12月6日、54歳の女優で歌手として活躍された中山美穂さんが、不慮の事故により亡くなられるという悲しいニュースが報じられました。公表された情報によれば、死因は入浴中の事故であり、事件性はないと確認されています。
勤務医時代には入浴中に急変した患者さんが搬送されてくることは珍しくありませんでした。そこで日本の入浴に関連した事故について調べたところ、Sudden death phenomenon while bathing in Japan – mortality data(日本における入浴中の突然死現象 – 死亡率データ), Circ J. 2017 Jul 25;81(8):1144-1149. doi: 10.1253/circj.CJ-16-1066という慶応大学が中心となって行われた研究論文を見つけました。この研究では、冬季における入浴関連の突然死の実態が詳細に調査されており、本記事ではその内容をご紹介します。
冬の入浴関連死の実態とは?
この研究は、2012年10月から2013年3月の冬季に、日本の3つの地域(東京都、山形県、佐賀県)で行われました。研究対象は、緊急医療システムが稼働した4,599件の入浴関連事象で、そのうち心停止に至ったケースは1,527件(全体の33%)でした。
推定される全国の入浴関連死の数は、**13,369人(95%信頼区間: 10,862~16,887)**であり、これは冬季6か月間(10月~翌年3月)の間に発生したとされています。また、入浴関連死の多くが高齢者に集中していることも明らかにされています。
主な原因とリスク要因
研究では、以下の要因が入浴中の突然死に関連していると報告されています:
- 浴槽内での心停止と溺死
心停止事例の大部分(80%以上)が、顔が湯に沈んでいる状態で発見されており、溺死が主要因と考えられます。 - 急激な温度変化
冬季には寒い脱衣所や居間と温かい浴室との温度差が血圧に大きな影響を及ぼし、心臓への負担が増加します。 - 孤独な環境
死亡事例の90%以上が家庭内で発生し、一人暮らしの環境では発見が遅れるリスクが高まります(1)。
地域ごとの死亡率の比較
研究では、以下のような地域別の冬季入浴関連死亡率が報告されています:
- 東京都:10.0人/10万人(95%信頼区間: 9.4~10.5)
- 山形県:11.6人/10万人(95%信頼区間: 9.7~13.7)
- 佐賀県:8.5人/10万人(95%信頼区間: 6.0~10.7)
寒冷な気候条件が影響する山形県では、死亡率がやや高めに観察されましたが、地域差はそれほど大きくありませんでした(1)。
安全にお風呂を楽しむための具体的な対策
- 浴室や脱衣所を暖かく保つ
ヒーターを利用して寒暖差を減らす工夫が重要です。 - 適切な湯温と入浴時間を守る
お湯の温度を40℃以下に保ち、10分以内の入浴を心がけましょう。 - 入浴中の孤立を防ぐ
家族と声を掛け合う、または緊急時用の通報装置を利用するなど、安全策を講じましょう。
まとめ
この研究から、冬季における入浴中の突然死が高齢者を中心に深刻な問題であることが示されています。入浴はリラックスのための大切な時間ですが、適切な対策をとることで安全性を高めることができます。ご自身やご家族の健康を守るために、この記事を参考にしてください。
引用文献
- Suzuki M, Shimbo T, Ikaga T, Hori S. Sudden death phenomenon while bathing in Japan – mortality data. Circ J. 2017;81:1144-1149. doi:10.1253/circj.CJ-16-1066【5†source】.
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