動悸とは?
動悸とは、「普段は意識していないが、心拍や脈拍が不規則に感じられること」です。健康な人でも、労作や運動、精神的ストレスなどで頻脈になったり、血圧が上昇して心機能が亢進したりすると、動悸を感じることがあります。動悸の強さと心臓病や不整脈の重症度は必ずしも一致しません。軽度の心拍数の上昇や心臓が跳ね上がる期外収縮、あるいは自覚症状がなくても生命に関わる心室頻拍など、動悸の感じ方には様々なものがあります。
循環器疾患には様々な疾患があります。胸がドキドキする、脈が飛ぶ、胸が締め付けられる、足が浮腫む、そのような症状からどのような病気が疑われるかを解説します。
動悸とは、「普段は意識していないが、心拍や脈拍が不規則に感じられること」です。健康な人でも、労作や運動、精神的ストレスなどで頻脈になったり、血圧が上昇して心機能が亢進したりすると、動悸を感じることがあります。動悸の強さと心臓病や不整脈の重症度は必ずしも一致しません。軽度の心拍数の上昇や心臓が跳ね上がる期外収縮、あるいは自覚症状がなくても生命に関わる心室頻拍など、動悸の感じ方には様々なものがあります。
動悸の原因を調べるにはまず聴診、心電図、胸部レントゲン写真、血液の検査を行います。動悸がしているときに心電図が記録できれば良いのですが心電図ではわずか10拍程度しか記録できず診断が難しい場合があります。そのような場合に小型の心電図を装着して24時間心拍を記録する検査があり、これがホルター心電図です。稀にしか起きない不整脈をとらえるのにホルター心電図は有効です。
動悸の原因になる不整脈には上室性期外収縮、心室性期外収縮、心房頻拍、心室頻拍、心房細動、心室細動など様々な種類のものがあります。期外収縮は無害性で治療の必要がないことも多いですが心室頻拍や心室細動は緊急で処置が必要な怖い不整脈です。それらを見極めるためにホルター心電図など様々な検査が用いられます。
心房細動は不整脈の一つで、心房が小刻みに動いて痙攣することで、心房内に血栓ができやすくなり、その血栓が脳に移動して脳の血管を詰まらせる危険性があります。リスクに応じて血液をサラサラにするお薬を内服する必要があります。カテーテルによるアブレーション治療で完治を目指すことも増えてきました。当クリニックからは三菱京都病院、京都大学医学部附属病院などへ紹介させて頂くことが多いです。
期外収縮には上室性、心室性とあります。通常とは違う場所から心臓の興奮、収縮が始まります。自覚症状としては脈が飛ぶ、動悸がする(ドキドキする)といった症状が出現することがあります。健診でよく指摘される不整脈ですが、弁膜症、狭心症などの原因となるような心臓病が無いかを検査する必要があります。ホルター心電図で期外収縮が連続しないか、頻度はどれくらいか、などの評価を行います。薬でおさまらない場合にアブレーション治療が行われることもあります。
WPW症候群は正常な伝導路以外に副伝導路(ケント束)が存在する病気です。心電図でデルタ波が出現することがあり、上室性の頻脈性不整脈の原因になります。発見者であるLouis Wolff、John Parkinson、Paul Dudley Whiteにちなんでこの名前が付けられました。カテーテル治療で根治できますが無症状であれば治療が必要ないことも多い病気です。
心臓が原因で生じるめまい、失神もあり心原性失神といわれます。不整脈が原因で生じる場合はアダムス・ストークス症候群と言われます。脈が遅くなったり早くなりすぎたりすることでめまいや失神が生じます。
洞結節と呼ばれる心拍をコントロールする部分の病気で脈が遅くなる不整脈の一種です。主な症状は、めまいや失神ですが、症状がなくても、健康診断で遅脈が発見され、洞不全症候群と診断されることがあります。ペースメーカーが必要になることもあります。ホルター心電図で検査します。
房室結節という心房と心室をつなぐ心臓の回路の異常でおきます。心房の興奮が心室まで十分に伝わらない状態で、程度により1度~3度に分類されます。背景に心筋梗塞や心筋症・心筋炎などが隠れていることがあります。3度ではペースメーカーが必要になることがあります。ホルター心電図で検査します。
急に立ち上がったり起き上がったときに生じるめまいです。立ちくらみとも呼ばれます。若年者でもよくみとめます。前立腺肥大症の治療薬の副作用で生じることもあります。重篤な場合は”起立不耐症”ともいわれ日常生活に支障をきたす場合があり薬物治療が使用されます。
自律神経の異常で生じる失神です。脈が遅くなったり、血圧が低下してめまい、意識消失を起こします。小中学校などで朝礼の際に倒れたりするのは神経調節性失神が原因のことが多いです。気分が悪いときは早めに座ったり横になったりすることが必要です。ヘッドアップチルトテストで診断します。
心臓の働きを担う主役である心室に生じる不整脈です。心室が痙攣のような状態になるため十分な血流を送り出すことができず意識を失います。危険な状態でAED(自動体外式除細動器)による治療が必要になります。
胸が痛む、苦しいといった症状の背景に循環器疾患が隠れていることは多いです。胸の痛みもキリキリとした刺されるような痛み、チクチクとした痛み、締め付けるような痛み、など様々な症状があります。また常に痛むのか、運動をしたときに痛むのか、息をすったときに痛むのか、それらによって原因を推定します。
胸が締め付けられる、重いような感じ、というとまず疑われるのが狭心症、心筋梗塞です。狭心症、心筋梗塞では心臓に栄養を送る冠動脈に動脈硬化ができて血流を妨げることにより生じます。また煙草を吸う患者さんでは冠動脈の痙攣が生じることで狭心症を起こすことがあります。冠攣縮性狭心症といわれます。放置すると命にかかわる病気です、早めに循環器専門医の診察を受けるようにしてください。
胸痛の中で最も恐ろしい病気の1つが急性大動脈解離です。俳優の石原裕次郎さん、阿藤快さんなどもなった病気で決して稀な病気ではありません。症状としては激しい胸の痛み、背中の痛みがあり、その痛みが移動するのが特徴です。救急で対応が必要な病気です。動脈が裂けることにより痛みが生じます。動脈の裂ける部位によりA型、B型に分類されます。
心臓の弁が悪くなり胸痛が生じることもあります。大動脈弁狭窄症では全身に血液を送る大動脈弁が狭くなることにより胸痛が生じます。大動脈弁狭窄症はアーノルドシュワルツェネッガーさん、小澤征爾さんなどが治療を受けており稀な病気ではありません。以前は胸を開けて弁を入れ替える必要がありましたが最近ではカテーテルにより弁を入れ替える治療が出現しており患者さんの負担も軽くなってきています。
心臓の筋肉や心臓の膜に炎症が生じることにより胸の痛みが生じます。ウイルスが原因であることが多く、通常は心筋炎、心膜炎に先行してカゼのような気道感染症を認めます。コロナウイルス感染後、コロナワクチン接種後にも頻度は少ないですが発症します。重篤な場合は薬物治療や外科的な処置が必要になります、
女性の場合は更年期で原因がはっきりしない胸の痛み、動悸がでることがあります。冠動脈(心臓自身に血液を送る血管)は動脈硬化がなくても狭心症のような症状が起きることがあり、冠攣縮性狭心症や微小血管狭心症との関連が疑われます。冠動脈を拡張する薬や漢方薬が有効です。
若い人の胸痛の原因として”Precordial Catch Syndrome)があげられます。原因ははっきりしませんが10~20代の若い人の胸痛です、胸の鋭い痛み、数秒から数分持続、放散痛はない、安静時に発症することが多いが呼吸で増悪することが多い、などの特徴があります。心電図、レントゲン、採血では異常を認めないという特徴があります。器質的な心疾患の除外により診断されます。
循環器疾患以外でも”胃潰瘍”、”肋間神経痛”、”気胸”、”帯状疱疹”、”肺がん”など様々な原因で胸痛が生じます。胸部レントゲン写真、心電図、超音波検査、血液検査などを組み合わせて診断を行います。西洋医学で説明ができない痛みの場合は漢方薬で治療をすると良くなることがあります。
以前は簡単に上がれた階段で息が切れてしまう、など年齢を経るごとに体力は低下します。加齢で説明できない疲れやすさは病的な息切れです。心臓が原因である場合、肺が原因である場合、その他筋力の低下などが原因の場合、など様々な原因に分類できます。
心臓は全身に血液を送るためのポンプとしての役割を果たしています。心臓の働きが十分でないと軽い運動でも息切れがでてきます。心不全が原因の息切れの場合は下肢の浮腫みなどを伴うこともあります。血液検査、レントゲン検査、超音波などで診断します。
心臓には4枚の弁がありますがそれらが狭くなったり漏れていると(逆流)、息切れが生じます。超音波検査を行うと弁の異常の診断ができます。異常が著しい場合は外科的な手術が必要になることもあります、軽度の場合は薬での治療になります。
心臓ではなく肺が原因で息切れを生じることもあります。肺気腫(たばこが原因で生じる肺の病気)、肺炎、喘息などで息切れが生じます。胸のレントゲン写真や血液検査などで診断します。著しい場合は自宅で酸素を吸って頂く場合もあります。
心臓や肺に病気が無くても貧血、甲状腺機能低下など様々な病気で息切れは生じます。同年代の方と比べて疲れやすい、息切れがある場合は早めにクリニックを受診ください。
足の浮腫みも循環器内科を受診される患者さんに多い症状です。両足が腫れているのか、片足だけなのか、熱感があるのか、冷たいのか、どのような色調か、などを見て原因を調べていきます。心臓や腎臓の異常の他にも静脈の血栓、甲状腺機能、リンパの流れの異常により足は浮腫みます。
心筋梗塞、心筋症(心臓の筋肉の異常)、心臓弁膜症(心臓の弁の異常)などで心臓が弱ってくると全身の浮腫みが生じてきます。心臓の超音波検査や胸部レントゲン写真、血液検査で診断します。片足だけでなく両足の浮腫みになります、熱感や発赤は認めません。
静脈に血栓ができて足が浮腫む場合もあります。深部静脈血栓症といわれる病気です。通常は片足だけで、熱感や痛みを伴うことが多いです。血液検査、下肢静脈エコーで診断します。血栓が肺に流れると肺塞栓症といわれる病気になります。血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)で治療します。
足の静脈に下肢静脈瘤といわれる静脈がこぶ状に膨らんだ病気でも下肢の浮腫が出現することがあります。下肢静脈瘤では静脈の弁機能が低下しているため足が浮腫みやすくなっています。通常は両側の足に静脈瘤を認めます。痛みや熱感はないことが多いです。超音波検査などで診断、治療は弾性ストッキングの着用やレーザーなどの手術になります。
腎臓の機能が低下すると尿が十分にでなくなり下肢が浮腫むことがあります。通常は両側の足が浮腫みます。発赤や痛みは通常は認めません。検尿や血液検査、超音波検査で診断します。薬での治療になりますが腎臓の機能低下が著しい場合は透析治療が必要になることがあります。
甲状腺の機能が低下して下肢に浮腫みがでることがあります。"ムコ多糖類"が皮下にたまることにより浮腫みますが他の原因での浮腫みと違い指で押してもすぐに元に戻り、跡が残らない非圧痕性浮腫(粘液水腫)です。血液検査や超音波検査で診断、薬での治療が行われます。
その他にも薬剤性(カルシウム拮抗薬といわれる血圧の薬)、低栄養、リンパ浮腫(リンパの流れが悪くなるために生じる浮腫)、蜂窩織炎(ばい菌の感染)、内出血など様々な原因で下肢は浮腫みます。健康な人でも一日中立ち仕事をしていたり、ずっと座っていると軽い浮腫みを認めることはあります。