家族性高コレステロール血症(FH)とは
家族性高コレステロール血症(Familial Hypercholesterolemia:FH)は、遺伝的な体質により、生まれたときからLDLコレステロールが高くなる病気です。若いころから動脈硬化が進みやすく、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患を早い年齢で発症するリスクがあります。
ヘテロ接合体性FHは一般人口のおよそ300人に1人程度とされ、決して珍しい病気ではありません。自覚症状がないことも多いため、健診結果と家族歴から早く気づき、治療を継続することが重要です。
FHを疑うポイント
成人では、治療を始める前のLDLコレステロール値、腱・皮膚黄色腫、家族歴を組み合わせて診断します。
- 未治療時のLDLコレステロールが180mg/dL以上
- アキレス腱などの腱黄色腫、または皮膚結節性黄色腫がある
- 第一度近親者(両親・きょうだい・子)にFH、または早発性冠動脈疾患がある
早発性冠動脈疾患とは、男性55歳未満、女性65歳未満で発症した狭心症や心筋梗塞などを指します。これらの項目がある場合は、薬を始める前の検査値も確認して評価します。すでに薬を服用している方は、現在のLDL値だけでは判断できないことがあります。
遺伝学的検査で原因となる病的変異が確認された場合もFHと診断されます。遺伝学的検査はすべての方に必須ではありませんが、診断が難しい場合や重症例などで検討します。
家族にも検査をおすすめします
FHは常染色体顕性(優性)遺伝を示すことが多く、親・きょうだい・子にも同じ体質が受け継がれている可能性があります。一人の患者さんをきっかけに血縁者を調べる「カスケードスクリーニング」により、症状が出る前に家族のFHを発見できることがあります。
ご家族に著しくコレステロールが高い方、若くして心筋梗塞や狭心症を発症した方がいる場合は、年齢にかかわらずご相談ください。
検査について
血液検査でLDLコレステロールなどを確認し、甲状腺機能低下症、糖尿病、腎臓病など、コレステロールが上がる別の原因がないか調べます。必要に応じてアキレス腱の診察・画像検査、心電図、頸動脈エコーなどを行い、動脈硬化や心臓病の有無を評価します。
治療について
食事、運動、適正体重の維持、禁煙などは重要ですが、FHでは生活習慣の改善だけで十分にLDLコレステロールを下げることが難しく、薬物療法が必要になることが多い病気です。
成人ではスタチンを基本に、効果や副作用を確認しながら治療します。目標に届かない場合は、エゼチミブやPCSK9阻害薬などを組み合わせることがあります。治療目標は冠動脈疾患の有無、年齢、糖尿病などのリスクによって異なります。薬を自己判断で中止せず、副作用や治療への不安はご相談ください。
極めてLDLコレステロールが高いホモ接合体性FHが疑われる場合や、十分な治療でも管理が難しい場合は、専門医療機関と連携します。
小児のFH
小児は成人と診断基準が異なります。家族歴とLDLコレステロール値をもとに評価し、「FH疑い」の段階でも定期的に経過を確認します。食事・運動などの生活指導を行ったうえでLDLコレステロール高値が続く場合、一般に10歳ごろから薬物療法を検討します。重症度によって対応が異なるため、小児科や専門医と連携して診療します。
妊娠を希望される方へ
脂質を下げる薬の中には、妊娠・授乳中に使用を避けるものがあります。妊娠を希望される場合は、薬を自己判断で中止せず、事前に主治医へご相談ください。重症度や使用中の薬に応じて、妊娠前から治療計画を調整します。
受診をおすすめする方
- 未治療のLDLコレステロールが180mg/dL以上と言われた
- 若いころからLDLコレステロールが高い
- 家族にコレステロールが著しく高い方がいる
- 家族に若年の心筋梗塞・狭心症の方がいる
- 薬を服用してもLDLコレステロールが十分に下がらない
関連する解説記事
参考:日本動脈硬化学会「家族性高コレステロール血症(FH)とは?」/家族性高コレステロール血症診療ガイドライン
成人FH診療ガイドライン2022およびフォーカスアップデート2025などをもとに、2026年7月時点で患者さん向けに整理しています。