2020年1月に中国湖北省で報告された新型コロナウイルス感染症は世界中に広がり大きな問題となっています。コロナウイルスはもともと風邪ウイルスの1つであり、珍しい病気ではありませんでしたが新型コロナウイルスは肺炎などを併発し重症化することもあるため大きな問題になっています。

新型コロナウイルス

新型コロナウイルスとは

新型コロナウイルス(SARS-CoV2)はコロナウイルスの1つです。コロナウイルスには、一般的な風邪や重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)が含まれます。コロナウイルスは、RNAウイルス(一本鎖のRNAウイルス)の一種で単体では成長できませんが、粘膜などの細胞に付着して侵入することで成長します。新型コロナウイルスは2019年の終わりごろに中国で発生したのを皮切りに、あっという間に世界中に感染が拡大しました。

新型コロナウイルスの症状

感染から4~5日後に症状が現れますが、人によっては2週間ほど経ってから症状が現れることもあります。一方で、まったく症状が出ない人もいます。

症状には発熱、咳、息苦しさ、体のだるさ、寒気、筋肉痛、頭痛、喉の痛みなどの一般的な風邪の症状と同じ症状の他に新型コロナウイルス感染症に特徴的な症状である味覚・嗅覚の消失、発疹などの皮膚症状があります。また基礎疾患のある患者さんや高齢者で肺炎に発展することもありこれが大きな問題になっています。

どのような患者さんが重症化する?

重症化するかどうかは年齢、健康状態によります。重症化すると肺炎、酸素不足、心臓病などの深刻な問題を引き起こします。重症化するリスクは高齢者、重い心臓病、慢性腎臓病、2型糖尿病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、かま状赤血球症、肥満などが報告されています。免疫系の働きが弱っている人(HIV感染や特定の薬の使用など)や、ぜんそく、のう胞性線維症などの肺の病気、また高血圧といった病気のある人も重症化するおそれがあります。

新型コロナウイルスはどのように広がる?

新型コロナウイルス感染症は人から人へと伝染します。感染した患者さんのが咳やくしゃみ、他の人に近づいてしゃべったりすることが、感染の主な原因になっています。マスクの着用、3密を避ける、ソーシャルディスタンスを心がける、手洗いなどがコロナウイルスが広がるのを抑え込むのに有効です。

桂川さいとう内科循環器クリニックでの新型コロナウイルスへの対応

ワクチン接種

新型コロナウイルスに対する最も有効な防御手段はワクチン接種です。当院ではファイザー社ワクチンを使用しています。ワクチン供給に応じて予約を受け付けるようにしています。ワクチン接種に関連した合併症は発熱や注射部位の筋肉痛などがありますが数日で改善する場合がほとんどです。
新型コロナウイルスのワクチン接種予約は予約サイトから予約ください。

発熱外来のご案内

熱発の方は通常の患者さんと接触しないよう診察室を入り口から分けて発熱外来を設けています。新型コロナウイルス感染症が疑わしいと判断された場合は抗原検査やPCRを行っています。検査費用は公費で負担されるため無料です(解熱剤の処方や診察料はかかります)。診療時間を通常の診療とずらしているため熱発の患者さんはお電話でお問い合わせください。

コロナウイルス陰性証明書(自費)

海外渡航などの際に必要となる新型コロナウイルス陰性証明書を発行しています。唾液によるPCR検査で翌日には結果が判明、証明書(費用はPCR検査 20,000円、診断書発行料 5000円)を発行可能しております。英文、和文とも対応可能ですが所定のフォーマットがある場合は事前にご相談ください。

新型コロナウイルス感染の後遺症


新型コロナウイルスは2021年10月で170万人以上が国内で感染しており、桂川さいとう内科循環器クリニックのある京都府だけでも35,000人以上がすでに感染しています。クリニックで外来をしているとコロナウイルスに感染、治癒した後も咳、痰、呼吸苦、倦怠感などの症状を訴えて受診される患者さんがいらっしゃいます。新型コロナウイルス感染後1か月しても症状が続く場合は「新型コロナウイルス感染後遺症」と呼ばれます。海外では”Long COVID”、あるいは”Post COVID”とも呼ばれています。

新型コロナウイルス後遺症については原因がはっきりとわかっておらず治療方法も確立していないため対症療法が中心となります。厚生労働省の行った”COVID-19後遺障害に関する実態調査”では3~6か月経っても疲れやすさは約20%の患者さんに残っており決してコロナ後遺症は珍しい病態ではないと言えます。その他の症状では咳、息苦しさ、味覚諸具合、頭痛、集中力の低下、脱毛なども10%前後の患者さんに認めているようです。多くの施設が新型コロナウイルス後遺症外来を設けていますが治療法が確立していないため施設ごとに治療法は異なっているようです。

当院では漢方診療も取り入れているため舌診、脈診、腹診などを組み合わせて患者さんの状態をみて疲労感の強い患者さんには”人参養栄湯”などを処方しております。原因のはっきりしない疾患には西洋医学ではなく漢方医学が力を発揮します。

コロナウイルス感染後も厚労省やWHOはワクチン接種を推奨していますが、最近興味深い研究として新型コロナウイルス後遺症にワクチン接種が有効ではないかという研究が報告されています(査読前論文:”The Impact of COVID Vaccination on Symptoms of Long COVID. An International Survey of People with Lived Experience of Long COVID”, Preprints with THE LACNET, William David Strain, et al.)ので紹介します。新型コロナウイルスのワクチンを接種することにより後遺症が改善することが報告されており興味深い研究です。


研究概要:

研究の背景:新型コロナウイルス後遺症は,SARS-COV-2感染後に発症する多臓器症候群で,少なくとも4週間,多くの場合は数カ月にわたって症状が持続し、自己免疫疾患の可能性も示唆されている。 ワクチン接種が免疫反応の促進に影響を与える可能性があることから、新型コロナウイルス後遺症になっている患者の間では、ワクチン接種の影響が注目されてきた。長期にわたる新型コロナウイルス後遺症患者へのワクチン接種の影響を調査した。

方法:ソーシャルメディアへの投稿とサポートグループからのダイレクトメールにより、Long COVID患者を対象にウェブベースのアンケートを実施、基本的な属性、新型コロナウイルス後遺症の症状の範囲と重症度、どのワクチンを接種したか、ワクチンの影響などを集計した。

結果:900人がアンケートに参加し、そのうち45人はCOVID感染の関連がない筋痛性脳脊髄炎または慢性疲労症候群(ME/CFS)を患っており、さらに43人がアンケートに完全に答えなかったため除外された。残りの812人の背景や症状は通常のコロナウイルス感染者の背景と一致していた。ワクチン接種後、参加者の57.9%が症状の改善を報告し、17.9%が悪化を報告し、残りの人は変化なしと回答しました。反応にはかなりの個人差があったが症状の重症度スコアの改善は、アデノウイルスベクターワクチンと比較して、mRNAワクチンを接種した人に大きく認められた。

結論:今回の調査では、COVID-19 ワクチンを接種することで、新型コロナウイルス後遺症が改善する可能性が示唆された。この研究は観察研究のため詳しい無作為化対照試験による検証が必要である。