疾患解説

📰 トランプ前大統領も診断された「慢性静脈不全」ってどんな病気?

2025年7月、アメリカのトランプ前大統領(79歳)が「慢性静脈不全(CVI)」と診断されたというニュースが報じられました。

「慢性静脈不全って聞いたことない」「静脈瘤とは違うの?」
そんな疑問をもった方に向けて、病気の正体や治療法をわかりやすく解説します。


👣 慢性静脈不全(CVI)とは?

足には、血液を心臓に戻すための「静脈」があります。
この静脈には“逆流防止の弁”がついており、血液が重力に逆らって上へ戻るようにできています。

しかし、加齢や長時間の立ち仕事、妊娠などの影響でこの弁が弱くなり、血液が下にたまりやすくなる状態――
それが「慢性静脈不全(Chronic Venous Insufficiency, CVI)」です。


🩺 主な症状

  • 足のむくみ(夕方に悪化しやすい)
  • 足の重だるさ、疲れやすさ
  • 夜中のこむら返り
  • 血管が浮き出る(静脈瘤)
  • 皮膚の変色(茶色くなる)、湿疹
  • 皮膚が硬くなる(脂肪皮膚硬化症)
  • 進行すると皮膚潰瘍ができることも

🧓 トランプ氏の場合

報道によると、トランプ氏は足首のむくみを自覚し、検査を受けたとのこと。

  • 実施された検査:超音波検査(エコー)、心エコー、血液検査など
  • 深部静脈血栓症(DVT)や心不全、腎臓病などの重大疾患はなし
  • 結果:「高齢者によくある良性の静脈の病気」としてCVIと診断
  • 現時点では「痛みもなく、健康状態に問題なし」と報告されています

✅ つまり、「命に関わる病気ではないが、生活改善が必要な状態」と言えます。


🔍 静脈瘤と慢性静脈不全の違い

項目静脈瘤慢性静脈不全(CVI)
定義表在静脈が拡張し、皮膚に浮き出た状態静脈の弁が壊れて血液が脚にたまる慢性状態
見た目青く膨らんだ血管が見えるむくみ、皮膚の変色、潰瘍など
症状見た目中心。痛みやだるさがあることもむくみ、皮膚炎、潰瘍など進行性の症状
病態見た目の変化(C2レベル)機能障害を含むC3以上の状態

🔸 静脈瘤(C2)はCVIの“入り口”といえる段階です。
🔸 足がむくみ始めたら、CVI(C3)に進行しているサインです。


🧭 治療と予防方法

慢性静脈不全は、早期に対処すれば進行を防げます。
以下のような方法で予防・改善が可能です。

  • 医療用弾性ストッキング(着圧ソックス)
    → 血液を上に戻しやすくします
  • 脚を上げて休む(心臓より高く)
  • 歩く・足首を動かす運動
  • 肥満・長時間の立ち仕事を避ける
  • カテーテル治療・レーザー治療など(必要な場合のみ)

🩻 病気の段階を知る「CEAP分類」

医療では、CVIや静脈瘤の重症度を「CEAP分類」で評価します。

C分類(臨床の重症度)内容
C0症状なし
C1毛細血管の拡張(クモの巣血管)
C2静脈瘤
C3むくみ(浮腫)
C4皮膚の変化(色素沈着、湿疹、硬化など)
C5治った潰瘍の痕
C6現在活動している潰瘍

🗣 C3以降は「慢性静脈不全(CVI)」と診断されます。
早めに気づいて対処すれば、C4〜C6の皮膚症状や潰瘍を防ぐことができます。


✅ まとめ

  • 「慢性静脈不全」は高齢者によくある、静脈の弁のゆるみによる血液のうっ滞。
  • 「静脈瘤」は見た目の問題が中心、「CVI」は機能の障害や皮膚症状まで含む。
  • 足のむくみ・だるさが出たらCVIの始まりかもしれません。
  • 生活改善や早めの受診で進行を防ぐことができます。

👣 足が疲れやすい・むくみが気になる方は、当院までお気軽にご相談ください。

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