮を正確に診断するには、以下の検査が必要です。
1. 心電図(ECG)検査
PVCでは特徴的な波形(広いQRS波)を観察します。流出路起源のPVCは、右脚ブロック型または左脚ブロック型の形態をとることが多いです。
2. 24時間ホルター心電図
PVCの頻度やパターンを詳細に記録します。一日の中でいつ頻発するかを確認できます。
3. 心エコー検査
心臓の構造的な異常を確認するための検査で、PVCが良性であるかどうかを評価します。
4. 心臓MRI
心筋の炎症や線維化を確認するため、必要に応じて行います。
治療法
症状やPVCの頻度、患者さんの生活への影響によって治療法を選択します。
1. 経過観察
- 症状が軽い場合や頻度が少ない場合は治療の必要がありません。
- カフェインやアルコールの摂取を控える、睡眠を十分にとるなどの生活習慣改善をおすすめします。
2. 薬物療法
- β遮断薬やカルシウム拮抗薬を使用し、自律神経を安定させます。
- 頻度が高い場合は、抗不整脈薬が使用されることもありますが、副作用に注意が必要です。
3. カテーテルアブレーション
- PVCが頻発し、薬物療法でも改善しない場合に選択されます。
- 流出路起源の異常電気信号を特定し、焼灼(アブレーション)することで治療します。
流出路起源のPVCの予後
心臓構造が正常であれば、多くのケースで予後は良好です。ただし、頻発する場合には心機能への負担が懸念され、早期の治療や定期的な経過観察が必要です。
まとめ
「心臓のしゃっくり」とも表現される流出路起源の心室期外収縮は、良性である場合がほとんどですが、放置すると心機能に影響を与えることもあります。当院では、患者さまの状態に応じた診断と治療を行っています。動悸や脈の乱れが気になる方は、お気軽にご相談ください。
参考文献
- 日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン:2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン. https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/01/JCS2020_Ono.pdf
- Haissaguerre M, et al. Mapping and ablation of frequent ventricular ectopy originating from the outflow tract. Circulation. 2002;106(8):1073–1082.
- Lerman BB. Ventricular arrhythmias: Mechanisms and management. Heart. 2015;101(8):608–614.
- Bogun F, et al. Radiofrequency ablation of idiopathic outflow tract ventricular arrhythmias. J Am Coll Cardiol. 2007;50(25):2349–2355.
コメント