当院では、高血圧や糖尿病、肥満などの生活習慣病で受診される患者さんが多くいらっしゃいます。これらの病気を改善するためには、日常生活の見直しが欠かせません。その中でも 運動 は非常に重要な役割を果たします。
「どんな運動が効果的ですか?」という質問をよくいただきますが、答えは一つではありません。そこで、最新の医学研究を基に、筋力トレーニング(レジスタンス運動)と有酸素運動が生活習慣病にどのような影響を与えるかを解説します。
筋力トレーニングと有酸素運動:どちらが生活習慣病に効果的?
2024年に発表された「CardioRACE試験」では、肥満または過体重の成人を対象に、筋力トレーニング、有酸素運動、そしてこれらを組み合わせた運動の効果を1年間調査しました(1)。参加者は以下の4つのグループに分けられました。
- 筋力トレーニングのみ
- 有酸素運動のみ
- 筋力トレーニング+有酸素運動
- 運動なし(対照群)
主な結果:
- 有酸素運動単独、または有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせは、心血管リスク(血圧、コレステロール、体脂肪など)を総合的に改善。
- 筋力トレーニング単独では、心血管リスクに対する効果は限定的。
- 体脂肪の減少効果はどちらの運動にも見られた。
筋力トレーニングの特徴とその役割
筋力トレーニングには次のようなメリットがあります:
- 筋肉量を増やし、基礎代謝を上げる。
- 骨密度を高め、骨粗鬆症を予防する。
- 筋力を強化し、身体機能を向上させる。
ただし、心血管リスクの改善には単独では限界があるため、有酸素運動と組み合わせることが推奨されます。
有酸素運動の重要性
有酸素運動には以下の効果が期待できます:
- 心肺機能を向上させる。
- 血圧や脂質異常を改善する。
- カロリー消費が高く、体脂肪を減少させる。
ウォーキングやランニング、自転車、スイミングなどが良い例です。これらは継続しやすく、心血管リスクを下げるために特に効果的です。
運動を続けるために大切なポイント
自分が好きな運動を見つける
実際には、患者さんの好みも非常に大切です。ジョギングが好きな人もいれば、自転車やスイミングを楽しむ方もいます。ジムで筋力トレーニングを行うのが好きな方もいらっしゃいます。
好きな運動を中心に据え、無理なく続けることが重要です。
有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせる
次のような運動プランをおすすめします:
- 週3回、1時間の運動を目標に:
- 有酸素運動30分:ウォーキング、軽いジョギング、自転車など。
- 筋力トレーニング30分:スクワットや腕立て伏せ、ジムでのウェイトトレーニング。
- 運動強度の目安:
- 有酸素運動は「ややきつい」と感じるペース。
- 筋力トレーニングは筋肉が疲れるまで行う。
続けるための工夫
- 家族や友人と一緒に楽しむ。
- お気に入りの音楽やポッドキャストを聴きながら行う。
- 少しずつ運動時間や強度を増やして達成感を味わう。
当院からのメッセージ
運動は生活習慣病の改善だけでなく、心身の健康維持にも効果的です。特に有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせは、心血管リスクを効果的に下げる方法として推奨されています。
しかし、運動は「継続」こそがカギです。好きな運動を見つけて楽しく続けることで、健康的な生活への第一歩を踏み出しましょう。当院では、運動や生活習慣の改善についてのご相談も受け付けていますので、ぜひお気軽にご相談ください。
(1) Lee DC, Brellenthin AG, Lanningham-Foster LM, Kohut ML, Li Y. Aerobic, resistance, or combined exercise training and cardiovascular risk profile in overweight or obese adults: the CardioRACE trial. Eur Heart J. 2024;45(1127-1142). doi:10.1093/eurheartj/ehad827.
運動は大事ですよね。私も週に2-3回はスポーツジムで有酸素運動、筋力トレーニングをしています。
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