1. はじめに
当院にも、下肢の浮腫み(むくみ)を訴える患者さんがよく来院されます。特に中年以降の女性や、立ち仕事をしている女性に多く見られる傾向があります。足が重く感じたり、靴がきつくなるといった症状は、日常的な疲れだけでなく、身体の異常を示していることもあります。この記事では、下肢の浮腫みの原因と治療方法について、甲状腺機能異常も含めて詳しく解説します。
2. 下肢の浮腫みとは?
浮腫みは、体内の水分が過剰に溜まり、特に皮膚の下に水がたまる状態を指します。足首やふくらはぎなどでよく見られ、圧力をかけるとへこむことが特徴的です。
3. 下肢の浮腫みの主な原因
下肢の浮腫みの原因は多岐にわたります。日常生活での姿勢や体調から、深刻な病気までが関与する可能性があります。以下に主な原因を挙げます。
a. 長時間の立ち仕事や座り仕事
長時間同じ姿勢でいると、血液が足に滞りやすくなり、浮腫みを引き起こします。
b. 血行不良
血液やリンパの流れが悪いと、体内の余分な水分が足に溜まりやすくなります。これには運動不足や肥満が関与することが多いです。
c. 心臓や腎臓の病気
心不全や腎不全は、体内の水分調整がうまくいかず、下肢のむくみを引き起こすことがあります。特に心不全の場合、体全体への血流が滞り、足に水分が溜まりやすくなります。
d. 甲状腺機能異常
甲状腺機能低下症は、むくみの原因となる代表的な疾患です。甲状腺ホルモンが不足すると、新陳代謝が低下し、体内の水分バランスが崩れ、浮腫みが発生します。特に顔や足がむくむことが多く、手足の冷えや倦怠感を伴うこともあります。
e. 静脈瘤や深部静脈血栓症
静脈瘤は、足の静脈が拡張し、血液が逆流することでむくみを引き起こします。また、深部静脈血栓症は血栓が静脈を詰まらせることで、足のむくみや痛みを引き起こします。
4. 下肢の浮腫みの治療方法
下肢の浮腫みの治療は、その原因によって異なります。ここでは、代表的な治療法を紹介します。
a. 生活習慣の改善
定期的な運動や脚を高くすることで、血流を改善しむくみを予防します。特にウォーキングやストレッチが効果的です。
b. 弾性ストッキングの着用
弾性ストッキングは、足の血流を促進し、浮腫みを軽減します。特に静脈瘤や血栓の予防に用いられます。
c. 利尿剤の使用
心不全や腎不全、甲状腺機能低下症に関連するむくみには、利尿剤が処方されることがあります。余分な水分を尿として排出することで、むくみを緩和します。
d. 甲状腺機能低下症の治療
甲状腺機能低下症が原因で浮腫みが生じている場合は、甲状腺ホルモン補充療法が行われます。この治療によりホルモンバランスが回復し、むくみも改善されます。
5. まとめ
下肢の浮腫みは、日常的な原因から深刻な病気まで多岐にわたります。生活習慣の改善で対応できることもありますが、症状が長引く場合や一方の足のみがむくむ場合は、早期に医師の診察を受けることが重要です。特に甲状腺機能低下症のような内分泌系の問題も、浮腫みの原因として考慮されるべきです。
参考文献
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- Ratchford EV, Evans NS. Approach to Lower Extremity Edema. Curr Treat Options Cardiovasc Med. 2020;22(12):8.
- Eberhardt RT, Raffetto JD. Chronic venous insufficiency. Circulation. 2014;130(4):333-46.
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