新型コロナウイルス感染の後遺症
新型コロナウイルスは2021年10月で170万人以上が国内で感染しており、桂川さいとう内科循環器クリニックのある京都府だけでも35,000人以上がすでに感染しています。クリニックで外来をしているとコロナウイルスに感染、治癒した後も咳、痰、呼吸苦、倦怠感などの症状を訴えて受診される患者さんがいらっしゃいます。新型コロナウイルス感染後1か月しても症状が続く場合は「新型コロナウイルス感染後遺症」と呼ばれます。海外では”Long COVID”、あるいは”Post COVID”とも呼ばれています。
新型コロナウイルス後遺症については原因がはっきりとわかっておらず治療方法も確立していないため対症療法が中心となります。厚生労働省の行った”COVID-19後遺障害に関する実態調査”では3~6か月経っても疲れやすさは約20%の患者さんに残っており決してコロナ後遺症は珍しい病態ではないと言えます。その他の症状では咳、息苦しさ、味覚諸具合、頭痛、集中力の低下、脱毛なども10%前後の患者さんに認めているようです。多くの施設が新型コロナウイルス後遺症外来を設けていますが治療法が確立していないため施設ごとに治療法は異なっているようです。
当院では漢方診療も取り入れているため舌診、脈診、腹診などを組み合わせて患者さんの状態をみて疲労感の強い患者さんには”人参養栄湯”などを処方しております。原因のはっきりしない疾患には西洋医学ではなく漢方医学が力を発揮します。
コロナウイルス感染後も厚労省やWHOはワクチン接種を推奨していますが、最近興味深い研究として新型コロナウイルス後遺症にワクチン接種が有効ではないかという研究が報告されています(査読前論文:”The Impact of COVID Vaccination on Symptoms of Long COVID. An International Survey of People with Lived Experience of Long COVID”, Preprints with THE LACNET, William David Strain, et al.)ので紹介します。新型コロナウイルスのワクチンを接種することにより後遺症が改善することが報告されており興味深い研究です。
研究概要:
研究の背景:新型コロナウイルス後遺症は,SARS-COV-2感染後に発症する多臓器症候群で,少なくとも4週間,多くの場合は数カ月にわたって症状が持続し、自己免疫疾患の可能性も示唆されている。 ワクチン接種が免疫反応の促進に影響を与える可能性があることから、新型コロナウイルス後遺症になっている患者の間では、ワクチン接種の影響が注目されてきた。長期にわたる新型コロナウイルス後遺症患者へのワクチン接種の影響を調査した。
方法:ソーシャルメディアへの投稿とサポートグループからのダイレクトメールにより、Long COVID患者を対象にウェブベースのアンケートを実施、基本的な属性、新型コロナウイルス後遺症の症状の範囲と重症度、どのワクチンを接種したか、ワクチンの影響などを集計した。
結果:900人がアンケートに参加し、そのうち45人はCOVID感染の関連がない筋痛性脳脊髄炎または慢性疲労症候群(ME/CFS)を患っており、さらに43人がアンケートに完全に答えなかったため除外された。残りの812人の背景や症状は通常のコロナウイルス感染者の背景と一致していた。ワクチン接種後、参加者の57.9%が症状の改善を報告し、17.9%が悪化を報告し、残りの人は変化なしと回答しました。反応にはかなりの個人差があったが症状の重症度スコアの改善は、アデノウイルスベクターワクチンと比較して、mRNAワクチンを接種した人に大きく認められた。
結論:今回の調査では、COVID-19 ワクチンを接種することで、新型コロナウイルス後遺症が改善する可能性が示唆された。この研究は観察研究のため詳しい無作為化対照試験による検証が必要である。