日本循環器学会は毎年春に開催されますがそれに合わせて新しいガイドラインが毎年発表されます、本日”心不全診療ガイドライン”が発表されましたので内容の要約をAIを利用して行ってみます。ガイドラインは日本循環器学会の会員でなくても下記より誰でもC日本循環器学会は毎年春に開催されますがそれに合わせて新しいガイドラインが毎年発表されます、本日”心不全診療ガイドライン”が発表されましたので内容の要約をAIを利用して行ってみます。ガイドラインは日本循環器学会の会員でなくても下記より誰でも閲覧可能です。
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2025/03/JCS2025_Kato.pdf
心不全とは、心臓の働きが弱くなり、全身に必要な血液を送り出す力が足りなくなる病気です。
新しいガイドラインでは、患者さんがより安心して治療を受けられるように、たくさんの改善が加えられました。
○ 心不全の種類がより細かく分けられました
これまでの心不全は、主に心臓のポンプ機能が低下しているかどうかで分類されていましたが、新しい分類では、
- 以前より良くなってきたタイプ(HFimpEF)
というものも追加されました。これは、治療で心臓の働きが良くなってきた人も、継続して治療が大切だということを意味しています。
○ 新しいお薬が登場しています
最近では、「SGLT2阻害薬(○○グリフロジンなど)」というお薬が心不全の治療にとても効果的だということが分かってきました。この薬は、糖尿病の薬として知られていますが、心臓にも良い作用があります。また、肥満や腎臓の病気がある方に使いやすいお薬も出てきました。
○ 自宅でもできる心不全の管理が進んでいます
最近では、スマートウォッチやアプリなどを使って、
- 体重や血圧の記録
- 心拍のチェック
が簡単にできるようになっています。これにより、心不全の悪化を早めに見つけて、入院を防ぐことも期待されています。
○ 高齢者やご家族の方へのサポートも充実
心不全の患者さんは高齢の方が多いため、介護や通院、薬の管理が大変になることがあります。新しいガイドラインでは、ご家族の方への支援や、在宅医療、看取りについてもわかりやすく整理されました。
内容をClaude 3.7 Sonnetを使ってスライドにまとめてもらいました。
次いでQ&Aで質問も作ってもらいました。
最後にChat GPTのDeep Researchを使って新しいガイドラインの内容を深掘りしてみます、新しくなった点、海外(AHA/ESC)のガイドラインとの比較に重点をおいて調べてみました。
2025年版日本心不全ガイドラインの改訂点と国際ガイドラインとの比較
はじめに
2025年3月に日本循環器学会ならびに日本心不全学会から**「2025年改訂版 心不全診療ガイドライン」が公開されました。本ガイドラインは2017年版および2021年のフォーカスアップデート版を全面的に見直したものであり、近年のエビデンスを踏まえて診療内容が大きく更新されています。以下、前回ガイドライン(2017年版および2021年部分改訂版)からの主な変更点を項目別に詳しく解説し、加えて欧州心臓病学会(ESC)および米国心臓協会/米国心臓病学会/心不全学会(AHA/ACC/HFSA)**のガイドラインとの相違点や日本独自の特色について分析します。医療従事者の実臨床に役立つよう、各項目を明確に整理し、最後に比較表を示します。
心不全の定義と分類の改訂(HFimpEF など)
◎ 定義の見直しとステージ概念の強化: 2025年版では、まずガイドラインのタイトルから「急性・慢性」の表記が外れ、「心不全診療ガイドライン」に統一されました。これは急性期と慢性期が連続する疾患としてシームレスな管理を強調したものです。さらに心不全の定義・分類は、2021年発表の**「心不全の世界共通の定義と分類(Universal Definition and Classification of Heart Failure)」に準拠して改訂されています。具体的には、「症状・徴候」だけでなく**、心臓ナトリウム利尿ペプチド(BNP/NT-proBNP)の上昇や肺うっ血などの客観的証拠が現在または既往に認められる場合に心不全と定義する形にアップデートされました。これにより、従来以上に的確な診断**が求められています。
加えて、**心不全のステージ分類(A~D)**の概念が強調されています。ステージA(心不全リスク)およびステージB(前心不全)の記載が充実され、特に慢性腎臓病(CKD)が新たにステージAの危険因子に加えられました。高血圧や糖尿病と同様、CKDを有する患者は心不全発症リスクが高いため、日本のガイドラインではCKDを心不全予防の観点から明示的に位置付けている点が特徴です。これはACC/AHAのステージ分類(Stage A: 発症リスク、Stage B: 無症候性構造異常)に通じる考え方であり、早期介入の重要性が強調されています。
◎ 左室駆出率による分類の拡充(HFimpEFの導入): 左室駆出率 (LVEF) に基づく心不全の分類もアップデートされています。従来からの**HFrEF(Heart Failure with reduced EF, LVEF≤40%)とHFpEF(preserved EF, LVEF≥50%)**に加え、**HFmrEF(mid-range EF, LVEF 41~49%)が引き続き中間群として扱われ、さらに新たに「改善した駆出率の心不全」(HFimpEF)**が明確に定義されました。HFimpEFとは、初回評価時のLVEFが40%以下で、その後の経過でLVEFが>40%へ10%以上改善した症例を指します。以前は“HF with recovered EF”などと呼ばれていましたが、世界共通の定義に合わせてHFimpEFという用語に統一されています。このカテゴリー追加により、心機能が回復した患者も適切に表現できるようになりました。
HFimpEFの導入は日本だけでなく米国ガイドラインでも取り入れられた概念です。ACC/AHA/HFSA 2022年ガイドラインでも同様にHFimpEFが定義され、「HFrEF治療によりLVEFが改善しても、治療を中断すべきではない」との勧告がなされています。日本の2025年版ガイドラインでもHFimpEF患者ではHFrEFに準じた薬物療法の継続が推奨されると明記され、左室機能が改善しても投薬中止によって再度悪化し得るため注意が喚起されています。一方、ESC 2021年ガイドラインでは発行時期の関係からHFimpEFという用語は公式には採用されていません(分類はHFrEF/HFmrEF/HFpEFのみ)が、2023年のESCフォーカスアップデートでこの概念が紹介されつつあります。
◎ ESC・ACCとの比較: 心不全の定義と分類に関して、日本のガイドラインは最新の国際コンセンサスに沿った形へアップデートされました。ESC 2016で提唱されたHFmrEFは日本2017年版でも概念が紹介され、2021年アップデートで定着しましたが、HFimpEFを明確に分類に加えた点は日本2025年版とACC/AHA 2022年版に共通します ( ACC/AHA/HFSA 2022 and ESC 2021 guidelines on heart failure comparison – PMC )。また、ESCガイドラインではLVEF分類時に拡張機能障害の客観的エビデンス(高充盈圧の証拠)を伴う場合にHFpEF/HFmrEFと定義する厳密さがありますが、日本の定義もBNP上昇等を要件に加えることでより精密な診断を目指している点で整合しています。一方、ステージA・Bの重視はACC/AHAが以前から採用していた概念で、日本2025年版もこれに倣ってCKDなどリスク段階での介入を強調した点が特徴的です(従来の日本版ではステージ概念への言及は限定的でした)。総じて、定義・分類面では日本のガイドラインは最新知見を迅速に反映し、ACC/AHAに近い包括的アプローチを取っていると言えます。
治療薬の推奨アップデート(SGLT2阻害薬、フィネレノン、ARNI など)
◎ HFrEF治療の体系化(四本柱の確立): 近年の臨床試験結果を受け、HFrEF(駆出率低下型心不全)の薬物療法はいわゆる**「4本柱」(RAS阻害+β遮断薬+MRA+SGLT2阻害薬)が確立しました。2025年版ガイドラインでも、HFrEF患者には可能な限り早期からACE阻害薬/ARBまたはARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)、β遮断薬、MRA(鉱質コルチコイド受容体拮抗薬)、SGLT2阻害薬の4種を併用開始し、忍容性をみながら目標用量まで漸増することが強く推奨されています。特にARNI(サクビトリル・バルサルタン)はACE阻害薬に代わる選択肢として位置づけられ、ACE阻害薬/ARBで治療中の患者にはARNIへの切替えを検討する旨が記載されています (JCS2025_Kato.pdf)。このアプローチはESC 2021やACC 2022**でも共通しており、HFrEFの標準治療は世界的に足並みが揃いました。日本2017年版ではARNIは登場したばかりで推奨度が限定的でしたが、2025年版ではエビデンス蓄積によりARNIが標準療法の一角として確立しています。
また、日本では利尿薬(症状緩和目的)やイバブラジン(洞調律で心拍数高値のHFrEF患者で適応)、ベルイシグアト(経口GC刺激薬、重症例の再入院抑制目的)なども利用可能です。2025年版にはこれらについても記載がありますが、生命予後改善エビデンスが明確な4薬剤ほどの中心的扱いではなく、個々の病態に応じて追加・選択する形です。例えば、HFrEF重症例で洞調律かつ安静時心拍数≧70/分の場合、イバブラジン併用が症状・予後改善に有用とされています。一方、新薬のオメカムチブメカルビル(ミオシン活性化薬)はエビデンス不十分でガイドラインで触れられていません。
◎ HFmrEF/HFpEFへの治療拡大(SGLT2阻害薬とフィネレノンの追加): 大きな変更点として、従来有効な治療手段が限られていたHFmrEF/HFpEF(LVEFが中間域~保たれた心不全)に対する薬物療法の推奨が追加されたことが挙げられます。具体的には、SGLT2阻害薬とフィネレノン(選択的非ステロイド型MRA)の有用性が新たに示され、ガイドラインに組み込まれました。
- SGLT2阻害薬: 2019~2021年にかけてHFrEF患者を対象としたDAPA-HF試験やEMPEROR-Reduced試験で、SGLT2阻害薬(ダパグリフロジン、エンパグリフロジン)が心不全入院および心血管死を有意に減少させることが明らかとなり、日本でも2021年のアップデート版でHFrEFへの投与がクラスI推奨に格上げされました。さらに2021年以降、HFmrEF/HFpEF患者を対象としたEMPEROR-Preserved試験やDELIVER試験で、SGLT2阻害薬による入院リスク低減効果が証明されたことから、2025年版ではHFmrEFおよびHFpEFに対してもSGLT2阻害薬投与が推奨されています。推奨クラスはIIa(有用性が高いと考えられる)ですが、これはESC 2023年フォーカスアップデートでHFpEFに対するSGLT2阻害薬がクラスIに引き上げられたことと歩調を合わせています。なお、糖尿病の有無を問わず投与可能であり、心不全そのものの予後改善薬として位置付けられている点が重要です。先行するACC/AHA 2022ガイドラインでもHFpEFに対しSGLT2阻害薬を有用な治療選択肢(Class IIa)と明記しており、日本も含め世界的にHFpEF治療としてSGLT2阻害薬が標準化しつつあります。
- フィネレノン: フィネレノンは第3のMRAとして近年登場した薬剤で、糖尿病を伴うCKD患者において腎・心血管イベントを抑制する効果が確認されています(FIDELIO-DKD試験など)。2025年版ガイドラインでは、HFmrEFおよびHFpEF患者(特に糖尿病・CKD合併例)にフィネレノンを考慮することが新たに推奨されました。推奨クラスはIIaで、2025年3月時点では心不全治療薬として本邦未承認ながら、エビデンスに基づき将来の標準治療候補として記載されています (JCS2025_Kato.pdf)。これは、欧州でもESC 2023アップデートにて「2型糖尿病+CKDを有する患者では心不全予防目的でフィネレノンを投与推奨」との勧告が出たことに呼応しています (Focused update of ESC Heart Failure Guidelines published today)。ACC 2022ガイドラインでも、ステージCの併存症管理としてフィネレノンの有用性に触れており、日本はこの分野でも最新知見をいち早く反映した形です。
◎ 肥満合併心不全への新アプローチ(インクレチン関連薬): 日本独自の画期的変更点として、肥満を伴うHFpEF患者に対するGLP-1受容体作動薬等の推奨が挙げられます。肥満はHFpEFの重要な原因・増悪因子であり、近年体重減少療法の有効性が注目されています。2025年版では、BMIが高い肥満症のHFpEF患者に対し、セマグルチド(GLP-1受容体作動薬)やチルゼパチド(GIP/GLP-1共作動薬)の使用を考慮できるとしています。これは、それぞれSTEP-HFpEF試験およびSUMMIT試験において、体重管理による症状改善や心血管イベント抑制効果が示唆されたことを受けたものです。推奨クラスはIIaで、セマグルチドはLVEF≧45%の肥満症HFに、チルゼパチド(国内では肥満症治療薬ゼップバウンド®)はLVEF≧50%の肥満症HFに適応を考慮するとされています。このように、肥満に着目して抗肥満薬で心不全予後改善を図るというアプローチは日本ガイドラインの先進的な点です。他国のガイドラインでは減量の重要性には触れていても具体的薬剤推奨までは踏み込んでおらず(ACC/AHA 2022でも「生活習慣による減量」推奨止まり)、日本は世界に先駆けてエビデンスに基づく肥満症治療薬の活用を提案しています。
◎ その他の治療薬の追加: 心不全の基礎疾患に応じた治療も充実しています。例えば、本ガイドライン作成の過程で**「心筋症」や「心アミロイドーシス」などに関する他の国内ガイドラインも更新され、それらの内容が取り入れられました。具体的には、肥大型心筋症に対するマバカムテン(ミオシン阻害薬)や心アミロイドーシスに対するタファミジス・ブトリシラン・アコラミドなど、新規治療薬の知見が盛り込まれています。また、特殊な病態として心房筋症**(心房細動による心筋障害)や中性脂肪蓄積心筋血管症(TGCV)、**腫瘍循環器学(がん治療に伴う心不全)**についても新たに記載されました。これらは日本発の知見や国内で関心の高まる領域であり、日本ガイドラインの独自性と言えます(欧米の一般的な心不全ガイドラインでは詳細に触れられないことが多いです)。
◎ ESC・ACCとの比較: 薬物療法に関して、日本の2025年版は**「HFrEFの四本柱治療」という点でESC 2021およびACC 2022ガイドラインとほぼ一致しています。HFrEF管理において、β遮断薬・RAS阻害・MRA・SGLT2阻害薬の重要性は日欧米共通であり、その早期併用開始戦略も概ね同じです。一方で、HFpEFに対する治療戦略は2020年代前半に大きく変化した部分で、日本は欧米の動向と歩調を合わせながら一歩進んだ推奨も取り入れている状況です。例えば、SGLT2阻害薬のHFpEF適応は欧米でも承認されつつあり、ACC 2022でClass IIa、ESC 2023ではClass Iとなりましたが、日本2025でもこれをIIaながら明記しました。フィネレノンについては、ESCが糖尿病性腎症として推奨するのみでACCも明確な位置づけをしていませんが、日本では心不全領域で積極的に推奨する先進性があります。また、GLP-1受容体作動薬の活用提案は前述の通り日本独自です。他方、ACCガイドライン特有の項目として「アフリカ系米国人患者にヒドララジン・硝酸薬併用を推奨」(A-HeFT試験に基づく)が挙げられますが、日本では人種的背景が異なるため同様の強調はありません(ヒドララジン・硝酸薬は主にRAS阻害薬不耐容時の代替手段として位置づけ)。総じて、日本ガイドラインの薬物療法は最新エビデンスを網羅しつつ日本人集団への適用を考慮した内容**であり、ESCやACCと比べても遜色なく、むしろ肥満心不全など一部領域ではリードしているといえます。
デジタルヘルスと遠隔モニタリングの活用
◎ 地域包括ケアとデジタル技術: 2025年版では社会的支援や地域連携に関する章が新設され、そこでデジタルヘルスや遠隔モニタリングの活用について触れられています。従来のガイドラインではこの分野の記載は乏しかったため、大きな進歩です。心不全は再入院予防や在宅管理が重要な疾患であり、日本でも高齢化に伴い在宅医療や地域包括ケアシステムとの連携が課題となっています。新ガイドラインでは、遠隔モニタリングシステムやウェアラブルデバイスを用いた心不全管理について最新エビデンスを整理し、医療者・患者がそれらを適切に活用することを推奨しています。
◎ 遠隔モニタリングの推奨: 植込み型デバイス(CIED:ICDやCRTなど)を装着した心不全患者に対しては、デバイスが記録する不整脈や肺うっ血指標等を遠隔モニタリングで継続的に監視する管理体制を整えることが推奨されています。複数の研究で、遠隔モニタリングを用いたフォローアップは対面診療に比べ患者の安全性を損なわず、むしろ死亡率低下に寄与することが報告されているためです。実際、本ガイドラインでも「CIED植込み患者に対する遠隔モニタリングは標準的管理手段として導入が推奨される」と記載されています。例えば、心不全患者向け肺動脈圧モニタリングデバイス(CardioMEMSなど)の有用性も海外試験(CHAMPION試験等)を引用して紹介されており、適切な患者への活用が期待されています。ただし、現在日本では侵襲的モニタリングデバイスは未承認のため、主に体重・血圧・症状などの非侵襲的モニタリングや植込みデバイスの遠隔チェックが実用段階です。ガイドラインでは、それら非侵襲モニタリング単独ではエビデンスが限定的という研究結果にも触れつつ、**多角的な遠隔監視(バイタル、心音、インピーダンス変化など)**の組み合わせによる早期悪化察知が今後の課題と述べています。
◎ デジタル療法(DTx)と課題: また、**スマートフォンアプリ等を用いたデジタル治療(Digital Therapeutics, DTx)**が心不全管理に応用され始めていることにも言及しています。具体的な承認アプリはまだ無いものの、セルフケアを支援するアプリやリモートリハビリ指導プログラムなど、開発中のデジタルツールが紹介されています。さらに、**デジタルデバイド(IT技術の利用格差)**にも注意が必要と強調され、高齢者などITリテラシーが低い患者でも使いやすいシステム設計や支援体制の重要性が述べられています。単に技術導入を推進するだけでなく、患者個々の背景に配慮しながらデジタルヘルスを展開するという視点は、日本ならではのきめ細かさと言えるでしょう。
◎ ESC・ACCとの比較: 欧米ガイドラインでも、遠隔モニタリングや包括的疾病管理プログラムの有用性が示唆されています。ESC 2021は遠隔モニタリングに関して明確な推奨を出しませんでしたが、TIM-HF2試験(遠隔モニタリングで入院減少を示唆)などを踏まえ「経験的には有益な可能性がある」との姿勢でした。一方、ACC/AHA 2022ガイドラインでは、「心不全患者の予後改善のため、構造化された電話支援や遠隔モニタリングを用いることは有用である(Class IIa)」と述べられ、特に肺動脈圧モニタリングについては入院歴のあるNYHA IIIのHF患者で考慮すべきとされています (2022 AHA/ACC/HFSA Heart Failure Guideline: Key Perspectives)。日本2025年版は、そうした知見を踏まえてデバイス遠隔管理の有効性を国内ガイドラインに初めて正式に組み込んだ点が画期的です。さらに、日本は地域包括ケアシステムとの連携に独自の力点を置いており、ガイドライン中でも退院後の在宅療養を支える仕組み(訪問診療、訪問看護、地域の診療所との情報共有など)の必要性が説かれています。これは、日本の医療制度下で心不全患者を支える現実的な提案であり、欧米には直接的な対応物が少ない特徴です。また、就労支援や社会復帰にも触れている点は、日本で働き盛り世代の心不全患者が増えている背景を反映しています。総合すると、日本ガイドラインはデジタル技術と人的支援の双方を組み合わせた心不全管理を推奨しており、技術革新に前向きでありながら患者本位の視点を忘れないバランスが取られています。
高齢者や併存症に対する対応
◎ 高齢者・フレイルへの対応: 日本は超高齢社会であり、心不全患者の高齢化・虚弱化が深刻な問題です。2025年版ガイドラインでは、新たに**「高齢者・フレイル・サルコペニア」**の節が設けられ、これらに対する評価と対応が詳述されています (JCS2025_Kato.pdf)。フレイル(虚弱)は要介護手前の脆弱状態を指し、心不全患者にも頻繁に合併します。ガイドラインではJ-CHS基準など日本で用いられる診断基準を紹介しつつ、**握力測定や歩行速度、SPPB(短時間蓄積的身体機能評価)**などを用いて心不全患者のフレイル評価を行うことを推奨しています。また、**サルコペニア(筋減少)**の評価も重要で、併存すれば予後不良であるため栄養・運動療法による介入が推奨されています。
治療面では、高齢でフレイルな患者であってもエビデンスのある心不全治療を可能な範囲で適用すべきとされています。興味深いことに、一部の研究ではフレイルな患者の方が非フレイルな患者よりもSGLT2阻害薬などの治療効果が大きいと示唆する結果もあり、安易に治療を諦めるべきでないとしています。実際、HFrEF/HFpEFのいずれにおいても、フレイルの有無で薬物治療の相対効果は同等もしくはむしろ高いとの知見が紹介されています。したがって、高齢だからといって有効な治療を差し控えず、慎重に導入・管理する姿勢が強調されています。ただし、日本人心不全患者には低体重(BMI 20未満)の例も多く欧米とは患者像が異なるため、そうした極端な低栄養例にSGLT2阻害薬等を用いた場合のエビデンスは不明瞭です。ガイドラインでも「日本人に多い低BMI患者に関するデータが不足しているため、慎重な投与が望ましい」と述べられています。このように、日本ガイドラインは高齢・虚弱患者への積極的かつ個別的なアプローチを提示しています。
◎ 心不全の主な併存症への対策: 2025年版では心不全に合併しやすい**重要な併存症(コモビディティ)**に関する記載と推奨が大幅に追加・強化されました。特に以下の項目が詳細に扱われています。
- 慢性腎臓病(CKD): CKDは心不全のリスク因子であり(上述のステージAに追加)、また心不全予後を悪化させる併存症でもあります。ガイドラインでは、CKD患者に対してRA系阻害薬や利尿薬を使用する際の用量調節・腎機能モニタリングについて注意喚起されています。また、先述のようにSGLT2阻害薬は糖尿病・CKDを有する例で心不全発症予防目的にも有用であり、その積極的活用が推奨されています。高カリウム血症の対策(必要に応じてカリウム吸着剤の使用など)も解説されています。欧米ガイドラインでもCKD合併HFへのSGLT2阻害薬推奨は共通ですが、日本版はより早期(リスク段階)からの介入を想定している点が特徴です。
- 貧血・鉄欠乏: 心不全患者の貧血と鉄欠乏に対する対応もアップデートされました。HFrEF患者に鉄欠乏(フェリチン <100 ng/mL またはフェリチン100–299 ng/mLかつTSAT<20%)がある場合、静脈鉄補充療法(フェリチン製剤投与)が運動耐容能やQOLを改善するエビデンスがあるため、推奨表が提示されています。FAIR-HFやIRONMANなど複数試験の結果が表形式でまとめられ、クラスIIa推奨として静脈鉄投与を検討することが記載されています(欧米でも同様にClass IIa)。一方、エリスロポエチン刺激薬(ESA)については、他疾患に適応がない限り心不全予後改善目的での使用は推奨されないと明記されました。ESA投与による心血管イベント抑制効果は示されておらず、逆に血栓リスク増大の懸念から有害無益と判断されています。
- 肥満・メタボリック症候群: 肥満の項では前述したインクレチン薬の投与に加え、生活習慣改善による体重管理の重要性が説かれています。減量によりHFpEF患者の運動耐容能が改善することが期待されるため、栄養士や多職種チームによる支援が推奨されています。また、肥満者ではBNPが相対的に低値を示し心不全のマーカーがマスクされることがあるため、肥満合併例では低BNPでも心不全を除外できない点に注意が喚起されています。この知見は日本人以外でも共通ですが、日本では肥満度や体格分布が欧米と異なるため特に強調されています。
- 糖尿病: 心不全患者の血糖管理については、SGLT2阻害薬が両疾患に有益であることから一石二鳥の治療と位置付けられます。ガイドラインでも糖尿病合併HFへのSGLT2阻害薬は最優先に考慮すべき治療として推奨されました。また、GLP-1受容体作動薬は動脈硬化抑制や体重減少効果があるため、心血管リスクの高い糖尿病患者で心不全予防に寄与し得ることが解説されています。
- 高血圧: 高血圧は心不全の主要原因であり、厳格な血圧管理がステージA・Bで重要です。本ガイドラインでも特段目新しい推奨こそありませんが、RA系阻害薬やCa拮抗薬等で適切な血圧コントロールを行うことが基本戦略として再確認されています。なお、HFpEFでは降圧により予後改善したエビデンス(例えばTOPCAT試験でのスピロノラクトンなど)は限定的ですが、症状緩和と臓器保護のために高血圧を放置しないことが重要です。
- 不整脈(心房細動など): 心房細動合併心不全では心拍数の適切な管理(レートコントロール)や必要に応じたリズムコントロール(カテーテルアブレーション)が推奨されています。2025年版では特に心房細動による心房筋リモデリングにも触れ、「心房心筋症」の概念が紹介されました。これは心房細動が長期化することで心房が構造機能的に異常をきたし、心不全悪化に寄与する状態を指します。欧米ガイドラインには無い独特の切り口ですが、日本発の研究があり注目されています。
- 睡眠呼吸障害(睡眠時無呼吸): 心不全患者には**閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)**が高頻度に合併し、夜間の低酸素が心負荷となります。ガイドラインでは、HFrEF患者にOSAがあればCPAP療法(持続陽圧呼吸)を用いることで症状や運動耐容能、LVEFが改善しうるとし、適応例でのCPAP導入を考慮するとしています。一方、**中枢性睡眠時無呼吸(CSA)**に対するASV(自発同期式人工呼吸)は、かえって予後悪化の可能性が示唆された(SERVE-HF試験)ため推奨されません。この点も欧米と同様です。
- 抑うつ・認知機能障害: 心不全患者のQOLに大きく影響する抑うつや認知症状への対策も新たに追記されました。うつ状態はアドヒアランス低下や予後悪化と関連するため、PHQ-9質問票などでスクリーニングし必要なら精神科と連携することが推奨されています。また認知機能低下がある場合、家族や介護者の関与のもと服薬管理の工夫(一包化や服薬カレンダー)や多職種連携で支援することが望ましいと述べられています。こうした内容は記述的で定量的エビデンスに基づく推奨ではありませんが、患者全体を診る包括的ケアとして重要なポイントです。
◎ ESC・ACCとの比較: 高齢者・併存症への対応は、各国ガイドラインで重視されつつも若干記載の濃淡があります。ESC 2021も「高齢者心不全」の節でフレイル評価や包括的老年医学的評価(CGA)の必要性に触れていますが、日本版2025はそれをさらに詳細に展開し、日本人集団に即した注意点(低BMI例、和式フレイル基準など)を補足している点で優れています。ACC 2022でもフレイルや併存症は考慮されていますが、主に各薬剤投与時の注意(例:COPD患者には選択的β遮断薬を、腎機能低下では投薬量調整など)に留まり、包括的マネジメントに関する踏み込みは限定的です。一方、日本ガイドラインは複数の併存症に対し具体的な推奨表や図表を用いて解説しており、臓器横断的な視点が強いです。例えば鉄欠乏に対する静注鉄や睡眠時無呼吸に対するCPAPなど、欧米でも推奨される内容をしっかり盛り込みつつ、心毒性を有するがん治療後の心不全(腫瘍循環器学)や希少疾患であるTGCVまでカバーしているのは日本独自の広さです。加えて、高齢者ケアに関する記載(介護者支援や社会資源の活用など)は日本のガイドラインが厚く、これは日本の医療・介護体制に沿った実践的助言と言えます。総じて、日本2025年版は高齢者・併存症マネジメントに関して世界でも屈指の充実度を誇り、医療従事者が直面する現実的問題への指針を提供しています。
緩和ケアとACP(アドバンス・ケア・プランニング)
◎ 心不全における緩和ケアの位置付け: 従来、緩和ケアというと終末期の癌医療を連想しがちでしたが、心不全領域でも早期からの緩和ケア統合が重要であることが近年強調されています。2025年版ガイドラインでも、緩和ケアを「患者および介護者の身体的・精神的・スピリチュアルな苦痛を和らげる包括的アプローチ」と定義し、心不全の全病期にわたり適用すべきであると述べています。特に、心不全は緩解と増悪を繰り返す疾患であり、患者の予後予測がん疾患ほど明確でないため、症状緩和や意思決定支援を病態の早期から並行して行うことが推奨されます。ガイドラインには**「心不全とがんの疾患軌跡の違い」を示す図も掲載され、心不全ではいつが終末期か判別しにくいゆえに緩和ケアのタイミングを逸しないよう注意**喚起されています。
◎ アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の推進: 心不全患者に対するACP(将来の医療・ケアについての事前計画)の重要性も強調されています。2025年版ではACPの概念整理から始まり、その効用や開始時期、具体的方法論まで詳述されています。ACPとは、「患者の価値観や人生の目標、医療に関する希望を患者・家族と医療チームが話し合い、共有するプロセス」であり、狭義・広義の定義があります。ガイドラインでは広義のACP、すなわち「意思決定能力があるうちから将来に備えて繰り返し話し合いを行う」考え方を支持しており、意思決定不能時に備えた文書作成だけでなく日常的なコミュニケーションの積み重ねとしてACPを捉えています。具体的には、心不全が進行してNYHA III~IVとなった段階や治療の選択肢(補助人工心臓や移植、あるいは内科的緩和治療への切り替え)を検討する段階で、主治医がACPの話し合いを提案し、患者・家族と予後や希望について率直に話し合うことが推奨されます。推奨表84として「ACPと意思決定支援」に関する具体的推奨事項も示され、心不全患者にACPを導入すること自体がクラスIで推奨されています(ACC/AHA 2022でも同様の推奨あり)。
ACPの話し合いでは、例えば「患者の意思はいつでも変更可能であること」、「たとえ延命治療の中止を選択しても、痛みや苦痛を和らげるケア(緩和ケア)は引き続き提供されること」、「いかなる場合も死期を早める行為(積極的安楽死的な処置)は行わないこと」などについて、共通認識を持つことが重要だとされています。実際、ガイドライン本文でもこれらの点に言及し、ACPのプロセスにおける倫理的留意事項を示しています。特に日本では安楽死は認められていないため、「筋弛緩薬投与などで死期を早めない」と明言している点は、日本のガイドラインならではの特徴と言えます。これは患者や家族がACPに誤解や不安を抱かないよう配慮した内容であり、実臨床でACPを進める上で有用な指針です。
◎ 緩和ケアの具体策: ガイドラインには、心不全緩和ケアにおける症状緩和の方法や支持療法もまとめられています。例えば、高度な呼吸困難に対するモルヒネ等の慎重投与、不安や抑うつに対するメンタルケア、浮腫や腹水に対する利尿剤調整、倦怠感へのリハビリテーション的介入などが挙げられています。また、食思不振やカヘキシーへの栄養サポート、在宅酸素療法の適切な導入基準など、緩和目的でできる幅広い介入が紹介されています。終末期に近い状況では、患者本人の希望に沿って積極的治療から緩和ケア重視へ移行することになりますが、その際にも医療チーム間のプロセスガイドライン(役割分担、情報共有の流れ)が示され、決して患者や家族を孤立させない体制づくりが説かれています。
さらに、家族や介護者への支援についても記載されています。心不全患者の在宅療養では家族の負担が大きくなりがちなため、レスパイトケア(一時預かり)等の社会資源を活用したり、ACPの話し合いに家族も参加してもらいケア方針を共有することが推奨されています。患者が亡くなった後の**ベレーブメントケア(遺族ケア)**にも触れられ、遺族の心理的ケアやサポートも心不全緩和ケアチームの役割の一部と位置付けられています。これらは欧米のガイドラインでも重要視されていますが、日本版でも遜色なく網羅されています。
◎ ESC・ACCとの比較: 緩和ケアとACPに関する項目は、ESC 2021とACC/AHA 2022でも大きく取り上げられています。ただし、その位置付けには若干の違いがあります。ESC 2021ガイドラインは緩和ケアを「主に高度心不全(Stage D)の患者に検討すべきもの」として記載する傾向が強く、症状マネジメントの具体的方法に重点を置いていました(例えば、疼痛・不安・睡眠障害への対処法など詳細な記載がある)。一方、ACC/AHA/HFSA 2022ガイドラインでは緩和ケアを必要に応じ早期から導入するニーズベースアプローチを推奨し、「プライマリ緩和ケア(主治医チームが担う基本的緩和ケア)とスペシャリスト緩和ケア(専門チームによる高度ケア)の区別」やホスピス利用、介護者支援について踏み込んで述べられています。実際、ACC/AHA 2022では**「NYHA III~IVの進行期心不全患者には緩和ケア専門チームへの紹介を検討することが有益(Class IIa)」と公式に推奨し、さらに「すべての心不全患者に対し、主治医は予後や治療の限界について対話しACPを行うべき(おそらくClass I相当)」とも示されています。日本2025年版は、そうしたACCの先進的考え方を反映しつつ、日本の医療状況に合わせて記載されている印象です。例えば、ホスピス・在宅看取りについては日本ではまだ症例が多くないため具体的言及は少ないですが、終末期の場所の選択(自宅か病院か、緩和ケア病棟か)もACPで話し合う事項として触れられています。総じて日本ガイドラインは「心不全緩和ケアもがんと同様に重要であり、早期からACPを含めた包括的ケアを行うべき」という国際的コンセンサスを強く支持しており、その内容はACC/AHAの勧告とも調和しています。先述のような倫理的配慮点の明示**や、患者・家族向けの情報提供章の新設など、きめ細かな点で日本らしい工夫も見られます。
2025年版日本心不全ガイドラインの改訂点と国際ガイドラインとの比較
項目 | 日本(JCS/JHFS 2025 | 欧州(ESC 2021/2023) | 米国(AHA/ACC/HFSA 2022) |
定義と分類 | Universal Definitionに準拠。HFimpEFを新設。ステージAにCKDを明記。 | HFimpEFは未採用(2021)。EFによる分類と客観的証拠重視。 | HFimpEFを明記。Universal Definition採用。ステージA〜D重視。 |
HFrEF治療 | ARNI/β遮断薬/MRA/SGLT2iの“四本柱”をクラスI推奨。 | 同様に四本柱。ARNIはACEiより優先。 | 同上。黒人患者にはヒドララジン+硝酸薬追加推奨。 |
HFmrEF / HFpEF治療 | SGLT2i(クラスIIa)。フィネレノンとGLP-1RA(肥満合併例)も推奨。 | SGLT2iはClass Iに格上げ(2023)。GLP-1RA記載なし。 | SGLT2i(Class IIa)、MRAやARNIは症例選択。GLP-1RA記載なし。 |
デジタルヘルス | CIED遠隔モニタリングを標準管理に。高齢者にも配慮。 | 遠隔モニタリングは可能性を示唆する程度。 | 包括的遠隔管理プログラムをClass IIaで推奨。CardioMEMS推奨あり。 |
高齢者・併存症 | フレイル/サルコペニアを評価。鉄欠乏・CKD・OSA・認知障害などに多職種で対応。 | 評価の必要性は記載あるが詳細少なめ。 | 個別管理重視。静注鉄推奨、GLP-1RAなどは動脈硬化予防目的。 |
緩和ケア・ACP | 全病期に緩和ケア導入を推奨(Class I)。ACPは広義の繰り返し対話として位置付け。 | 主に末期HFでの緩和ケアに触れる。ACPは限定的。 | 早期からの緩和ケア/ACPを強く推奨(Class IIa)。家族支援やパリアティブ・イノトロープ使用も明記。 |
このように、2025年版の日本心不全ガイドラインは、国際的な標準と整合性を取りつつも、日本独自の実臨床への適用や多職種連携、社会制度への配慮が随所に見られます。
心不全の患者さんは当院にもたくさん通院されています。最新のガイドラインを勉強してベストの治療ができるように頑張ります。
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